僕は「大丈夫です」と一言告げると、ふと思ってヨハに声をかけた。
「ヨハ。君はそのノウハウのプロフィールデータを抜き取ってくれ。坂本の向けた刺客なのはわかるけれど、確認をしておきたいんだ」
「了解です」
ヨハの声を聞いていると、白衣の医者が柔和な顔で僕に言った。
「何らかの事件やトラブルに巻き込まれているんだったら、警察にちゃんと話さないといけないですよ。もう昔と違って治安がよくて、人間として平和に生きていける社会になったのですから」
僕は自分自身非合法なことをしているので、その男には適当に相槌を打って何も言わなかった。
医者は苦笑して、看護婦ともども持ち場に戻ると、ヨハが白衣のノウハウからプロフィールデータを取り出そうとした。しかし、プロフィールデータの小さい基盤は急に発火する。
プロフィールデータとはノウハウの頭部に差し込まれたカードで、そのデータには自己に指令されている詳細なデータが入っている。
「雷蔵様~~。壊れました~~」
僕は軽く舌打ちをした。
「しょうがない。自爆スイッチみたいなものなのかな? まあ、警察への証拠になるようなものを放っておくわけないか……」
「雷蔵様。お休みしててくださ~い。燃えていますが~、なんとか~~データを~読み取って~みます!」
火を消して、そのカードをヨハの腕に内蔵されたデータ修復機能もある、高度なカードリーダーに挿入すると、ヨハが首を傾げた。
「雷蔵様~~。このノウハウは坂本 洋子様からの指令で動いていませんよ~~」
「え……?」
僕はすぐさま聞き返した。
「じゃあ、誰の差し金なのかな?」
「え~と……? データによると興田 守様です」
「興田……守……? 霧島インダストリー社の部長だ! 九尾の狐の仕業じゃない! 今すぐマルカに連絡してくれ! 敵はC区だ!」
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