「まず、アルマさん達は帝都にあった冒険者連盟の帝国支部がギルド派に壊滅させられたのはご存知でしょうか?」
「はい。 あまりに急だったから、リーベル公国のレーツェル殿下から聞きましたが……」
「私達『スチュワート』は、アルマさんからの話で漸く知ったのです。 情けないながら、町の連盟の方も急な介入依頼に混乱していたので……」
アルマ達『スカーレット』は、予めレーツェルから聞いており、メンバーにも伝えたが、セリア達『スチュワート』は、自分たちが運営する宿屋に来たアルマ達から聞いた事で初めて知ったらしい。
やはり、オリバーシルトの連盟支部も急な介入依頼に混乱していたようだ。
「それに関してもこちらからもお詫びいたします」
「本当にごめんなさい!」
介入依頼における混乱を知り、テッド皇子とアリス皇女は謝罪した。
「それで、帝国のギルドはメインが即戦力至上主義らしいのですが」
「今は亡き父がそれでしたから……、アレを父と呼びたくはないですがね」
「私達を産んだお母さん曰く、アレは歪んだ思想の下、女を下に見ていたらしいよ」
(ていうか、二人とも父である前皇帝をアレ呼ばわりとか……、よっぽど嫌ってるんだなぁ)
ケリンが二人の前皇帝に対する呼び方で相当嫌ってる事を察した。
アルマからの質問に答えたテッド皇子によるとやはり彼らの父は即戦力至上主義だったらしい。
さらに、歪んだ思想を持っており、女性を下に見ていたようだ。
アリス達を産ませたのも、その歪んだ思想によるものなのだろうか?
「アレが病死した後に、アレと同じ考えの元次男を皇帝にしましたが、次男も4人の母上と長兄主導によるクーデターで処刑されましたからね。 母上と次男以外の私達子供はアレの思考に対して常に反発してましたから」
「アレは、これでもかと言う程に他国から即戦力になる強い冒険者を連盟の断りもなく無理やり帝国のギルドに入れさせ、他国を弱体化させたんだよ。 実を言うとアレが皇帝の頃は、冒険者連盟に加入してなかったしね。 長兄のエッジお兄ちゃんが皇帝になってからようやく連盟に加入できたんだよ」
「連盟に加入してなかったんですか。 エリクシア王国と同じ感じですね……」
そして、話を続けるテッド皇子とアリス皇女の内容にアルマ達は固唾を飲んで聞いていた。
実は彼らの父が病死した後には、父と同じ考えの次男を皇帝にしたらしいが、4人の元妻と長男がクーデターを主導、次男は処刑された。
さらに、父が皇帝であった頃は即戦力至上主義の名の下に他国からの冒険者を無理やり引き抜き、帝国のギルドに入れさせていたようだ。
連盟に加入していなかったからこそなし得た行為なのだろう。
連盟に加入したのも長男が皇帝に就任してから実現したとのこと。
ここまで聞いたアイシアがまるでエリクシア王国を見ているかのような感想を口にした。
「長兄のエッジ兄上が皇帝になってからは、今までとは真逆の政治をしました。 ギルドの即戦力主義者はペナルティが課せられ、連盟によるギルド管理を行わせ、冒険者学校も設立したり、国民の為の定期馬車を用意するなど、即戦力至上主義者にとっては住み心地が悪いように組み替えたのです」
「即座に処罰しなかったんですね」
「ええ、ギルドの建て替えには、ギルドマスターを交代させる必要がありまして、アレのせいでなかなか代わりのギルドマスターが育たない状態だったので後回しにしたんです」
「結果論だけど、それが結局仇になっちゃったけどね……」
エッジ皇帝が就任してからは、父によって苦しめられた国民を救うために税金を少なくするなどの父の時代とは真逆の政治をやってきたようで、ギルド派を苦しめてきた。
セリアがギルド派を即座に処罰しなかったのかと聞いたが、代わりのギルドマスターがおらず、育てるにも時間がかかるので、連盟の監視の下でギルドを管理、代わりとなるギルドマスターを育てつつギルドの建て替えを行う予定だった。
