ご近所STORY2 エレクトリック・ダンス

ちょっぴり笑えるSF ご近所物語の続編です
主道 学
主道 学

捜索

2-6

公開日時: 2024年7月6日(土) 18:42
文字数:1,731

 早朝。

 朝の6時起床入浴。


 曇りの空の下で、昨夜の電話からアンジェたちは戦闘モードを、実に3年ぶりにしていた。ヨハは後で修理したほうがいいかもしれないが、アンジェたちのような正常な頭部は今現在は製造されていない。

 僕はゆっくりとハムカツと玉子のサンドイッチを頬張った。

 気持ちの上下が僕にはない。

 いつもの日課のテレビをつけようとしたが、手が滑って間違えて云話事町TVのチャンネルを押していた。

 

「おっはよーッス!! 云・話・事・町!! TV―――!!」

「はいっ、藤元 信二です!!」

 美人のアナウンサーがピンクのマイク片手に、曇り空の下でA区の街並みを背景に話し出した。隣の藤元は呑気に空を眺めたりしていた。

「今日は大変おめでたいお話です。3年前の日本全土をひっくり返した野球の試合で、大活躍をした流谷 正章さん(男)がお子様を産みましたーーー!! お子様誕生でーーーーす!!」

 青緑荘というアパートの正面にあるコンビニで、カメラ目線の流谷は照れ隠しに顔を一度、伏せた。

「本当―――に、おめでとうございます。どうですか、今のお気持ちは?」

「……大変、嬉しいです……。妻の梨々花(りりか)も顔が奈々川さんに似ていて、とても嬉しかったです」

 美人のアナウンサーはピンクのマイクで、容赦なく流谷の口の周りを攻めている。藤元は時々、カメラに向かってピースをしたりしていた。


「そうですか。前奈々川首相(晴美の父親)に?」

「ええ」


 流谷は顔を真っ赤にして、恥ずかしいといわんばかりに顔を伏せた。

 妻であろう梨々花という美しい女性が、後ろで赤ん坊をベビーカーに乗せていた。ういういしい新婚カップルである?

「では、それでは今日の天気と運勢コーナーです――」

 

 僕はテレビのチャンネルを変えて、珍しく二杯目のコーヒーとピザトーストと、ハンバーガーをアンジェに頼んだ。

 食後。テレビを消すと、僕は駐車場に降りようと玄関口からマルカを護衛に連れ、エレベーターに向かったが、途中、武装したヨハがついてきた。

「私も同行致します」

 ヨハでは色々と不安なので僕はこっくりと頷いて、武器と弾薬を持ったマルカだけを車で連れて行った。

 まずは原田の居場所を探さないといけない。

 昨夜から九尾の狐の情報をアンジェたちに探させているが、相手がわるいのか日本の全警察署のデータを調べても、名前しかでてこかなかった……。


 云話事町で一番、裏の世界を知っていると言われる人物に会いに、僕は車を走らせた。会社にはアンジェが連絡をしている。

 今頃は仕事を押し付けた河守が大変だろうが、まあいいか。

 後、僕は10年ぶりに拳銃を所持した。

 旧ソビエト軍の正式拳銃マカロフだ。

 昔はよくハト撃ちで遊んでいたけれど、治安が悪くなるとボディガードやアンジェたちだけで身辺警護は十分になっていたので、使わなくなった。

「雷蔵様。ヨハが心配していましたよ」

「……」

 僕は涼しい顔で車を走行して云話事ベットタウンへと向かった。国道6号線と高速道路を乗り換えていけばいい。その人物は云話事ベットタウンから更に東でA区よりの。云話事イーストタウンにいるという。


 そこで、坂本の所在を突き止めて、原田と共にスリー・C・バックアップのデータを奪う。至極簡単だ。金は渡さない。

 閑静な住宅街が居並ぶ云話事ベットタウンの国道6号線を走行中。バックミラー(電子式の液晶ミラー)に赤い点滅が出てきた。助手席にいたマルカが急に銃を持ち合図した。

 遥か後方から猛スピードで、赤い車が走って来た。

「雷蔵様!! スピードを上げてください!!」

 マルカの銃は大型マシンピストル。

 ソ連のスチェッキン・マシンピストルだ。

 赤い車は僕のランボルギーニの運転手側に追いつくと、窓を開けた。中にはノウハウが二体。一体が撃ってきた。

 一体は運転に専念しているようで、もう一体はアサルトライフルを装備していた。

「雷蔵様!!」

 マルカは、ランボルギーニの左窓から、上半身をボンネットの上に乗り出しマシンピストルを撃ち放った。

 大量の弾丸の行き交いで辺りに火花が飛び散る。マルカのマシンピストルの銃撃と赤い車からの銃撃は、周りの一般車両も巻き込まれた。煙を上げる車や横転する車が現れ、各々の車両が急ブレーキをしたりと逃げ出したりと大混乱が起きる。


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