「しっかし、大半のギルド派の冒険者は、便乗で女性冒険者を嫌ってる節があるよね」
「冒険者イコール戦士なんだろ? エリクシアの脳筋主義も混じってる感じだなっと!」
アルマとケリンがそう言いながら、襲撃してきたギルド派の冒険者に仕掛けていく。
帝都に着くまでは、できるだけ死なせないように痛め付けないといけない。
下手に死なせれば、ギルド派に厄介な言い分を得てしまうことになるからだ。
「といっても手加減は苦手なんだよな……」
「私もですよ。 手加減なしが基本でしたから」
アイシアとケリンが、そう言いながら剣や槍で攻撃を仕掛ける。
ケリンは剣を鞘に収めたまま、アイシアは槍の石突の部分で相手を攻撃しているようだ。
「こういう時は魔法が便利だね。 魔力を調整すれば、威力を落とせるから。【フレイム】!」
「あちいぃぃぃっ!!」
「ぐわあぁぁぁっ!!」
アルマは威力を落とした【フレイム】の魔法で相手を痛め付けていく。
威力を落としているので、焼かれても死ぬことはないが、中級以上の回復魔法は必要だろう。
「マスター、別の方角から20人来る」
「へ!?」
「面倒ですね……」
シルスがまた別の方角からギルド派の冒険者が20人位来るとアルマ達に伝えた。
それを聞いたアルマは驚きの表情をし、アイシアは不機嫌に呟いた。
「確かに面倒だから、奴らの足は僕が止めるさ」
「シルス君?」
アルマが魔法を使いながら、シルスを見る。
すると、シルスのナイフから黒い魔力が発生する。
(まさか、【シャドウスティッチ】? それにしては魔力が……)
アルマが心の中で呟いた【シャドウスティッチ】。
シルスの職業である『忍者』のスキルである【シャドウスティッチ】は、少ない魔力で最大二人の影を縛って動けなくさせるサポート技だ。
だが、アルマは【シャドウスティッチ】に必要な魔力以上の力を感じ取っていた。
「【シャドウバインド】」
シルスがスキルの名を呟き、ナイフを地面に突き刺した。
「え……!?」
「黒い魔力が地面を這って……!?」
「あの先は、例の増援!? それに【シャドウバインド】ってスキル、初めて聞きます!」
アルマ、アイシア、ルーデシアがそれぞれ地面を這う黒い魔力を見てそう言葉を発した。
特にルーデシアは、【シャドウバインド】というスキルは初めて聞いたようで、より驚いていた。
そして、その黒い魔力は増援の者に気づかせる事もなく、彼らの影を縛り、動けなくした。
「な、なんだ!?」
「ど、どういう事だ! 急に身体が動けなくなったぞ!」
「い、一気に20人の増援を……」
「す、すごいです……」
(アルマやルーデシアが知らないって事は、シルスが独学で極めたのか? 後で聞いてみるか)
一度に20人もの増援のギルド派冒険者の影を縛り、動けなくした様子を見て、アルマやルーデシアは固まっていた。
一方でケリンは、冷静に考えながら残りのギルド派の冒険者を気絶させていた。
「マスター、今のうちにあの増援を!」
「そ、そうだね。 【フレイム】!」
「「「ぬわぁーーーっ!!」」」
固まっていたアルマは、シルスの掛け声で我に返り、動けない増援に向けて【フレイム】の魔法を発動。
増援の冒険者も服や一部の肌を焼かれたショックで気を失った。
先程もそうだが、アルマは威力を落として【フレイム】の魔法を発動しているので、焼かれても死ぬ事はない。
ただ、回復魔法が中級以上でないと火傷は治らないのだ。
「ば、馬鹿な……。 お、女冒険者がこんなに強い筈が……」
「女は弱く、足を引っ張るというイメージを抱いたまま挑んだお前らのミスが敗因だな。 うちのマスターのアルマやアイシアとかは冒険者としてはベテランだからかなり強いぞ」
(ボクは、強さはケリン君ほどじゃないけどなぁ……)
意識を何とか保っているギルド派の冒険者が、アルマ達女性陣の強さに困惑していたが、ケリンはアルマやアイシアはベテランだから強いと言った。
ただ、アルマは心の中でケリンほど強くはないと否定していたが……。
「とりあえず、事が終わるまでは眠ってもらうよ。 【スリープ】」
アルマが睡眠魔法の【スリーブ】を発動。
ギルド派の冒険者達を続々と眠らせる。
「縄で何人か纏めて縛りましょうか」
「そうした方がいいね。 アイシアやシルス君も手伝って」
「うん」
「分かった」
ルーデシアとアイシアが縄を持ち、シルスと一緒に、寝ているギルド派の冒険者達を何人かに分けつつ、纏めて縛っていく。
「あ、アルマさんにケリンさん。 そっちは終わりました?」
「終わったよ。 セリア達『スチュワート』の方は?」
「無事に終わりました。 ただ……」
「ん?」
アイシア達がギルド派冒険者を縄で縛っていくのを見ていたアルマは、セリアに声をかけられた。
どうやら、セリアの方も無事にギルド派の冒険者を懲らしめたらしい。
だが、セリアの様子から別の何かを感じたアルマは首を傾げる。
セリアは、そのまま話を続けた。
「一人だけ別の理由で女性嫌いになっていた子がいたようで、その子だけはひとまず馬車に乗せています」
「その子って、男の子?」
「はい、私達よりは年下のです……」
別の理由で女性嫌いになった少年がギルド派の冒険者に混じっていた事に驚いたが、その少年だけを保護した行動力にもアルマは驚いていた。
「馬車の中でって、大丈夫か?」
「フレアが違和感を感じて、その子に近づき抱きしめました。 私は慌てましたが、その子は安心したのか分かりませんが、涙を流しながら気を失いました」
「何があったんだろうね、その子は……」
「今、フレアが魔法でその子の記憶を辿っている最中です。 暫くすれば、何かが分かるかもしれません」
ケリンは女性冒険者もいる馬車の中にいて大丈夫なのかと気になったが、セリアの話ではどうもフレアが、少年の違和感に気付き、不意に近づいてそのまま抱きしめたのだ。
フレアに抱きしめられた少年は、涙を流しながら気を失ったらしい。
そのフレアは、馬車の中で少年の記憶を魔法で辿っているようだ。
「分かった。 何か分かったら教えてね」
「はい」
「あ、こっちに誰かが来るぞ。 騎士っぽいのがだが……」
「という事は、現皇帝の騎士かな?」
セリアとアルマがそんな形で打ち合わせをしていたら、ケリンが騎士の風貌をした者達が馬車と共に来た事を告げた。
アルマは、もしかしたら現在の皇帝の騎士ではと予測した。
その騎士の者達は、こちらに近づいて話しかけた。
「すみません、貴方達は各国の介入依頼で来てくれた冒険者達ですかな?」
「はい、そうですが……」
「ギルド派思想の冒険者を捕まえてくれて助かりました。 我々は皇帝陛下の命でこの先の町を守っている騎士団です。 貴方達が捕まえたギルド派の冒険者を我々が運ぶついでにご案内します」
「ありがとうございます。 ぜひ、ご案内お願いします」
「かしこまりました。 では、馬車に乗ってついてきて下さい」
ギルド派思想の冒険者を騎士団に引き渡し、馬車に乗り込んでから、騎士団率いる馬車の後に着いていった。
多少時間は掛かったが、無事にこの先の町に着く事になりそうだった。
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