快晴のレーシング場のコントロールラインに一斉にみんなとノウハウたちが着く。歓声もいつの間にか静まり、美人のレースクイーンが傘をさしながら静かに過った。種々雑多な車の唸り声は闘牛さながらに地響きを立てていた。
スタート。
いきなり、ノウハウのカナソニックスカイラインが僕の先頭を取った。
僕はすぐさま時速320キロのスピードを上げ、前方のノウハウのカナソニックスカイラインを追い越そうとハンドルを握り、アウト・イン・アウトをした。コーナーの外側から内側に向かって切り込み、再び外側に抜けることだ。このようなラインを走ることによってコーナリングスピードを速く効率よく走れるのだ。
コーナリングを曲がるが、相手も油断できない。未だ先頭を維持していた。同じアウト・イン・アウトをしたのだ。後方からもノウハウの10tトラックが走り出し、遠山のウラカンが、クラッシュ寸前でスピンした。
ノウハウは数が多く。種々雑多な自動車を駆使していく。
「おっーと、Aチームの遠山選手。スピンしたが持ち直したーー!!」
竹友がマイクに絶叫した。
「あのスピン後に瞬時に持ち直すには、かなりのテクニックが必要です。スポーツカーで小回りが効くなんて聞いた時がないですね……」
斉藤が感心した。
「おっと、田場選手と島田選手が多数のノウハウの車にクラッシュしていきます!!」
竹友はそう言うと、真っ青になった。
何故なら、10tトラックに田場と島田は体当たりを仕掛けているからだ。
「な!? 10tトラック相手に体当たりをしています!!」
竹友は気を振り絞って、隣の斉藤に顔を向けると、
「いやー……恐ろしいですね。かなりの猛スピードですし、恐ろしく頑丈なスポーツカーとドライバーの精神力です」
応援席の晴美さんは心底、心配な顔をしていた。
ここで、負けるとエレクトリック・ダンスが日本の将来になってしてしまう。けれども、みんなの命が大切なのは当たり前なのだ。
「雷蔵様~」
ヨハもスカイラインに乗ったノウハウたちのドライビングテクニックに、必死に対抗しているAチームを険しい表情で見ていた。
「ええ……私も信じています……」
晴美さんは頷いた。
晴美さんからかなり離れた場所の応援席では、興田 道助は微笑んでいた。ノウハウにアップデートしたプログラムはロケット燃料を積んだドラックレースから高度なテクニックを必要とするサーキットからのデータを開発したものだった。
人間ではどうしても勝てないのだ。
角竹は神妙な顔をしていた。
国が衰退するよりは、当然発展した方がこれから余生を送る身としては一番いいが。アンドロイドのノウハウに介護をされるのは、確かに孤独死と何ら変わらないのでは?
しかし、お年寄りは最後の最後は隠居しなければならない身ではないだろうか?
長年、人として生きていたのだし、老後の愛情の大切さは解るが。日本の将来を考えることはそれよりも重要では?何かを後世に残したいのならば、その方法にしがみつきたい。
角竹はこっくりと頷いた。
「興田君」
興田 守の方に首を向けた。
「絶対に勝つのだ。例えどんな手を使っても、相手を殺してでも……」
「承知しました……」
コーナーの出口は、当然ストレートの入り口である。いかに早くスピードを全開にするのかが大切だ。
僕はランボルギーニ・エストーケのアクセルを踏みきった。
未だ前方を走る相手のノウハウのカナソニックスカイラインもスピードを上げる。時速360キロの世界に瞬く間に突入した。
「あっーと、山下選手。淀川選手がスピン!! 周囲のノウハウが乗った種々雑多な自動車も巻き込んだ!! 」
竹友が応援席から立ち上がった。
「相手はノウハウが乗った全長12メートルのトレーラー三台ですね。まさか、Aチームの後ろを潰すために用意したとしか思えません」
斉藤は身震いした。
「あー……これはまずいですね、死人がでなければいいんですが……」
竹友は気落ちした暗い表情をした。
「藤元――!! 出番だーー!! 行ってこーい!!」
応援席の悲鳴を聞いた美人のアナウンサーは隣の藤元に向かって吠えた。多数のテレビ局も唖然としている。
「ハイっす!!」
藤元はそう叫ぶと、空を飛んだ。
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