女子校の百合小説屋さん【第1章完結まで毎日更新】

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フルート吹きの先輩

公開日時: 2020年9月4日(金) 00:00
文字数:1,248

 私は中等部三年生です。先輩というのは、吹奏楽部の同じフルートパートの先輩のことで……高等部二年の皐月先輩っていいます。

 私と皐月先輩の出会いは、中一の頃の部活紹介オリエンテーションでした。入学前から中高では吹奏楽がやりたいと思っていたので、まっすぐに吹部の活動場所である第一音楽室に向かいました。

 皐月先輩は目を引く外見の人でした。どうやら外国の血が入っているらしく、地毛が金髪だったんです。それに……すごくかっこいいんです。今となっては私の主観かもしれないんですけれど、とにかくかっこいいんです。短めの髪に中性的な顔立ちで、女子校の中ではかなり目立つ人です。いわゆる王子様枠って言うんでしょうか。とにかくそういう人なので、最初からライバルは多かったです。ただ、吹部は先輩や顧問の先生によって所属パートを決められるので、皐月先輩と同じフルートになれなくてその時点で辞めてしまう人も数人居ました。私は幸運にもフルートを宛てがわれたのです。

 皐月先輩に憧れて吹部への入部を決める人も少なくなかったようですが、そもそも吹部とはそういう体質の部活でした。というのは二年半所属して段々と分かってきたことです。上下関係がはっきりしていて、先輩に憧れる後輩という構図は他のパートでも見かけました。ただ、好きな先輩に告白したなんて話は聞きませんでした。上手くいかなかった場合、お互いにその後の部活動が辛くなるからでしょう。

 私も右に同じく、皐月先輩に告白しようだなんて考えたことはありませんでした。それでも、朝練、放課後練、土曜日の部活動、皐月先輩と一緒に練習できる機会はたくさんあって、長い時間を共にすることができました。私はそこに幸せを見出していたのです。

 けれど皐月先輩は高校二年生。今年度をもって吹部を引退してしまいます。他の部活は今月の学園祭で引退という所が多いですが、吹部は3月に定期演奏会があるので引退まで猶予があります。

 皐月先輩が引退してしまう前に、皐月先輩との幸せな思い出を作っておきたいのです。とはいえ本人にそう強請るわけにもいかないので、最高の皐月先輩との思い出を作ってほしいと考えています。




「……なるほど。概要は分かりました。それではこちらからいくつか質問させていただきますので、差し支えない範囲でお答えください」


 それから私は皐月先輩の外見や話し方、依頼者の知っている範囲での彼女の普段の様子などを聞いた。具体的なエピソードが出る度に、依頼者がどれだけ皐月先輩のことを慕っているのかよく分かった。彼女の話を聞き終わる頃、私はルーズリーフ数枚分のメモをとっていた。


「ありがとうございます。他に話したいことはありませんか? なければこれでヒアリングを終了しますが」


 私が確認すると、依頼者は少し唸ってから切り出した。


「……ええと。もし皐月先輩に……」

「……皐月先輩に?」

「あ、いえ……」


 依頼者はそこで押し黙る。変に急かすとかえってよくないので、私は黙って続きを待った。一分ほど経過して、依頼者は口を開いた。



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