~唯一王の成り上がり~ 追放された「加護」使いの英雄碑

主人公フライが大活躍 王道系、成り上がり×追放ストーリーです
静内
静内

第126話 唯一王 偉大なる存在を見る

公開日時: 2021年10月20日(水) 18:05
文字数:2,178

 ここでも俺たちが少人数で中に入り、祈りをささげていく。

 まずが国王や要人たちから。


 国王ケイルや王子ジロンは不満たらたらに入って行く。


「あ~~あ、早く酒飲みてぇ──」


「もう、飽きてきたのう」


 その後に要人たち。その間、俺たちは警戒を強めていたが、結局何も起きなかった。

 さらに、警備の冒険者たちも巡礼を行うようで、フリーゼとハリーセルから順に入って行った。


 流石に一辺にいなくなると警備上よくないので、要人と一緒だったり、少人数での巡礼ではあったが。


 俺は最後の方になってレディナやレシア、メイルと一緒に入る。


 石でできたドアから中に入り、薄暗く肌寒い石造りの聖堂の中を歩いていく。


「メイル、ちょっといい?」


「なんでしょうか」


「ここは、どんな場所なの?」


 メイルは右手を口元に当てながら思い出す様にして言葉を返す。


「ここは大昔、私達の先住民が天使たちと交流をしていたところです」


「へぇ、そんな昔から交流を?」


「そうよ、人間たちが文明を持ったころから交流自体はしているわ」


 レディナの言葉に俺は驚く。


「そんな大昔から?」


「はい。私達の先祖の、もっとも昔の人達とも交流がある記録もありました。国家の制度を教わったり、魔法に関する知識を手に入れたりしていたそうです」


「そうね、ウェレンのあたりは私がこの世界に来る前より交流があったと聞いていたわ」


「そうなんだ、レディナ」


 だからこの国の人たちはみんな信仰深く、せいかつのなかに根付いているのか。どこか納得した。


「その通りです。私達は精霊や大天使様に支えられてこの厳しい環境を生き抜いてきました。あなたたちの知恵や力のおかげです。そしてこれからも、私達はそうして生きていくでしょう」


 メイルのどこか自信に満ちた表情。心から信仰を深めているのがわかる。



 そして歩いていくと、広い空間にたどり着いた。

 薄暗くて、良く見えないが何かが描かれている石板に囲まれている。

 そして入口から一番奥には、何かが描かれている。


 その前、膝くらいの段さがある場所に、ステファヌアさんはいた。


「フライさん、レディナさん、レシアさん。では祈りを始めます。黙とうを──」


「はい」


 代表して俺が言葉を返すと、俺達は手を合わせる。

 そしてステファヌアが、奥にある石板に手をかざした。すると──。


 シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ──。


 その瞬間、奥にある石板。周囲の壁が光始める。

 淡い青色をした、優しさを感じさせる光。


「皆さん、見回したくなる気持ちは分かりますが、しばしの間黙とうをお願いします」


「──わかりました」


 俺達は間をつぶって、心を無にして黙とうをささげる。その時間、数十秒ほど。


「──もう大丈夫ですよ、目を開けてください」


「ありがとうございます」



 俺達は目を開け、周囲を再び見回す。

 その神秘的な姿に、俺達は目を奪われる。


「なにこれ、すごいじゃない」


「そうだねレディナ。これ、何かわかる?」


 淡くて、青い光に包まれたこの場。さっきと違い明るさがあるので周囲に何があるのかはっきりとわかる。



 まずは周囲にある壁画。


 見たこともない古代文字で描かれた文章。魚や木、森などの絵に近い文字。

 棒が一つや二つというのは数を表わしていると思うのだが、他はよくわからない。

 もちろん俺の記憶にはなく、読めるはずもない。


「レディナ、これわかる?」


「いや、わからないわ」


 レディナが額に手を当て、困りながら言葉を返す。


「推測だと思うのだけれど、当時の先住民の人たちのことだと思うわ」


「なるほど──」


 ウェレン王国の先祖ができる前も、別の人々が住んでいて、そこでも精霊や大天使と交流を行っていた。


 しかしこの人々たちはウェレンの先祖とは違う人たちのため、ウェレンの人たちでは文字の意味は分からない。そんなところか。


 そして俺は真正面、そこに描かれている絵画に視線を奪われた。


 白い神々しい服を着た女性。白い翼をなびかせ、空から降りてきている女性が、ボロボロの服を着ている地上の人々に施しを与えている様子だ。


 その姿にレディナとレシアは目を見開き、じっとその絵を見つめる。


「二人とも、あの人──わかるの?」


 レディナはその絵に視線を固定させながら、ごくりと息をのむと言葉を返してきた。



「知ってるも何も、あれが私達を束ねる人物。大天使ツァルキール様よ」


 その言葉に俺は体をピクリと動かす。


「あれが、大天使の姿──」


 その言葉に俺は言葉を失ったまま正面の絵画に視線を奪われる。


 背が高く、腰くらいまでかかった亜麻色の髪。サラサラのロングヘアーで、あどけない若そうな顔つきで微笑を浮かべている。

 人間で言えば、十五歳くらいの女の子。とてもそんな偉大な存在とは思えない。もっと、大人っぽい人だと考えていたが──。


「この時は、まだ先代の補佐役だったわ。大天使になったのは、ごく最近よ」


「最近? 大天使って、代変わりするんだ──」


「当然よ。あんたたちとは数百倍遅いとはいえ、老化するんだもの──」


 そうなのか。確かに、フリーゼたちだってずっと遺跡にいたにしては若い姿だ。

 初めて知った事実に俺はただ言葉を失っていた。


「それで、問題が起きているんだけどね……」


 レシアがため息をついてつぶやくと、正面からステファヌアがパンパンと手をたたき、声をかける。


「皆様。申し訳ありません、皆さまが待っています。行きましょう」


「そ、そうですね。わかりました」

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート