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「もうすぐこの村に近づいてきますね」
「ええ。 レナ、村人の避難は?」
「済んだよ。 後は迎え撃つだけ……なんだけど」
「ああ、俺達だけでは流石にドラゴンは無理ッスよ。 ましてやサンダードラゴンとなれば」
サンダードラゴンの接近を確認したアイシア達は、村人を避難させた後で、迎え撃つことにした。
といっても、強さが明白なので追い払うだけになるのだが、それを成すだけでも高い難易度を誇る。
「トイレには行ったけど……、ドラゴンの威圧感は……、いつでもおしっこを……漏らせる位に……ヤバい」
「ちょっと、マヤノさん!?」
一部、アレな発言があり、アイシアに突っ込まれたが、マヤノの言うようにドラゴンの威圧感は、常人ならば失禁しながら意識を失うレベルの厄介なものなのだ。
アイシア達みたいな慣れた冒険者ならば、萎縮だけで済むかも知れないが、常にそうだとは限らない。
(私の防御スキルで、威圧感を凌げなければ……、レナやルーデシアさんは……)
アイシアは、自身の防御スキルで何とか威圧感を凌げなければと考えていた。 でないと、アイシアより経験が浅いレナやルーデシアが威圧感に押し潰されるかも知れないからだ。
「アイシアさん、来ます!」
「くっ!」
ドラゴンがアイシア達の範囲内に近づいて来るため、アイシアは盾と槍を構えたが……。
『わぁぁっ! 待って、待ってくださーい!』
「え?」
突如、女の子みたいな声色がアイシア達の頭に響き渡った。
「ルーデシアさん、何か言いました?」
「いえ、私は何も……」
「じゃあ、誰が……?」
『わ、私です。 私ですよー!』
「え?」
ルーデシアが何か呼び止めたのかとアイシアは聞いてみたが、彼女は何も言ってない。
そして、またさっきの声色がアイシア達の頭に再び響き渡ったので、ドラゴンの方に振り返った。
「まさか……」
『はい。 さっきの声色は私なんです。 私はサンダードラゴン種の雌なんです』
「ど……」
「「「ドラゴンが喋ったぁぁぁぁぁ!?」」」
あまりドラゴンを見ていなかったアイシア達は、ドラゴンが喋った事で驚きのあまり叫んでしまった。
『あ、あはは……。 人間の皆さんは基本的にドラゴンはお目にかかる事はないですからね。 このままだと不味いので、人化しますね』
「「「へ!?」」」
サンダードラゴンはそう言うと、自身を光に包みながらゆっくり降りていく。
その様子を固唾を飲んで見守るアイシア達。
そして、着地と同時に人化後の容姿が明らかになる。
「これなら大丈夫だと思います」
「「「ホントに人化したー!! しかもロリだったーーっ!!」」」
「ふえぇぇぇっ!!?」
アイシア達の二度目の絶叫に、人化したドラゴン少女は涙目になっていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「改めまして、私はルキアと言います。 こう見えてもサンダードラゴン族の族長をしています」
「サンダードラゴン族の族長ですか……」
「はい」
アイシア達は落ち着きを取り戻した後、村から少し離れた平原で結界を張って茣蓙の上に座りながらルキアというサンダードラゴンの少女の話を聞き始めた。
彼女は見た目とは裏腹にサンダードラゴン族の族長を務めているらしい。
「そのサンダードラゴンの族長さんが何故ここに?」
「実は、私の種族の別の個体が人間の住む場所に降り立って、荒らしまわっていると報告があって、他の方たちと共に手分けして探している最中でした」
「え、その個体って最北端の町『オルガスタ』を壊滅させたサンダードラゴンの事ですか?」
「あ、え……!? そ、それ、本当ですか……!?」
ルキアの目的は、同じサンダードラゴンの個体が人間の住む場所を荒らしまわっているという報告を受けたために、手分けして探す事だった。
だが、アイシアが話した内容にルキアは全身をワナワナと震わせていた。
「残念ながら……。 うちのギルドマスターの母親が作ったファミリアにもその容姿が記録されているみたいですし」
「あぁぁぁぁっ!! な、何て事をおぉぉぉぉっ!!」
「ルキアさーん!? 落ち着いてー!!」
アイシアからその内容を記録しているという内容を伝えた直後、ルキアが頭を抱えて発狂した。
直後に他のメンバーが、何とか彼女を宥める事に成功したようだが。
「す、すみません。 その個体は『オルガスタ』の近辺の山にいるのですね?」
「はい、そうですけど」
「教えていただきありがとうございます。 うぅ、本来ならドラゴン系の種族は、極力人間に干渉しないことが決まりなのですが…」
「その個体は、それを破ったと?」
「はい。 元々支配欲が強かったのもあってか、ドラゴンの決まりに苛立ってましたね。 でも、しょうがないんですよ。 なまじ強い力と生命を持つ種族ですから」
落ち着いたルキアは、アイシアから該当の個体が『オルガスタ』に居るという事を聞いた。
そして、半ば愚痴るようにルキアがドラゴンの決まりなどについて話をし始め、アイシア達はそれを聞いていた。
どうやら、該当の個体は支配欲が強いらしく、なまじ力が強いために極力人間に干渉しないというドラゴン系の決まりに不快感を抱いていたようだった。
「出来ることなら、私がその個体を処分しに行きますが、もし該当の個体に遭遇したらこれで教えてください」
一通り話したルキアは、アイシア達にある物を渡した。
「これは……?」
「『竜の首飾り』と言いまして、これが私との連絡手段として機能するアイテムです。 複数作ったのでそのギルドマスターさんにも渡してください」
「あ、ありがとうございます」
ルキアとの連絡するためのアイテム『竜の首飾り』を複数個渡されたアイシアは、少し言葉に詰まりながら礼を言う。
「いえ、今回の惨状を見逃した私も悪いので……。 それではこれで失礼します。 ご迷惑を掛けて申し訳ありませんでした」
謝罪の言葉を最後に述べたルキアが、空高くジャンプしたと同時に竜に戻り、そのまま飛び去って行った。
「……なんか、調子が狂いましたね」
「ドラゴンにも……色々ある……?」
「そうでしょうね。 とにかく、アルマにもこの事を報告しましょう。 そして、本当に一休みしてから鉱山の町に向かいましょう」
「それがいいっスね」
「うん、そうだね」
ルキアが去った後で一同が呆然としたが、気を取り直してアルマへの報告してから、ひと眠りして翌日に鉱山の町に向かうというプランを立てた。
事情を理解した村人の優しさに包まれながら……。
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