ご近所STORY2 エレクトリック・ダンス

ちょっぴり笑えるSF ご近所物語の続編です
主道 学
主道 学

5-28

公開日時: 2024年7月22日(月) 20:24
文字数:1,376

 エレベーター内。

 少し眩暈がしてきたが、僕は目を力を入れて開けていた。

 河守が入社した時のことを思い出していた。

 面接で僕も立ち会い。

 質問を幾つかしていても、すぐに納得する回答が次から次にでてきて、人事部長も真っ青になって驚いていた。IQが140もあると言っていた。僕は凄いと思ったが、人事部長は頭が良すぎる人物を密かに嫌っていた。だから、僕がなんとか説得をしていると、そんな中、河守が僕を見て笑っていた。

 河守が入社してからは、彼女が笑わない日があまりないなと、思っていると、次第に僕が標的となっていった。

 彼女は何故、僕にそんなことをしているのかと、周りの人々に聞いた時があった。やっぱり出世欲があったからでは。と、周囲の重役たちに言われた。あの時の僕の戸惑いは、一体なんだったのだろう?でも、僕は晴美さんのことを考えて、日々を過ごしていたんだ。

 

「雷蔵様。もうやめましょう」

 隣のヨハが心配顔をしていた。

「敵は今のところ霧島インダストリー社の興田 守様だけではないですか。そんなにボロボロになってまで関係ない人を殺さなくても……」

「……ヨハ……?」

 僕は驚いた。

 そういえば、ヨハには感情のような心のようなものが、どことなくあるみたいだ。

「ヨハ……君は一体?」

 高速エレベーターが180階で止まった。

「雷蔵様!!」

 突然、大きな音の後、アンジェが僕を庇って先に倒れた。

 その次はヨハとマルカ。


 僕は驚いて起き上がり前方を見ると、対戦車用ライフルを構えたノウハウが5体佇んでいる。

 その間に三人の男と一人の女がいた。大きなフロアで、外には深海に建つかのようなビルディングが見え、部屋の中央には会議用の20人使用のテーブルがあった。

「君が雷蔵さんだね……」

 この男が興田 守だろうか?

「社長。例の件での男です」

「ふむ……」

 興田 守は50代の男で、高級なスーツの小柄な体躯で白髪が目立った。その隣には老人だがどこかはつらつとした感じの長身の男がいた。

 霧島インダストリー社社長の角竹 徹郎(かくたけ てつろう)だ。確か今年で71になる老人だ。

「この計画には君が死ななければ、成り立たないようだね」

 角竹が言った。

「そのようですわね……」

 一人の女は満川 静香。秘書のようだ。

「エレクトリック・ダンスでなければ、この国は衰退するというのに……」

 もう一人の男は解らない。若い男で年齢は20代だ。

「アンジェ、マルカ、ヨハ……」

 僕は倒れたアンジェたちを見た。

 三人とも腹部に透明な色の液体が大量に滲み出ている。腹部を撃たれたようだ。目を瞑って身動きしない。

「君だけ、ここへ来てくれ。君が死ぬ前に少しだけ話そう」

 角竹がしわがれた声を振り絞った。

 僕が赴くと、

「雷蔵さん。武器は置いておいて下さいね」

 美人で20代前半の満川が武器を床に置けと言った。


 僕は武器を床に捨てると、四人のいる大きいテーブル付近へと近づいた。

「最初に聞いてみるけど、エレクトリック・ダンスでなければこの国が成り立たないのは?」

 僕はアンジェたちが心配だが、大きな運命の前に欠伸がでていた。

「ふふ……。簡単だよ」

 角竹が呟いた。

 知らない男が前に出て、いきなり僕の腹に一発拳を入れる。僕は血を吐いて倒れた。傷口が開きだしたことと体中の激痛のために眩暈がしたが、僕はゆっくりと起き上がった。

「話してやりなさい」

 角竹が知らない男を宥めた。

 興田が話し出した。


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