追放剣士は新天地のギルドで花を咲かす

追放された剣士ケリンが新天地で紡ぐ冒険者活動記
イズミント
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皇子と皇女からの新たな報告

公開日時: 2021年8月15日(日) 12:30
文字数:2,447

 テッド皇子から食事の準備が出来たという報告を受けたアルマ達は、食堂へと向かう。

 例の少年はスチュワートのメンバーであるフレアに任せた。

 彼女が少年にとって、心を開ける相手だろうと踏まえての事。

 なお、少年とフレアの分の食事を従者が部屋に持っていってくれるそうだ。


「メニュー的にはシンプルにしましたから、食べやすくなると思います」


「あえて豪華にしなかったのですか?」


「私やアリスを産んだ母上が庶民的な料理を好んでますから。 私やアリスも母上と同じく庶民的な料理が好きなんですよ」


「へぇ……」


 用意された食事は意外にも庶民的なメニューばかりだったので、アルマ達は驚いたが、テッド皇子やアリス皇女を産んだ女性は庶民的なものを好んでいるらしく、それが影響しているみたいだった。

 そんな話をしながら食事をしていた時に、不意にテッド皇子がある話題を切り出した。


「アリスから聞きましたが、保護している少年の女嫌いは、連盟が危険人物とされている二人の女冒険者が原因だとか……」


「はい。 ボクのギルドに連盟のアポイントを取らずに面接に来る位に自分ルールに染まってましたね。 今は野良冒険者らしいですが……」


「それなんですが、先程決定した内容がエッジ兄上経由で教えられたのですが、冒険者個人も連盟に登録しないといけないと決定したみたいです」


「そうなのですか?」


「はい。 既にギルドに入っている冒険者は自動的に連盟にも登録されてますが、ギルドに入っていない冒険者は一度各町にある連盟支部に登録する必要になりました。 連盟に登録しない野良冒険者は以後は違法冒険者として処分されますね」


 テッド皇子から話された内容は、ギルドに入っていない冒険者も一度連盟に登録する必要があり、それが義務となった事だった。

 既にギルドに入っているケリン達は問題ないのだが、アルマのギルド『スカーレット』に連盟の仲介なしで突撃しに来たルール無視の女冒険者二人は、現在野良冒険者なのでその二人も連盟に登録しないと違法冒険者となる。


「なら、その女冒険者達は登録に拒否したら、どうなりますか?」


 少年を女嫌いにしたあの女冒険者達は、素直に登録するとは思えない。

 拒否する可能性を示唆しつつ、ケリンはテッド皇子に拒否した場合の事を聞いてみた。


「エッジ兄上が聞いた所、拒否したら違法冒険者のままなので、その場で処刑して構わないのだそうです。 報告はしておく必要はありますが……」


「成る程。 連盟も思い切った事をしましたね」


「過去のエリクシアの冒険者の扱いが問題となって各国が極秘に話を進めていたそうですね。 この帝国内の冒険者ギルドの大半が連盟に加入していないので、これで合法的に処分できるのは私達としてはありがたいですがね」


 会談がエリクシアの冒険者の扱いが問題となっている時点で極秘的に行われていた為に、決定した事にアルマは思い切った決定だと支持した。

 テッド皇子にしても、帝国内の大半の冒険者ギルドが連盟に加入していない、いわば野良冒険者が大半いる事態なので、そういった意味では合法的に処分できると安心している。


「本当はもっと早く決定する筈だったみたいだけど、当時のエリクシアの国王と帝国のアレが会談をめちゃくちゃにした時期もあったからね……」


(未だに死んだ前皇帝を『アレ』扱いかぁ……)


(容赦しねぇな、アリス皇女は)


 決定が遅れた理由が、当時冒険者は国が管理すべきと主張し、連盟加入国と対立したエリクシア王国と即戦力至上主義を掲げた当時の帝国の皇帝が会談に乱入し、会談をめちゃくちゃにした時期があったからだと悪態つきながらアリス皇女は説明した。

 その際に、死んだ前皇帝を未だに『アレ』扱いにしている様子に、アルマとケリンは苦笑した。


「なら、現在地下牢に入れてるギルド派の冒険者達は?」


「素直に自白するとは思えないので、魔法を使って読み取りした後に処分しようと思います。 フレアさんのような魔法は私も使えますので」


 そして、次はセリアが地下牢に入れてる今では違法冒険者扱いになっているギルド派冒険者の扱いについて尋ねた所、テッド皇子が魔法で心を読み取りした後に処分する予定らしい。


「明日以降この町を出る際は、西の街道を通って『オルフィーナ』の町を目指すといいでしょう。 ここからは大体4日掛かりますし、途中の町もないですが、魔法のコテージを支給しますので」


「西の町ですか?」


「うん。 その『オルフィーナ』の町は帝都への近道が用意されてるから。 そこに現在私とテッドお兄ちゃんの姉のメルア・グラニュ・アレックス第二皇女がいるしね。 私が連絡しておくから会っておくようにね」


「第二皇女様が……」


「そして帝都への近道ねぇ」


 アリス皇女とテッド皇子が、町を出る際に西へ経由し『オルフィーナ』の町へと目指すことを勧めた。

 その理由は、件の町に帝都への近道が用意されているらしい。

 アリス皇女曰く、そこに居続けている姉にあたる第二皇女のメルア・グラニュ・アレックスに会えばいいとの事。

 だが、道中に町はないのでテッド皇子が野宿用に作った魔法のコテージを支給するようだ。

 これは折りたたまれた状態で持ち運びが可能で、魔力を注ぐと6人住めるレベルの大きさになる上、結界によって襲撃される恐れはないため、安心して休めるがかなり値が張る代物だ。


「アルマさん、この際この提案は受けましょうか」


「そうだね。 迂回するより近道ルートを通った方が早く着くかもしれないし」


 セリアとアルマがどうするかを確認し、お互い西へ経由するルートにすることを決めた。


「分かりました。 明日の昼にそのルートで通ります」


「じゃあ、食事後にメルア姉上に連絡しますので、オルフィーナに着いたらメルア姉上に会うようにしてください」


「はい」


「では、食事の続きをしましょうか。 冷めてしまいそうですし」


「そうですね。 改めていただきます」


 重要な話を終わらせたアルマ達はテッド皇子やアリス皇女と共に、他愛のない話をしながら食事をした。

 その後、各部屋で一晩寝泊まりしたのだった。



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