ハートフル☆戦士 サイコ♡アクセル

―サイコパスの少女が変身ヒロインになったら―
闘骨
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第24話 街の全てが武器! サイコ・プレデターの万能能力!(前編)

公開日時: 2020年9月16日(水) 12:00
文字数:2,281

『グゥゥヌウウウオオオオオオ!』

 雄叫びを上げ、ダークハンマーが立ち上がった。メイスが霧に溶け、モーニングスターに変形した。

 突っ込んで来るトラックを、ダークハンマーはモーニングスターで横に一閃した。モーニングスターのスパイクがトラックのフレームを抉り、運転席を薙ぎ払った。

 ダークハンマーは運転席を覗き込む。芭海はみが居ない。

 運転席の下に屈んでいた芭海が、割れたフロントガラスから身を乗り出した。芭海の手には、二つの眼球を寄生させたチェーンソーが握られていた。

 ハートフルエナジーを燃料としたチェーンソーは、エンジンロープを引くまでもなく稼働した。ぐるぐるした眼球の動きと連動するかのように、チェーンが猛烈に回転を始める。芭海はチェーンソーをダークハンマーの前腕に叩きつけた。

 激しく火花を散らし、チェーンがダークハンマーの腕を削る。

『ググググヌウウウアアアアアアアアアアアアア!!!』

 芭海がチェーンソーを振り抜き、ダークハンマーの左腕が切り落とされた。トラックのフロントにめり込んでいた腕はそのまま残った。

『死ネエエェェェェェェッッ!!』

 ダークハンマーがモーニングスターで殴りかかる。切り落とした腕を足場にしてダークハンマーの胸に飛び込み、芭海は鎧の首当てを掴んで姿勢を保った。芭海が腰に手を伸ばす。取り出したのは電動ドリルだった。

 体に密着した芭海を殴ることはできず、また空いている手は切断され掴みかかることもできなかった。

 眼球が貼り付き血管に侵された電動ドリルを、芭海はダークハンマーの左眼に突っ込んだ。兜の覗き穴に刺さった電動ドリルのトリガーを、芭海は思い切り絞った。

 ドリルが回転し、ダークハンマーの眼球をぐちゃぐちゃに掻き回した。

『ギギギギギギギガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!!??』

 ダークハンマーの兜が滑稽なほど小刻みに震えた。ついおかしくて芭海は声を上げて笑った。

「アハハハハハハハ! おもしろっ!」

 芭海は子供の頃、父に拷問のやり方を教えてもらった。その時に対象の体に電動ドリルで穴を空けていく拷問方法があった。肉がドリルに巻き取られ血が噴き出す光景を久しぶりに思い出し、芭海は懐かしい気分になった。あの頃は飛び散る肉が勿体ないとしか思わなかったが、人体でなければこんなにも面白かった。

「ハハハハ! ハハハハハ! ビクンビクンしてるねぇ!? 気持ちいいのかなぁ!?」

 ダークハンマーの全身がビクビク痙攣した。スイッチを切り替えて逆回転させ、芭海はドリルを引き抜いた。ダークハンマーの兜には深い穴が空いていた。

「次はこっち♡」

 ドリルの先端を、今度はダークハンマーの右眼に向けた。覗き穴を削り、ドリルが兜の中へ侵入しようとした。

 ダークハンマーの胸の中にある黄色い炎の隣に、もう一つ炎が灯った。新たな炎はオレンジ色だった。

『図ニ、乗ルナ』

 凄まじい鈍痛が、芭海の右脇腹を襲った。目をやると、芭海の脇腹に、太く長い鋼鉄の棒がめり込んでいた。

(は!?)

 棒の後方に視線を走らせると、ダークハンマーが左腕の断面を構えていた。断面には、芭海にめり込んだ棒と同じ直径の穴が空いていた。腕の切断面から発射された棒の直撃を受け、芭海は空中へぶっ飛ばされた。

「痛っ……たい……ッ!」

 脇腹に嫌な感触があった。肋骨が折れたかもしれない。ハートフル戦士のコスチュームでなければ死んでいた。

 芭海は自分を襲った黒い棒を睨んだ。

パイル……か!?)

 漆黒の杭を観察していた芭海の視界が、猛烈な速さで迫る黒い壁に突如塞がれた。ダークハンマーが振るったモーニングスターが、芭海を殴打したのだ。芭海は路上に叩き落とされた。

「がっ……っぁ!」

 脇腹を押さえ、芭海は激痛に顔を歪めた。モーニングスターで殴り飛ばしてくれたおかげで、ダークハンマーとは三十メートルほど距離ができていた。折れた肋骨を触感で数えながら、芭海は立ち上がった。

(第八から第十一肋骨……ボッキリイってんねぇ……)

 モーニングスターの殴打を防ぐのに使った電動ドリルは、木端微塵になっていた。芭海は胸に手をあてて深呼吸し、心拍を落ち着かせた。

「ちょっとテンション上げ過ぎたね……いけないいけない。楽しんでる場合じゃないな」

 ダークハンマーがズシンと道路を踏み、芭海へ迫る。ダークハンマーの切断された左腕が、変貌を遂げていた。

 筒状に変形した前腕は、肘まで空洞の新円が貫通していた。肘にはリボルバーのシリンダーのような装置が付属し、シリンダーの後部からは先ほど芭海を襲ったのと同じパイルが円を描いて数本、飛び出ていた。

 ダークハンマーの右眼がカッと光り、胸の中に黄色とオレンジ二つの炎が燃え盛る。あのオレンジの炎が二つ目のエナジーストーンだな、と芭海は察した。

 ハンマーストーンに加えて、パイルストーンといったところだろう。

 ドリルで抉られ亀裂の走った兜を震わせて、ダークハンマーは怒りを露わにした。

『小賢シイ真似バカリシオッテ……許サヌ……ッ!』

「ハハッ……君も大概だろぉ」

 右手にモーニングスター、左腕はパイルを装填した発射装置。

(パイルバンカー……ってやつかな)

 芭海はプラグコードで背中に括りつけていた、電動丸ノコギリを手に取った。邪魔なプラグコードを引きちぎり、吐き出した眼球を二つ寄生させた。血管が纏わりつき、眼球がぐるぐる回る。スイッチを押すと、丸ノコギリが猛回転した。

「はあ~ぁぁぁ……」

 深く息を吐き、芭海はじっと相手を凝視した。パイルバンカーの発射口を芭海に向け、ダークハンマーは低い声で言った。

『肉塊ニシテヤル』

「肉も無ぇヤツがなに言ってやがる」

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