静かに……。
風が凪ぐ……。
「ふうっ」
サッと剣を懐に戻す。
風が途端にやみ、静かになった。
シーンとした森の中。
剣を持った青年の前に魔獣が怯えて立っていた。
「かかってこないのか?」
『グルル……!』
魔獣は怯えながらも唸り声を上げる。
そして、意を決したかのように青年に突進した。
──サッ
剣を秒で抜くと一瞬で切り捨てる。
『!?』
ドサッと魔獣が倒れた。
『な、何をした…』
知能のある魔獣が青年に恐れながら聞いた。
「風で切っただけだ」
『風使いの分際で……?』
──バシッ
剣の切っ先に風を載せ刃の風を前に送り込む。
それだけで前にいた魔獣は八つ裂きにされた。
『グ……』
更に青年は剣を構える。
次の瞬間、青年を中心に風が巻き起こり始めた。
『!!?』
魔獣は四脚で耐えていたが、やがて吹き飛ばされていく。
『……この』
恨みの目線を送っていたが最後に残っていた魔獣が風に飛ばされた。
「この程度、か……」
青年はつぶやき、剣を革袋にしまう。
風の力で革袋が浮いた。
風使いの剣聖勇者。
青年は森を去っていく。
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