「ギルドも2週間前にはがらりと人員を変えて、即戦力至上主義者を駆逐する予定でしたが、そこで奴らが動いて連盟を壊滅させたのですよ。 以後はあなた達の知るような内容ですね」
「それがクーデターの足掛かりとしたわけか」
「そういう事だね。 後、ギルド派はどうやってエッジお兄ちゃんの介入依頼を聞いたのか、各国との国境付近にも派遣して待ち伏せ、そして駆逐して介入させないようにしたんだよ。 現に『リグレッド魔法国』から来た冒険者たちが、ギルド派の襲撃にやられて全滅したんだから」
「「「全滅!!?」」」
アルマ達よりも先に『リグレッド魔法国』からも冒険者を送り込んだようだが、ギルド派の待ち伏せと襲撃で全滅したらしい。
それを聞いたアイシア達は一斉に驚いた。
「あそこは特に【ビショップ】が多く、前のエリクシアが起こした【剣士狩り】と【ビショップ狩り】によってかなりの冒険者が狩られたからね。 派遣できる冒険者も限りがあったんだよ」
「じゃあ、あそこは今の戦力は……?」
「【黒魔術師】と【白魔術師】がメインだね。 物理系は向こうでは一人もいない状況だよ」
アルマが『リグレッド魔法国』の事情を明かす。
魔法がメインである国だけに、職業も魔法職しかいないのが現状。
その中の【ビショップ】は、エリクシアが起こした【剣士狩り】と【ビショップ狩り】によって数を減らされたのが響いたようだ。
「そういった理由で、『リグレッド魔法国』からの冒険者の派遣は断念されました。 これにギルド派は勢いをつけ、私達は母上と共に頭を抱えました。 ですが、貴方たちはほぼダメージを受けることなくギルド派を倒しました。 なので今は貴方たちに頼みたいのです」
「他の国からの冒険者も苦戦はしたけどなんとか倒したみたい。 でもお兄ちゃん達の強さはかなりのものだし、もしかしたらって思ってね」
テッド皇子とアリス皇女はケリンやアルマ達の強さに賭けたいと言った。
他の冒険者達は、何とかギルド派に勝ったとはいえ、傷が深く帝都到着までに時間が掛かる見通しのなのだが、アルマ達はダメージが少なくギルド派を圧倒していたのだから頼まれるのはやむなしと言う所か。
「確かにこれ以上は時間が掛けられないし、改めて受け入れようと思うけど」
「俺は賛成だな。 その為に帝国に来たんだし」
「僕も同じ意見だよ」
「私もです」
アルマはアリス皇女ならびにテッド皇子の願いを受け入れる決断をした事をメンバーに言う。
アイシアは無言だが賛成の意志を示し、ルーデシアやケリン、シルスも同様だ。
一方のセリアも『スチュワート』のメンバーに声を掛けた所、この場にいるメンバーが全員賛成した。
「後はフレアだね」
「ええ、そろそろ部屋を確保しないと……」
「それでしたらこの別荘の部屋をお使いください。 二人と使用人数人でもかなりの部屋が空いてますので」
「いいんですか?」
「せっかく、リーベルからはるばる来てくれたんだしね。 私個人としては訳ありの男の子が気になるしね。 女嫌いが首魁のギルド派に組み込まれてたんでしょ?」
「ええ、そうです」
「じゃあ、その子ともう一人のお姉ちゃんを一緒の部屋に入るようにしておくね」
「あ、すみません。 フレアにも伝えておきます」
「では、私から使用人に皆様の分の料理を作るように伝えておきます」
「何から何まですみません」
テッド皇子がこの別荘を宿代わりにして構わないという事で、アルマ達はその好意を受け入れる事にした。
フレアと保護した少年を一緒の部屋になるように配慮もしてもらった。
こうして、今夜は皇族兄妹が住む別荘にて一晩泊まることとなったのだ。
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