~唯一王の成り上がり~ 追放された「加護」使いの英雄碑

主人公フライが大活躍 王道系、成り上がり×追放ストーリーです
静内
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第110話 唯一王 国王親子の元へ。しかし──

公開日時: 2021年9月12日(日) 20:17
文字数:2,062

「フリーゼ、その……、ごめんね」


「──ありがとうございます、フライさん。しかし……、もっと早く否定してほしかったです」


 フリーゼの頬が、ほんのわずかだがぷくっと膨れているのがわかる。安心してくれフリーゼ、そんな趣味は俺にはないからな。


「それで、これからどうするの? ないなら泊まるホテルとか探さなきゃいけないから外に出たいんだけど──」


「それなら大丈夫よフライ。教会には、専用の宿泊施設があるから。そこに泊まれるようによう手配するわ」


「そうなんですか、ありがとうございます」


 フリーゼが、どこか嬉しそう。確かに、教会の総本山ということは地方からいろいろな人がやってくる。であれば宿泊施設があってもおかしくはない。


「それで、この後なのですが、先ずは、国王様に挨拶をしに行きましょう。後、夜に全体のスケジュールの説明会があるので、出席の方お願いできないでしょうか」


「こ、国王様?」


 その言葉に俺は驚いて聞き返す。今まで、貴族たちと会ったりしたことはあったが、国のトップと直接会ったことはない。


 全く予想できなかった展開。


「はい。フライさん達は私が呼んだ冒険者達の中でもトップクラスの実力を持っています。なので冒険者達の代表としてあいさつをお願いしたいのです。大丈夫ですか?」


 俺達は互いに視線をきょろきょろと合わせる。そしてフリーゼが代表して言葉を返した。


「そ、それは大丈夫です。しかし失礼ではないですか?」


「安心してフリーゼ。私達と一緒だから。それにいけばこの国の実情がわかるから、行って損はないわ」


 クリムの言葉に俺達は納得する。


 その後、細かい予定やこの後の段取りなどの説明が行われる。

 国王様たちと面会はこの後、そしてその後にパーティー形式の会食がある。


 さらに巡礼祭の説明や、何をすればいいかなどの説明を受ける。

 その後、荷物を与えられた部屋に預けて、メイル、クリムと一緒に国王様のところへ。




 馬車でしばらく移動すると、白亜の色をした宮殿が現れる。

 入り口の所で卸され、門へ。


「大丈夫そうね。じゃあ行きましょう」


「手続きありがとう、クリム」


 そして宮殿の中へと入って行く。

 中、天井には神秘的な模様が描かれていて、神々しさを感じさせる。


 時折天使を描いた絵画が飾られてあり、王国と教会が古くから密接な関係があることがわかる。


 階段を上がり、奥にある部屋の前で前を歩くメイルとクリムが立ち止まる。


「この部屋が、国王様の部屋よ。準備はいい?」


「私達は大丈夫です。クリム」


「了解です、フリーゼ。それでは、行きましょう」


 メイルはそう言って扉をノックした後、扉に手を触れる。

 俺達はいつにもまして緊張。


 そして扉が開き、俺たちは部屋の中へ進む。


 豪華そうな備品や絵画が置かれていて、王国の権威を感じさせる部屋。

 そして、大きな机の、上座に当たる、窓際の席に、二人の人物がいた。

 一人は、豪華そうなマントを付けている、白いひげを蓄えた白髪の老人。

 これが国王という人物か。初めて出会った高い身分の人だ。


 もう一人は、目つきが悪そうで、ツンツン頭をしている若い男の人。

 高級そうな首飾りや宝石などを身に着けていて、いかにも身分が高い人物という雰囲気を醸し出していた。




 その人物に向かってメイルが手を伸ばし、二人を紹介。


「紹介します。我がウェレン王国の国王ケイルとその王子のジロン様」


 俺達は二人に向かって直角に頭を下げ、挨拶をする。


「初めまして、冒険者のフライと申します。今回の巡礼祭の警備をさせていただきます。よろしくお願いします」


 フリーゼたちも、俺と同じように頭を下げながら名前を紹介。


「私は、ハリーセルフィッシュ。よろしくフィッシュ」


 ハリーセルが最後にあいさつを終えると、俺たちは頭を上げる。

 国王ケイルとジロンを見ると、どこかむっとした表情をしている。気まずい雰囲気、まずい、俺、何かしちゃったかな?


 そしてケイルはワインを飲み干すと、ワイングラスを兵士のほうへ向かって投げつける。

 ワイングラスは地面に落ちた衝撃でガシャンと割れてしまった。


 ジロンはそのままメイルへ向けて怒鳴りつけた。



「何でこんなわけがわからない冒険者なんか連れてきたんだよメイル。どういうことだか説明しろ!」


「そうじゃ、ジロンの言う通りじゃ。この冬至の礼はわが国でも最も神聖で大事な儀式、その警備に信用できないどこの馬の骨ともわからん奴を連れてくるとは、どのようなつもりか説明せい!」


 メイルは困った表情になり、必死に弁解。


「といわれましても、警備の人たちはこの国の巡礼祭になくてはならないものです。国の行事を妨害されるということは、王国の威信を大きく傷つける行為であります。

 おまけに今回の冬至の礼には各国から要人も控えている手前、もしものことがありましたら大問題になってしまいます。

 それに私がつかんだ情報によりますと、あのスパルティクス団も動いていると言われています。なので強力な力を持った冒険者が加勢してくれるのは、大変助かることであります」


 しかし、遮るようにジロンが大きく叫んだ。


「ごちゃごちゃうるせぇよ!!」

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