お待たせしました。
「こいつが……件の……」
「あんな高い所に羽ばたかれたら、こっちは手も足も出ないよ」
「アルマの魔法でも届かない位置にいるわけか……。 厄介だな」
かなりの上空から町を壊滅させたサンダードラゴンが飛来してきたので、アルマやケリンは嫌な顔をしながら話していた。
「ルキアの方は?」
「もうすぐこっちに来るって。 ちなみにリキュアやエクレア辺りは子供達を守る事に専念してもらうから、こっちには来ないよ」
「町の人の避難誘導もあるからな……」
「悪い、遅れた!」
「お待たせしました。 しかし、すごいプレッシャーですね。 流石はドラゴン」
遅れてアレンとエリューシアがやって来た。
強力なドラゴンのプレッシャーを前にエリューシアは冷静に見ていたが、内心では恐怖に震えているはずだ。
そんな時、サンダードラゴンが羽ばたきながら、翼から何かを発生させようとしていた。
「不味い! あの位置から電撃を放つつもりだ!!」
「何ですって!?」
「いきなりか! アルマ、結界は!?」
「やってみるけど、多分あのドラゴンの電撃を防げる自信がないよ」
ケリンが電撃を放つらしいと言ったので、エリューシアは驚いた。
アレンはアルマに結界を張るように伝えたが、魔力の高いアルマの結界でもドラゴンの電撃を防ぐ自信がないらしい。
「やば……!」
上空から悠々と電撃を放たれ、絶体絶命のピンチ。
だが……。
「させませんよぉ!!」
もう一体のサンダードラゴンが人化しながら、強力な結界を展開。
間一髪で、電撃がケリン達に直撃するのを防ぐ事ができたようだ。
「ルキアさん!」
「間に合ったみたいですね」
『貴様……』
サンダードラゴンの族長のルキアに自分の電撃を防がれたのを見て、不快感を感じたらしい。
電撃を防いだルキアは、魔力の違和感を感じ、ある結論に至った。
「ダグズ。 あなたの電撃……、魔王の力を貰ってますね? 何故そんな事を……!」
「「魔王!?」」
「ルキアさんの言った通りだったね……」
ルキアは、ダグズと言うサンダードラゴンの個体から放たれた電撃から魔王の力を感じ取った。
事情を知らないアレンとエリューシアは、驚きの声を上げるが、ケリンとアルマはルキアからの通信で聞いていたので至って冷静だった。
『そうだ。 我はドラゴン族の掟に不快感を抱いていた。 人間に干渉するなと言う掟がな』
「私達ドラゴン族は、なまじ強すぎる力を持っているからです! 下手な干渉は世界すら滅ぼす可能性だってあるんですから!」
『ふん! 世界を滅ぼしてでも、人間に圧倒的な力で屈服させる事こそ、至高であり究極なのだ。 それが分からんとはな』
「そんなの分かりたくないです!」
ダグズの狂った思想をルキアは頑なに否定する。
圧倒的な力で滅ぼしてでも屈服させる事が正しいと言い張るダグズと過度の干渉を禁ずるドラゴンの掟を守る族長のルキア。
正反対の思想だからか、やはり相容れない感じを見てとれた。
『やはり、貴様とは相容れぬ。 世界の破滅を望む魔王様のためにも死んでもらおう』
「ならば、私はドラゴンの掟に則り、あなたを殺処分します!」
『やってみるがいい!!』
そう言ってダグズは、電撃をルキアに目掛けて解き放った。
「甘いっ!!」
ルキアは、拳一つでその電撃を弾き返し、そのまま飛び上がってダグズの顔を目掛けて殴りつける。
「でえぇぇぇぇい!!」
『ゴバァっ!?』
「す、すげぇ……」
「ルキアさん、人化したままなのにかなり強い……」
ルキアの拳で顔を殴られたダグズは、そのまま地面に落下した。
今しがたアルマが結界を張ったおかげで落下した時の衝撃波は防いでいる。
人化したままでもかなりの強さを持つルキアの背中をケリン達はただ見つめていた。
