【おはようございます。マイマスター】
「おはよう、レコ」
少し眠いが起き上がったミチオは、HIT CHEFからおにぎり(チーズおかか)を購入して食べる。
「しかし、そろそろヤバイな.. ゴミを処理せねば」
そう、プラスチック製のごみなどは処理せずに麻袋にいれているのである。
【マスター、異世界製の生ゴミ以外でしたら、私が処理します】
「本当か! じゃ、あそこにある袋の中身を処理してもらえるか?」
【かしこまりました。しばしお待ちください】
対象の袋が突如輝きだした。光が収まってから袋を見るとプラスチック容器などが消えていた。
「おお! レコ、ありがとう」
【いえ、どういたしまして、申し訳ございませんがこの機能は数時間のクールタイムが必要ですのであしからず】
「了解」
また一つ、問題を解決したミチオであった。
もう一つの問題を解決する為にミチオは商人協会へ赴き、ミスティがいる窓口に
並んだ。
「ようこそ、ミチオさん。本日は屋台の件でしょうか?」
「おはようございます。ミスティさん。本日は携帯用の竈が売っている場所を聞きに来ました」
「携帯用の竈ですね。どの様なものをご使用する予定ですか?」
「大鍋に使う予定なのだが..」
「そうなると普通の竈になりますね」
「ふむ、屋台で利用したいのだが何とかなりませんかね?」
「一旦、あちらにご同席願います」
初日に訪れた個室を指してミチオは個室へと移動した。
「では、少しお待ちください」
と言ったミスティは部屋から出て行った。
(う~ん、結構めんどいのかな..)
色々と考えているとノックの音が鳴り響き、ミスティとマティーが入室してきた。
「おはようございます。マティー協会長」
「ああ、あの日以来だね。それと協会長はいらないよ」
「かしこまりました。マティーさん」
「さて、ミチオは屋台で使用する竈が欲しいんだね」
「ええ、料理を提供する為に火が必要になりますので」
「ふむ、実は方法は無いわけでは無いのだがね~」
「何か、条件があると?」
「方法としては、市場の1ブロックをミチオ専用にして竈を設置する事だが..」
「実施した場合は、私が協会より特別扱いされていると問題になる訳だ」
「そうだよ。だからこちらにもメリットがなければならないのよ。だけどミチオにはこちらがメリットになる武器がある」
「その前に、他のブロックでも竈を設置して屋台専用にすればどうだ? 料金も通常のブロックよりも高くすれば良い」
「現状、屋台一本で生活しているのは稀有だよ。仮に数ブロックに竈を設置して料金も高くしたとしよう。そこのブロックに露店商が入った場合、通常のブロックよりも利用料が高く、商品を置けるスペースが狭い、これでは市場で活動している協会員の大半が文句を言いだすよ」
「むむむ..」
「こちらにとってこの件はデメリットが大きいが、あんたならこれを上回るメリットを提示できるよ」
「どうやらそちらは何としても砂糖が欲しいようだな?」
「な~に、簡単な事さ。あの砂糖と塩の入手ルートを教えてくれるだけで、そうしたら好きなブロックを選んでいいよ~」
「では今後、調理したものしか商売しないと誓おうか?」
「良いものがあったら協会に卸して欲しいね」
「それならば、飲食物以外は協会だけに売ろうか?」
「う~ん、どれくらいの頻度で卸せるかい?」
「毎月1キロでどうだ? 買取額は通常取引されている値の倍で良い。
それと場所は管理所の傍を希望する」
「ふむ、一先ずテストケースとして竈を設置してみるかい!」
「商談成立だな」
お互いに手を取って、2度目の握手をした。
「ミチオさんは凄いですね。マティー協会長と強気の交渉ができるとは、商人としてでもやっていけるのでは?」
ミスティは純粋に思った事を呟いた。
「ふん、本当に料理人なのかね~」
「竈が出来次第、屋台を始めますから是非食べに来てください」
「まぁいいさ、この件は手続きしとくよ」
「では、失礼します」
ミチオは協会を出ていき、ピートの屋台へと向かった。
屋台の手前に着くと少し行列ができていたので素直に並んだ。
並んでいる間、肉を焼きながら、忙しく客をさばいていくピートを眺めているとミチオの番になった。
「串焼き1本!」
と共にお金を渡す。
「おう! ミチオか、あのおかげで繁盛しているよ!!」
かなり上機嫌のピートが焼きあがった串焼きをミチオに渡した。
「忙しいみたいだから、今日は行くよ」
肉をほうばりながら、露店管理所に歩いていく。
管理所についたミチオは窓口で生ゴミの処理方法と共同厨房の場所と利用方法を聞き出した。実際に厨房を除いて、仕込みの算段を付ける。
用事が済んだミチオが管理所を出ようとした時、ミスティが管理所に入ってきた。
「ミチオさん、先程振りです。丁度良かった!」
「ミスティさん、先程振りです。どうしたのですか?」
「例の件を実行する為にここへ来ました。ミチオさんがいるなら場所を一緒に決めようと思ったのです」
「なるほど、ではお付き合いします」
ミスティは窓口で話をすると2階にあがっていたので、ミチオは付いて行くとミスティは一番奥の扉をノックして、応答後に入室していった。
そこには、裕福そうな横に大柄の男がいた。
「おお! ミスティか、何か用か?」
「スピト副協会長、特殊な案件が発生したので、協会長より手紙と指示をお伝えに来ました。また、隣にいる方はその案件に関連する方となっております」
「どうもはじめまして、料理人のミチオです」
「どうも、私はこの管理所を任されているスピトだ。二人とも椅子に座り給え」
ミチオはミスティの隣に座り、スピトが対面に座る。ミスティから手紙を受け取り、中身を読んていった。
「なるほど.. う~む、質問だが彼を料理人として優遇するほどなのかい?」
「!! それは..」
質問を受けたミスティは戸惑った。ミチオが料理人だというのは半信半疑な状態であり、寧ろ錬金術師の方が信用できる程だ。
「自由に使える厨房があれば、すぐにでも証明いたしますよ」
満面の笑みで答えるミチオ
「ほう! ならば共同厨房を自由に使いたまえ。使用料は私が出そう。しかし、食材などはそちら持ちだ」
「調理器具は?」
「そちらもこちらで準備しておく、必要な物は?」
「大鍋と竈だけで大丈夫だ。それと宿に必要なものがあるから取ってくるよ」
「うむ、わかった待っているぞ」
「一旦、失礼する」
ミチオは部屋を出ていき、宿へと向かう。
「スピト副協会長、彼は錬金術師の可能性が高いと協会長と読んでいるのですよ!」
ミスティが協会長の考えと今までの経緯を話す。
「ミスティ、本当は彼が料理人だと思っているのではないか? しかも、あの物言いと条件で彼は料理人だと私は確信したよ」
「うぐ、確かにそうですけども..」
「例の物に気を取り過ぎだ。マティーは目が眩み過ぎだから、彼の本質を見ていないから拗らせている。そうは思わないかい?」
「はい..」
「すまないが、マティーをこちらに呼んでくれないかい? 料理を食べれば少しは目が覚めるだろう」
「かしこまりました」
ミスティは協会本部に急いで駆け出した。
「やれやれ、しち面倒くさい事をしよって..」
パイプに火をつけて一息ついたスピトだった。
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