それは特許だ。
横流しの場合は特許が相手が持つようになってしまい。利益に大いに影響がでてくる。日本の企業がもともと特許を持っていても、僕たちが海外で売ってしまうと、どっちが先に技術を開発してきたかで相手の企業が裁判をしたりと大変だ。
さっき電話にでた坂本 洋子は産業スパイのようなことをしたんだ。
簡単にいうと、僕たちがC区の企業の秘密情報を勝手に坂本 洋子を使って持ち出し、自分たちの利益のために海外に安く売りさばいてしまうのだ。
恐らく、海外でもノウハウが活躍するこのご時世じゃ、他企業も狙っているんじゃないかな?
それと、証拠もなにも残さない。……いつものことだ。
「ねえ? 本当に大丈夫なの? 顔色が悪いわよ。悪いことは密かにしていても、いつかは日の目にでるものよ……。今なら止められるわよ」
河守がいつの間にか、僕の席に淹れたてのコーヒーを置いてくれていた。本当に心配しているのだろう。河守がこんなことをするなんて……。
「ああ……大丈夫です」
八時半自宅。
アンジェたちは心配していた。
云話事帝都マンション48階のトレーニングジムの滅多に使わないサンドバッグを前に、僕は体中に大量の汗を掻いていた。
「雷蔵様~~。高級ヒレカツ定食は~~。後で~いいですか~~」
ヨハだ。
「雷蔵様。お体の調子はいかがですか? 今夜の夕食は胃に優しいもののほうが?」
マルカ。
「もう一時間ですよ。雷蔵様」
アンジェは心配の声を一際大きくした。
僕は一時間も続けていたサンドバッグを打つのを止めた。
グローブを外して、荒い呼吸を鎮められずにいると、ヨハがタオルを持って来た。
「ありがとう」
僕はぜぇぜぇと鳴る呼吸をし、汗をタオルで拭いていると、携帯が鳴った。近くの丸椅子に置いてあった携帯をアンジェが持ってきてくれた。
僕はタオルをマルカに渡して携帯に出る。
相手は十中八九。原田だろう。
「こんばんは……あなたは死にますよ」
「原田なのか? え、いや、はは。間違い電話だよね?」
声色は女性だったが、何かの間違いだと思った。
「雷蔵さん。原田 大輔ならここにいますよ」
「君は誰? 原田はどうしたのかな?」
「ここにいます……」
僕は、「あっ」そうかと思った。
「坂本 洋子さんだね?」
「……そうです…………」
「どこにいるの?」
この人が九尾の狐と言われる女性なのだろう。
「本題に入りますよ……しっかり聞かないといけない。あんな危険なものを私に盗ませて、そして、お金もくれない。なら、命を狙うのが当然でしょ」
「原田がお金をくれなかった? どうして?」
僕の友人の原田は特別社会生学院大学といって、エリートコース専用の大学の友人だ。そうだ、河守も世代が違うが、たぶん同じ大学だったのだろう。
「ご機嫌よう……こんばんは……さようなら。原田 大輔はお金を持っていなかった。これからあなたを狙う。すぐにお金を用意してほしい。では、死なないように」
「え?」
僕はすぐそばのアンジェに目で合図をした。
使用人たちとアンジェたちには僕の家での全通話内容は筒抜けなのだ。
アンジェたちは腰のベルトにある拳銃を素早く取出し、戦闘モードになった。
ヨハだけは服を脱ぎ始め銭湯モードになった……。
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