『お、おのれ……、人化したままでここまでとは……』
「サンダードラゴンの族長ですからね! これくらい強くなければなれませんよ」
(ルキアさんの見た目に騙されてるけど、実際には怪獣大決戦なんだよね)
(ああ、彼女のドラゴンだしな……)
すかさずダグズを蹴り上げて、自身も再び飛び上がって追撃するなど、ルキアは格闘だけでダグズを圧倒している。
見た目はロリ対ドラゴンなのだが、ルキアもドラゴンなのである意味では怪獣大決戦になっても不思議ではない。
ルキアがダグズに滅多殴りをしている様子をケリン達は見守っている。
『ぐはぁっ!!』
「そろそろ終わりですね。 止めを刺しますよ!」
ルキアの力を最大限に解放し、ダグズに止めを刺そうとした矢先。
『ふんっ! この位置なら人間たちもろとも貴様らを……!』
「な……!?」
ルキアがダグズを打ちのめした場所は、アルマ達にやや近い場所だったため、ダグズはアルマ達もろともルキアを殺そうと反撃に出た。
ボロボロの翼から電撃が発生する。
「しまった……! 逃げて!!」
ルキアはアルマ達に逃げるように進言する。
だが、アルマとケリンは冷静だった。
(この距離だったら……! ボクの魔法も届く! 狙いは奴の目……!!)
「ファイア四連発だ!!」
アルマは、ファイアの魔法を四連続で放つ。
その炎は、ダグズの目に目掛けて飛んでいく。 今のダグズの位置ならば、アルマの魔法が届くのだ。
「ソニックバスター!!」
そして、ケリンもすかさず真空破を飛ばす技をダグズの目に目掛けて放つ。
二人は、ダグズの目を狙って攻撃したのだ。 倒すためでなく止めるために。
『アギャアァァァァァーーッ!!』
アルマのファイアが先にダグズの目に直撃し、その直後にケリンが放った真空破も目に直撃した。
目をやられダグズが蹲る。
「今です!!」
その隙に、ルキアは電撃を纏った拳でダグズの腹部に繰り出し、その腹部に穴を開けた。
『あ、が……、お、おのれ……、魔王さま……バンザイ……』
腹部に穴を開けられたダグズは、魔王の忠誠を示しながらそのまま力尽きた。
「終わったんだね」
「はい、アルマさんにケリンさん、サポート見事でした。 目を潰すために冷静に仕掛ける辺りは流石でしたね」
「あの距離じゃ逃げられなさそうだしな。 逆にアルマの魔法の射程内にあったし。 まぁ、死なばもろともだった部分もあるがな」
「どんな強い魔物でも、目は弱いんじゃと思ってたけど、上手くいってよかったよ」
ダグズの遺体に背を向けたルキアが、アルマとケリンを称える。
二人は色々と理由を述べたが、結果的に上手くいってよかったというのが正直な感想だった。
「おーい、大丈夫かー」
「あ、レーツェル殿下」
その後で、レーツェルが部下を率いて駆けつけた。
「サンダードラゴンが現れたって聞いたが、これは倒したのか?」
「正確には、彼女が……だけどな」
「彼女?」
ケリンにそう言われた後で、レーツェルはルキアに目を向ける。
「初めまして。 私はルキアと申します。 サンダードラゴンの族長をしております」
「ぞ、族長!? サンダードラゴンの……!?」
「見た目はロリなのに……」
「ああ、今の彼女は人化した状態だから。 本来はドラゴンだぞ。 詳しく話すと長いけどさ」
「一応、魔法のコテージを持ってきた。 詳しい話はその中で聞きたいな」
「ルキアさん、いい?」
「ええ、私も皆さまに謝罪したいので」
アルマがルキアに確認し、ルキアも謝罪したいというので同意したようで、レーツェルは魔法のコテージを展開し、詳しい話をその中ですることにした。
ダグズの遺体をそのまま放置したままで……。
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