ハイキングからの帰り道。
ガタン、ゴトン、ガタン、ゴトン
空はすっかり赤く染まっている。
電車に揺られながら、気持ちよく寝息を立てている結葉。
彼女から言われた言葉が頭から離れない。
『殺人だって犯してあげる』
それだけボクのことを思ってくれてるってことを表現するためのたとえ話だと思うけど、彼女の微笑みと言葉の過激さのギャップに、つい驚いてしまった。
結局彼女の過去に何があって、何が彼女をそこまで言わせているのかまでは分からずじまい。
「んん……」
すっかり安心しきったような穏やかな寝顔。
それを見ていると、さっきまでの違和感なんて全く気にならなくなってしまいそうだ。
『次は————』
もう少し寝顔を見ていたかったが、結葉の乗り換え駅に着くため、急いで起こす。
「結葉、もう着くよ。ほら起きな」
「ん~、もうちょっと……」
「だーめ」
「……けちんぼ」
子供のように少しぐずりながら頭をスリスリ押し付けてきたが、なんとか起こし、結葉と別れた。
電車が出発しても、ボクの姿が確認できなくなるまで、ずっと手を振り続けてくれている。
ボクも手を振り続けた。
足はものすごく疲れてパンパンだけど、その分楽しくて幸せな思い出が作れた。
突然、スマホが震える。何か通知が来たようだ。
内容を確認してみると、結葉からのメッセージだった。
写真も添付されている。
げっ、こんな写真いつの間に撮ったんだよ。
そこには『連休中もちゃんと連絡を取ること!』というメッセージとともに、ボクがバテバテに疲れ果てながら歩いている写真が送られてきていた。
これはちゃんと約束を守らないと、あとでひどい目にあいそうだ。
今日のことを思い返すと思わず笑みがこぼれてしまう。
そんな帰り道だった。
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