[クリアレース]攻略情報なしのMMO 初クリア者に10億を

当然中身はデスゲーム
アリエス
アリエス

ようこそ!イカロス3の世界へ!

公開日時: 2022年12月11日(日) 18:05
文字数:2,380

「じゃあ早速、ログインだぜおい!!!」


頭からドーパミンが滾ってくる。

事態は全くもって意味不明だが、勝負事となれば話は別。

誰よりも早く。強く。圧倒的な存在にまで乗り上げる。


生きがいというのかもわからないが、

オレの中での時計が動き始めた予感がする。


本当にログインしますか?

▶はい

 いいえ


即効ではいを押す。

下手すりゃさらにスピードボーナスもあるかもしれない

からな。


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背後からまた冷たいものに刺されたのだった。。。。






「うぐぐぐぐ・・・」


目を開くと、小さな石などが無数に広がっていた。


倒れていることを認識し、立ち上がるとそこは河原だった。


「いってぇなぁ。」

首の後ろから矢が刺さっていた。


「ヒッ!!お、おい、毒塗ったんじゃないのか??」


なにやら全身をチェーンで編まれた防具の男2人組がオレを見る。


「し、しまった!!マームートンにはもっと強い毒でないと効かないんだ!」


いきなり盾とヤリを構えて、戦意をむき出しにしてくる。

よく見ると、ヤツらがもつ盾にはライオンがあしらわれている。


「どういう設定かはわかんねぇが、実験台にはもってこいだなぁオイ!!!!」


ヤリがオレの心臓へ向かってくる。

素早く背後に下がり、戦闘体制を取る。


「アブねぇじゃねぇか。とてもチュートリアルとは思えねぇな~。

まさかいきなりプレイヤーか??」


オレの初期装備は現実と同じ白Tシャツとジーンズ。

種族の体格に合わせて、かなりのビッグサイズになっている。


兵士と思われる二人は不審な表情をして、目を合わせるが

その後はオレに向かって一人がつっこんでくる。


両手の力をヤリに集中して、全力での突進。


(さぁ・・・いくぜ!!オレのアズル!!!!)


左手はオレンジ色のオーラに包まれ、

敵も一瞬怯む。


だが、勇敢に突進してくるのだった。


「さぁ・・・来やがれ!!!」


ドンと構え、敵の動きを見切る。

迫る長槍に対して、ギリギリのタイミングで避ける。

空振りを決めた兵士のそれを右手で掴み、引っ張ることで、

前によろけさせる。


「もらったぁぁぁぁぁ!!!!」


そのまま仄かに光る拳で顔面へ!!



"吐血の一撃マッドショット"


が見事に決まったのだった。


兵士は、遺体となるのではなく倒れてすぐに消滅する。


「なるほど。死ぬとこうなるってことか。」


もうひとりの兵士は、身体を震わせて小動物のようになっている。


「情報を吐いてくれるなら、お前の命を助けよう。

もっともオレはどちらでも構わないわけだが・・・?」


「ヒィィ」


ヤリを捨て、彼は後ろへ走り出す。両手を挙げて。


「カタキをとりにはこない・・・か。」


オレはそのまま走行体制をとる。


(全力走行・・・開始!!)


「逃がすわけねぇだろ。

お前はオレにとって重要な存在じょうほうなんだからよ。」


兵士は瞬時に回り込まれたことに絶望し、

両膝をわずかに流れている川につけるのだった。





「要はオレは懸賞金つきの指名手配犯ってことか??」


「は・・・はい。王国から遣わされて、あなたを捕獲するという任務を・・・。」


俺がこの兵士へ質問(尋問ではないぞ)してみると


①兵士はアイギス王国という山岳地帯に位置した国の警護兵。

つまるところ、警察のようなものらしい。


②マームートンの種族は、城下町の運搬にンや人によっては"コロシアム"という

見世物小屋での娯楽を提供する関係のようだ。


③オレはコロシアムの戦闘スタッフだったらしいが、出資元の太客に暴力を振ってしまい”指名手配"を

かけられてしまったようだ。だが、マームートンのこうした犯罪行為は、王国では

よくある事案のようであった。


「うーむ。なんだかオレ悪者みたいじゃねぇか。」


「マ、マームートンは気性が荒く、王国や城下町では嫌われていましたので・・・。」


なるほど。嫌われ者という点は間違いないようだ。


「お前はこの後どうするんだ?王国に帰って報告さえすれば

次の仕事が与えられるのか?」


一瞬、現実世界にもいた成果を持ち帰れなかった社員が、

窓際で事務作業をこなしているだけの

記憶がフラッシュバックされた。



「い、いえ。与えられえた仕事ができてなければ私のような下級兵士は

馘首されて終わりです。私の周りはそれで職を失っています。」


「はぁん。世知辛いな。じゃあ王国には帰らないんか?」


「この近くにダケゼー宿場町と名付けられた田舎の町があります。

もうそのまま帰って、家業の木工を継ごうと思っています。。」


「ふぅん。木工ってのは、住宅とか家具とかを作る職業のことか?」


「は、はい。私の両親はそれなりに有名な木工師ですから・・・」


「なるほど。それじゃ将来はその村で安泰だな。」


「はい。。ですが昔は、宿場町として異邦の方々で溢れてたのですが、

もう今となっては将来、廃村確定のほんとに小さな町です。

ですから安泰とは呼べないかもしれません。」


(廃村確定・・・商人なんかの品揃えはあまり期待できないな)



とりあえずわかったことは、俺はこのNPCを殴り殺さなくて良かったということだ。

もし、倒してしまった場合、今頃何も情報を得ることができず途方に暮れていた。


「んじゃあオレもついていってもいいか?

この通り、腕っぷしには自信があるし多分役に立てると思うぜ?」


「え・・・??」


「まぁその・・・飛びついてきた兵士を殺しちまったのは

悪いと思っているしな。せめてもの罪滅ぼしで、お前の家業を手伝いてぇ。」


表情が次々と変わるこのNPCはかなり出来がいい。

どうにも機械的な存在に見えず、申し訳ないという感情が湧き上がる


「は・・・はい。わかりました。

ダケゼー宿場町はここから遠くの関所、といっても今は重要性が皆無で無人ですが

そこを超えた先になります。」


場所っぽいところの名前が出たら、そこへ向かう。

これはゲームではよくありMMOもその限りではない。


「よぉし。では善は急げだ。

さっそくその村に行こうぜ」


俺はこの兵士と一緒に就職先に歩みを寄せるのだった。

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