「では、帝都における対ギルド派の討伐に向けた作戦会議を始めます」
顔合わせが終わり、用意された席に戻った冒険者達はメルア皇女の言葉に耳を傾ける。
ギルド派の思想が世界に染まらないようにしないといけないので、みんなは真剣だ。
「まず、スパイが必死に忍び込んで入手したクーデターの実行のための配置はこうなっています」
メルア皇女がまずスパイが入手したギルド派の配置を記した紙を壁に貼り付ける。
「正面突破を行うグループと、各側面から攻めるグループ、そして背後から攻めるグループに分けられてるね」
「確実に実行するために分散したか。 帝国側の防衛はどうなってます?」
アルマがギルド派の配置についてそう言及し、ケリンはギルド派に対する帝国側の防衛について質問をした。
「多数のインペリアルガードが攻められるであろう各場所に配置されます。 さらに宮廷魔術師も配置される予定です」
「それでも地力はギルド派の方が上だと……」
「はい。 なので、予想される四つの場所にあなた達にも配置してギルド派のクーデターを阻止してほしいのです」
「ギルド派の仕込みによっては、インペリアルガードでは役に立たない可能性もある……という事か」
「そう考えて貰えれば」
「帝国の冒険者連盟支部を壊滅させるくらいだしね。 ボク達が出張るしかないでしょう」
ギルド派による仕込みがクーデター当日まで分からない以上、あらゆる機転を利かせやすい冒険者の力が必要なのだろう。
それに関連するエレノアの言及にも、メルア皇女は否定しなかったのだから。
アルマもギルド派の戦力を考えて、自分達が出張るしかないだろうと理解を示していた。
「なお、比率は正面突破グループが七割、後は一割ずつ割りふりされてます。 ですが、こちらは均等に割り振ろうと思います」
「正面以外の敵を早めに片付けたいからですか?」
「はい。 出来るだけ側面や背後からの敵数を排除して、正面の敵を安心して屠りたいので」
「となると、側面や背後にいる部隊は速攻で片付けられる冒険者で纏めた方がいいのかな?」
「そうなります。 ですが、『スカーレット』と『スチュワート』のみなさんは対正面部隊に回って貰います」
「となると、ケリン君やセリア以外の剣士が必要なのか……」
さらにメルア皇女による話では、ギルド派の部隊配分は正面に七割、あとは一割ずつ割り振られているらしい。
そのため、正面以外のグループを即座に殲滅したいようだが、アルマのギルド『スカーレット』とセリアのギルド『スチュワート』は多数配備される正面突破グループへの対処を頼むようだ。
そうなると、ケリンやセリア以外の剣士が必要になるが……。
「幸い我がクレージュのもう片方のギルドには剣士がいる。 彼らを側面か背後のどれかに回してもいいだろう」
「私のギルドも剣士がいますし、背後あたりなら受け持ちます」
「リコリス王国の方はどうなのですか?」
「僕の方は剣士が二人いる。 側面なら切り込んでいけるだろうね。 カリナさんのギルドは逆に剣士がいない」
「あはは……」
エレノアが自分のギルド以外のもう一つのギルドに剣士がいるという。
彼女の隣にいる無口の少女がそのギルドマスターなのだろう。
一切喋らず、コクリと頷くだけだ。
一方で、リコリス王国はというとカリナのギルドは剣士がいないようだ。
「では、確認したところでこちらの戦力配分を行っていきます」
ある程度の確認を終えたメルア皇女が、ギルド派に対する戦力を四つに分け始めた。
アルマの『スカーレット』とセリアの『スチュワート』は、対正面部隊に決められてるので、それ以外のギルドがどこを担当するのかをメルア皇女によって決められていく。
「私はどうやら君達と一緒に対正面部隊になるようだ。 よろしく頼む」
「エレノアさんのギルドと一緒なら心強いですね。 よろしくお願いします」
「お互い頑張ろうではないか、『スカーレット』ならびに『スチュワート』の諸君」
エレノアのギルドは、アルマとセリアのギルドと同じ対正面部隊になった。
お互い、握手で歓迎したようだ。
(ギャロウズさんの方は……右側面で、リコリス王国のカリナさんのギルドと一緒か……)
エレノアと握手をしているアルマは、少しだけギャロウズを見る。
彼が話しかけてこなかったリコリス王国のカリナのギルドと一緒に右側面のギルド派と対峙する。
「アルマ?」
「ケリン君。 もしかしたら、右の討ち漏らしを対処してもらう可能性のあるから、心掛けてね」
「どういう事だ?」
アルマはケリンにギャロウズの様子を見てからひそひそ話をする。
彼の様子を見て、嫌な予感がしているようだ。
それが気になったケリンは、理由を聞いてみる。
「ギャロウズさん、ケリンさんに話しかけなかっただけでなく、実はリコリス王国のギルドやクレージュ王国のギルドへの顔合わせをしなかったんですよ。 明確に避けるかのように」
「確か……テリアが言ってたな。 ギルド加入してあまり経っていない他ギルドの冒険者には眼中にないって」
「ええ、ですがリコリス王国のギルドやクレージュ王国のギルドは、かなりのベテランがいるんです。 エレノアさんを含め」
「という事は……?」
「キャリアだけでなく、職業によってそういう対応をしているんだと思います。 実は彼のギルドメンバーには白魔術師や忍者がいないんですよ」
横からアイシアがケリンの疑問に答える。
どうやらギャロウズはケリンみたいにギルドに入り直して一年も経たない者を無視するだけでなく、他国のギルドにすら顔合わせしないようだったという。
そして、彼のギルドメンバーの様子からして【白魔術師】や【忍者】がいないのだ。
「まさか……?」
「察しの通りだよ。 彼、白魔術師や忍者を嫌ってるみたい。 うちのメンバーのルーデシアやシルス君にも話しかけてこなかったし」
アイシアの話を聞いたケリンが何かを察したようだが、アルマがその答えを出した。
シルスやルーデシアにも話しかけてこなかったのは、忍者や白魔術師が嫌いだからなのだろう。
(彼が何でそこまで嫌うのか……。 いや、今は……)
ケリンはギャロウズが何故忍者や白魔術師を嫌うのかという疑念はあるが、今は頭を振り払う。
明日には重要な依頼を遂行しないといけないからだ。
「あの装備も持って来てるから、それを使うようにね」
「ああ」
アルマからは、今回は『あの装備』を持って来ているから、今の懸念に対する措置として使うようにと言われた。
(あのドラゴン装備を早速使う事になるとはな)
ケリンは『あの装備』……ドラゴンの武器を使う事になるとは思いもよらなかったが、今は割り切るしかないだろう。
一部の不穏を抱えながら、明日に向けた作戦会議は終わったのだった。
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