再び目を開けると、云話事・仁田・クリニックの救急外来に着いていた。すぐに集中治療室へとヨハに内臓された体内通信で連絡を受けた救急隊員によって運ばれる。
「大丈夫ですか!! 雷蔵様!!」
ヨハのまともな声が僕の耳に残った……。
僕はこれからも、死は怖くはない。でも、河守の笑顔がもう見れなくなるのは何故か……怖かった……。
「お! 起きた!! 起きた!!」
原田の声だ。
「雷蔵さーん。朝ですよー」
原田は陽気な声を発している。
どうやら、僕は一命を取り留めたのだろう。
ゆっくりと目を開けると、そこには原田と九尾の狐。そして、生き返った河守がいた。白い病室の中だった。
「ハッピバースデー・トゥユー。ハッピバースデー・トゥユー」
九尾の狐が歌っている。
「ハッピバースデー・トゥユー。ハッピバースデー・トゥユー」
河守が歌っている。
「ハッピバースデー。雷蔵さん」
原田が手に持っていた赤いロウソクがたったケーキを差し出した。
「…………」
僕の体は少しも動かなかった。
誕生日なんて、誰にも祝ってもらった時がない。それに、確か僕の誕生日は2月のはずだった。
あれ?
「そうか……これは……夢か……」
「雷蔵様~~。大丈夫ですか~~」
ヨハの声が聞こえる。
僕は夢から覚めた。
辺りを見回すと、ヨハ以外に誰もいない真っ白い病室だった。外は豪雨と強風が激しく窓を叩いていた。
「酷かったんですよ~~。4日間もお眠りしていて~~左足と左腕と右足~~。そして~、お腹に計6発も撃たれてあったので~~すよ」
「僕は起きているのかな?」
僕はまだ夢を見ているのだろうか?
ヨハに確認すると、ヨハは首を傾げて、
「はい、雷蔵様は起きていますよ~~」
「みんなは?」
すると、ヨハの可愛らしい顔が曇った。
「酷かったです~。みんな死んでしまいました~。ノウハウは~全てアンジェとマルカが破壊しましたが~~、被害が大きかったので~……」
「え?……藤元は?」
ヨハが俯いた。
「藤元様は今現在行方不明です……」
僕の頭に再び真っ赤に燃え盛る何かが突き刺さる。
「ヨハ! アンジェとマルカを呼んでくれ!! C区と戦争だーー!!」
僕はなりふり構わずに叫んでしまっていた。
この感情は一体何なのかと、僕は考えることもしなかった。
「了解しました!!」
白の壁にあるテレビでは云話事町TVがやっていた。
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