ご近所STORY2 エレクトリック・ダンス

ちょっぴり笑えるSF ご近所物語の続編です
主道 学
主道 学

3-13

公開日時: 2024年7月7日(日) 17:54
文字数:1,369

「申し訳ありません。島田様。今はC区と交戦中なのです。ですので、休戦をお願い申し上げます」

 無表情の島田が僕の隣に座った。

「なんか起きたの?」

 途端に優しくなった島田には、お冷が配られる。

 弥生が島田の席の隣に座ると、

「夜鶴さんに言ったほうがいいのかな。怪我もしてるし……何か起きそうよ……」

 僕の腕の怪我を見て不安気な声を発した。

 島田が瞬く間に好戦的な顔になった。

「いや、島田さんや夜鶴さんたちを巻き込みたくはないんだ。それと、3年前の野球ではすまなかったね。確か右肩だったっけ。僕はA区にある女性を探しに来ただけなんだ」

 僕とヨハにもお冷が配られる。

「いやいや! 気にしてねーぜ! 右肩だったかも忘れたー! もう3年前だしな! それより、なんかスリルありそうじゃねえか?! 俺にも手伝わせてー!! 役に立つからー!」

 島田は3年前から全然変わっていなかった。

 弥生もそうだ。

 島田と弥生はタンメンと餃子二皿を頼んだ。

 注文したチャーシューメンと野菜炒めが届いた。

 チャーシューメンの肉はトロトロとしていて、口の中に油をまんべんなく染み込ました。すごく美味だった。


 野菜炒めを食べずにいると、ヨハと島田が口を開いた。

「雷蔵様~~。お野菜を取りませんと~~。いけませ~ん」

「そうだぞ! 野菜を食べて、俺にスリルと戦争くれ!!」

「雷蔵様~~。お野菜~~」

「野菜食べて、俺にスリル入りの戦争ー!」

 

 素晴らしい食事の後。


 外は雨から雪になっていた。

「なあ、何か起きたんだろ。なら協力出来るんじゃないのか?」

 島田は食い下がる。

「いや、命の危険があるんだ」

「大丈夫だって、藤元がいるんだぜ」

 弥生がニッコリと微笑んで、

「何か危険なことが起きたら、すぐに言ってね。うちの旦那も私も協力するから。すぐにすっ飛んでいくからね……」

 心配げな弥生が好戦的な島田を青緑荘へ連れて行くと、僕は非合法なことをしているんだったと、今になって気が付いた。スリー・C・バックアップの横流しをしようとしているんだった。

 僕は一体?

「雷蔵様~~。そんな険しい表情~~。初めて見ました~~? お加減いかがですか~~?」

 ヨハの間延びした声が聞き取りにくくなった。

 河守 輝の言葉が頭に響いた。

(因果応報という言葉……知らないの。……悪いことを密かにしていても、いつかは日の目にでるものよ……)

 

 晴美さん……。

 僕は君を……。

 因果応報か……。

 今ではその言葉が怖くなった……。

 でも、僕はどうしてもお金がほしいんだ……。

 僕はこれからどうしたらいいんだ……。


 気が付くと、黒いベットの上だった。

 藤元の家の二階のようだ。隣のベットから藤元のいびきが聞こえる。近くに立っているヨハが僕の顔を覗いていた。

「雷蔵様~~。心をどこかに忘れていました~~です。大丈夫ですか~~」

「ああ……なあ、ヨハ」

「はい、なんでしょう?」

「僕はどうしてスリー・C・バックアップのデータを、10憶で買おうとしたのかな? お金なら一生困らないほど持っているのに……」

 ヨハはニッコリとして、

「私には解りません~。でも、雷蔵様がそうおっしゃるのなら~。答えは~~、他人に聞きましょうよ~~。人間は~~例え他人でも普通の人間ですよ~~。答えを持っている人も~~居ると思いま~~す」

「はっ、はは……。そうだね。その通りだね……」

 僕は急に恥ずかしくなった。

 そうだ。誰かに聞いてみよう。


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