ご近所STORY2 エレクトリック・ダンス

ちょっぴり笑えるSF ご近所物語の続編です
主道 学
主道 学

4-25

公開日時: 2024年7月18日(木) 12:52
更新日時: 2024年7月18日(木) 12:54
文字数:1,657

「おはようッス!! 云・話・事・町TV―――!!」

 美人のアナウンサーの背景にはボロボロになったA区の青緑荘と周辺が見える。所々煙が立ち上り、ブルーシートが至る所に被さっている。

 周囲の人たちは誰もいなかった。

「今日は悲惨な事件をお知らせします! なんと、A区の左辺部青緑荘で死者80名です!!」

 美人のアナウンサーはピンクのマイクを力強く握る。

「警察の調べで解ったことは、全部のノウハウの頭のプロフィールデータが壊れていることだけッス!! 製造元も解らなくて証拠も無いようです!! まるで35年前の戦争のようです!!」


 美人のアナウンサーが吠えた。

 更に吠え。

「それに、藤元が何故か行方不明!! 藤元!! さっさと戻って来て、みんなを生き返らせろー! 鼻毛――!! マイクで刺すぞー!! 働けー! 高いギャラ払ってんだぞー(嘘)!! 女子更衣室覗いたことみんなに言いふらすぞー!!(本当)」

 美人のアナウンサーは気を落ち着かせると、

「そういえば、生放送でしたね………皆さんは聞かなかったことにしてください……」

 美人のアナウンサーが落ち着いて話し出した。

「やったのは、C区のはずです。うちの藤元がいなくなる直前に言ってたので……」


 美人のアナウンサーはピンクのマイクを握ると、一つ咳払いをした。

「……コホン。それと、これもいなくなる直前の藤元が言ってたんですが……。というかゲロさせたんですが……。あの日本屈指の大金持ちの矢多辺 雷蔵さんが日本史上最も高性能と言われる軍事用アンドロイド三体とC区と交戦中だったようです。私は憤ります……重大なことを今まで話してくれない藤元にマイクを突き刺したいです……」

 藤元がいないので、マイクを刺すようにシャドウをしている美人のアナウンサーは一人で話している。背景には無残になった青緑荘が写っていた。

「矢多辺 雷蔵氏は昔はハイブラウシティ・Bで、日本を窮地に陥れようとした人物ですが、今となっては日本の救世主になるかも知れません。そう藤元が言っていました。何が起きているのかは解りませんが。番組はその雷蔵様を(私だけ)応援しているッス」

 美人のアナウンサーはマイク片手にペコリと頭を下げると、

「きっと、日本のために戦ってくれるはずです……」


 番組はそこで終わった……。



 アンジェとマルカが云話事・仁田・クリニックに着いた。

 僕は大量の痛み止めと止血剤を買って、そうそうに病院を後にした。時折、塞がっているはずの傷が痛くてふらつくが、頭に浮き上っていく熱で僕に冷静さや理性を一切与えなかった。

 豪雨と強風の中。

 ヨハが心配してついてきた。


 病院の駐車場で、後ろからびしょびしょの僕を抱きしめた。

「雷蔵様~~。命を無駄にしてはいけませ~~ん」

「平気だ」

「雷蔵様。お休みください。ご安心下さいC区は私たちが壊滅します」

 アンジェ。

「雷蔵様は治療を受けながら、私たちを見送ってください」

 マルカ。

「いや……いいんだ」

 僕はどうしても重要なことは、自分が立ち会わなければならない性格とは別に、よくわからないけれど、激しい何かが勝手に僕を突き動かしていた。


 拳銃のマカロフにM14(アサルトライフル)。グレネードが数個。アンジェたちはグレネードランチャーにMP5(サブマシンガン)を携え、弾丸や弾薬の多さは町一つ潰せるほどだった。

 警察では強力なアンドロイドが不正や危険なことを行っても、製造元が解らない場合。プログラムを書き換えたりするだけで、どうしようもないのが今の時代だ。アンドロイドと協力するにはやっぱりそれなりのリスクがあるのだろう。

 僕はアンジェが乗ってきた修理された黄色のランボルギーニに乗った。ヨハが助手席に俯きがちにドアを開けて座った。アンジェとマルカは4座席のランボルギーニ・ポルトフィーノに乗り込む。アンジェたちも心配していたが、潔く車に乗り込んだようだ。

 4座席のポルトフィーノと黄色のランボルギーニのエストーケの後部座席には、超重量の弾薬や弾丸が置かれていた。

「雷蔵様」

「さあ、行こう」

 僕はまともなヨハの頭を撫でてC区へと向かった。

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