ご近所STORY2 エレクトリック・ダンス

ちょっぴり笑えるSF ご近所物語の続編です
主道 学
主道 学

7-38

公開日時: 2024年7月22日(月) 20:37
文字数:1,892

「皆さん。こんにちは! お年寄りや子供たち。今の時代はその方たちの活躍が耳目を集めています。私の政策のエレクトリック・ダンスでは特にお年寄りやこれからの人々。つまり、これから老後に入る方々にも新しい日本の未来を目指していくことが可能なのです」

 人々は耳を静かに傾けていた。 


 その表情には笑顔が瞬く間に伝染して行った。

「現在。私たち上流階級の半数以上が占めるB区とC区は日本の将来のために、日々の努力を惜しみません。それは、A区のお蔭なのです。A区は今までみんなと支え合い。日々の努めでB区とC区のための援助をしてきました。そうサポート的援助を……。そして、そのA区に……今よりほんの少し……今よりほんの少しだけ……。B区とC区に力を貸してもらえないでしょうか……? 日本の発展のため……。人々の老後のため……。私たちの政策にはノウハウをより人間に近づけるためのスリー・C・バックアップは必要不可欠なのです。老後の人々には高度なプログラムで支えられたノウハウの援助が必要なのです。そう、社会のためにそのノウハウたちと5千万人のお年寄りのために、どうかA区の方たちにお力添えしてもらいたいのです。A区が元気になればなるほどにB区とC区は元気になります!! 皆様、どうかエレクトリック・ダンスという名の日本の未来の政策のために、清き一票をどうか、どうか、よろしくお願いします!!私の政策には皆様の力が必要です!!」

 人々はいつの間にか拍手をしていた。

 僕は少しだけ笑った。

 さすがに相手は政治家だった。


 興田 道助の選挙カーが大歓声の後に緩やかに去っていくと、今度は何台か後に晴美さんの選挙カーがやってきた。

 突然、緊張していた僕の隣の原田が走りだした。

 原田は探偵だ。

 その脚力は常人の域を超えていた。

 白いロープよりの一人の男に原田が人ごみを掻き分けボディアタックをした。すぐさま周囲の人々が悲鳴を上げる。警察の人たちも原田の方へと何人か駆け付けた。

 原田は男から拳銃を取り上げる。警察の人たちもその男を一斉に取り押さえた。

 原田はこちらににっこりと笑って、手を振り。

「拳銃を持つ人には、注意していますから」

 人ごみの中へと埋没していった。

 九尾の狐は小型の端末を脇に抱え、手を振った。

 一難は去った。

 後は一体?


 晴美さんの選挙カーが僕の前を緩やかに通る。

 選挙カーの屋根に立つ晴美さんは緊張しているが、力強くマイクを握った。

 僕は辺りを警戒すると、ここから正面の建物の二階で、警備のため微動だにしなかった一体のノウハウが、突然、選挙カーに向かって大型ライフルを構えたのを目撃した。

 慌ててデザートイーグルを抜くにも、間に合わない。

 そのノウハウに気が付いた人々の笑顔がまた凍りついた。

 けれど、そのノウハウはすぐにライフルを下げて、人間のようにお辞儀をし、こちらに手を振った。


 九尾の狐が僕の隣で、

「うまくいった?」

 僕は小型の端末を大事そうに抱える九尾の狐の神業のハッキング技術に感謝し、晴美さんの周りを見た。

 夜鶴が晴美さんの背後に見えない様にしゃがんでいた。


 後はシークレットサービスのノウハウが二体とボディガードの男性が三人。同じ選挙カーの屋根にいる。選挙カーの屋根に敵がいるか、選挙カーの屋根に敵が上るか、夜鶴はそれらを警戒しているのだ。

 晴美さんは夜鶴に目で合図をすると、マイクを力強く握った。

「国民の皆さん。スリー・C・バックアップを受け入れましょう。ノウハウを人間に近づける技術は、日々のノウハウの技術開発をしてくれていましたC区のお蔭です。労働力の確保のためにも、国民のためにも、ノウハウが老人福祉には必要不可欠なのです」

 辺りの人々は、内容が興田 道助と同じなので首を傾げるもの。不安げなものが現れだした。

 晴美さんはニッコリと笑って、重大なことを言ってくれた。

「そこで、私の政策にはノウハウを一家に一体。無料で提供します。勿論、スリー・C・バックアップのデータが入った状態でです。ノウハウに関係した部品の物価は凍結しますから、どうぞ、安心して一家に一体だけノウハウを置いて下さい。それが私のマニフェストで……」

 晴美さんがそこまで言うと、


 大歓声の中、

「ふざけるなーーー!!」

 いきなり、警備の警察官の脇を掻き分けた男性が、白いロープを乗り越え、選挙カーの屋根に上って叫び散らす。

「日本が更に衰退するじゃねえかーー!!」

 その男はズボンからナイフを手にしたが、瞬間、夜鶴のコルトが火を吹いた。

 弾は男の胸に命中して選挙カーから道路へと転げ落ちていった。

 夜鶴の射撃などの手の速さは、3年前の野球の試合で僕は知っていた。

 僕は胸を撫で下ろした。


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