エレベーター内。
少し眩暈がしてきたが、僕は目を力を入れて開けていた。
河守が入社した時のことを思い出していた。
面接で僕も立ち会い。
質問を幾つかしていても、すぐに納得する回答が次から次にでてきて、人事部長も真っ青になって驚いていた。IQが140もあると言っていた。僕は凄いと思ったが、人事部長は頭が良すぎる人物を密かに嫌っていた。だから、僕がなんとか説得をしていると、そんな中、河守が僕を見て笑っていた。
河守が入社してからは、彼女が笑わない日があまりないなと、思っていると、次第に僕が標的となっていった。
彼女は何故、僕にそんなことをしているのかと、周りの人々に聞いた時があった。やっぱり出世欲があったからでは。と、周囲の重役たちに言われた。あの時の僕の戸惑いは、一体なんだったのだろう?でも、僕は晴美さんのことを考えて、日々を過ごしていたんだ。
「雷蔵様。もうやめましょう」
隣のヨハが心配顔をしていた。
「敵は今のところ霧島インダストリー社の興田 守様だけではないですか。そんなにボロボロになってまで関係ない人を殺さなくても……」
「……ヨハ……?」
僕は驚いた。
そういえば、ヨハには感情のような心のようなものが、どことなくあるみたいだ。
「ヨハ……君は一体?」
高速エレベーターが180階で止まった。
「雷蔵様!!」
突然、大きな音の後、アンジェが僕を庇って先に倒れた。
その次はヨハとマルカ。
僕は驚いて起き上がり前方を見ると、対戦車用ライフルを構えたノウハウが5体佇んでいる。
その間に三人の男と一人の女がいた。大きなフロアで、外には深海に建つかのようなビルディングが見え、部屋の中央には会議用の20人使用のテーブルがあった。
「君が雷蔵さんだね……」
この男が興田 守だろうか?
「社長。例の件での男です」
「ふむ……」
興田 守は50代の男で、高級なスーツの小柄な体躯で白髪が目立った。その隣には老人だがどこかはつらつとした感じの長身の男がいた。
霧島インダストリー社社長の角竹 徹郎(かくたけ てつろう)だ。確か今年で71になる老人だ。
「この計画には君が死ななければ、成り立たないようだね」
角竹が言った。
「そのようですわね……」
一人の女は満川 静香。秘書のようだ。
「エレクトリック・ダンスでなければ、この国は衰退するというのに……」
もう一人の男は解らない。若い男で年齢は20代だ。
「アンジェ、マルカ、ヨハ……」
僕は倒れたアンジェたちを見た。
三人とも腹部に透明な色の液体が大量に滲み出ている。腹部を撃たれたようだ。目を瞑って身動きしない。
「君だけ、ここへ来てくれ。君が死ぬ前に少しだけ話そう」
角竹がしわがれた声を振り絞った。
僕が赴くと、
「雷蔵さん。武器は置いておいて下さいね」
美人で20代前半の満川が武器を床に置けと言った。
僕は武器を床に捨てると、四人のいる大きいテーブル付近へと近づいた。
「最初に聞いてみるけど、エレクトリック・ダンスでなければこの国が成り立たないのは?」
僕はアンジェたちが心配だが、大きな運命の前に欠伸がでていた。
「ふふ……。簡単だよ」
角竹が呟いた。
知らない男が前に出て、いきなり僕の腹に一発拳を入れる。僕は血を吐いて倒れた。傷口が開きだしたことと体中の激痛のために眩暈がしたが、僕はゆっくりと起き上がった。
「話してやりなさい」
角竹が知らない男を宥めた。
興田が話し出した。
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