追放剣士は新天地のギルドで花を咲かす

追放された剣士ケリンが新天地で紡ぐ冒険者活動記
イズミント
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その頃の『サテライト』とエリクシア王国

公開日時: 2020年10月16日(金) 14:19
文字数:2,020

「さて、もうすぐクレージュ共和国か」


 エリクシアのギルド『サテライト』のメンバーが、エリクシア国王が命じた【ビショップ狩り】と【剣士狩り】を遂行するために、北東の隣国『クレージュ共和国』に向かっていた。


「他の国に派遣した他のギルドのメンバーは、無事に完了してるらしいな。 しかも連盟支部を乗っ取ったとか」


「おおっ、すげぇな! 俺達も負けられないぞ!」


「そうだな。 俺達は国王のお墨付きのギルドなんだからな」


 意気揚々と決意を新たにする『サテライト』のメンバー。 リーダーのアンドレも国王のお墨付きのギルドという誇りをもって歩みを早める。


「…ん?」


 突然、空気が変わるのを感じた。 メンバーは、周囲を見回す。


「気を付けろ、何かいるかもしれん」


 アンドレがメンバーのみんなに警戒を強めるように声を掛ける。


「ぎゃあぁぁぁぁっ!!」


「なっ…!?」


 だが、その瞬間に何かが飛来し、それに当たったメンバーの一人の身体を溶かしていた。 隣にいた戦士の男も突然の光景に驚きを隠せないでいた。


「あああっ、身体が…溶けてぇぇぇ!!」


「ひぎぃぃぃっ!!」


「あぎゃあがががぁぁっ!!」


「お、お前らぁぁぁ!?」


 次々と飛んでくる謎の飛来物によってメンバーが次から次へと身体が溶かされていく。 アンドレは絶望の表情でその光景を見ていた。


「な、何が…何が起きてるんだぁぁぁっ!!」


 ショックで錯乱したアンドレは、斧を振り回しながら絶叫した。 それは恐怖が入り混じった絶叫でもあった。 そして、その斧が何かに当たり、直後に斧が溶けたことでアンドレは上を向いた。

 そこで、彼は見てしまったのだ。


「スライム…だと…!?」


 自分たちが倒したはずのスライムが、大きくなって復活したのだ。


「な、なんで…。 倒したはずなのに…なんで…、ぎゃあぁぁぁぁぁっ!! 溶けるぅぅぅ…!!」


 それを教えてくれるはずがなく、アンドレはスライムの飛来物…つまり溶解液によってその身体は溶かされていった。 こうしてギルド『サテライト』は全滅した…。

 その光景を巡回中に見てしまったエリクシア駐屯地勤務の兵士によって、『サテライト』が全滅したという報告が国王に届くことになる…。


 なお、『サテライト』のメンバーを皆殺しにしたスライムも、進路をエリクシア王国へと向けて動いていた…。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 一方、エリクシア王国では…。


「【剣士狩り】ならびに【ビショップ狩り】の状況はどうか?」


「リーベルの方は手こすってしまっておりますな。 他の国の方は順調ですが…」


「やはりリーベルの方は上手くはいかぬか」


 エリクシア王国の王の間にて、宰相と国王が話をしていた。 内容は【剣士狩り】と【ビショップ狩り】の進捗状況のようだ。

 リーベル公国以外の国の剣士とビショップはほとんど処分を終わらせているが、リーベル公国は強力な絆を持った冒険者たちによって妨害されている。 これを聞いた国王は、イライラが募っていくように感じた。


「いかがいたしますか?」


「ギルド『サテライト』のメンバーはどこに向かっている?」


「はっ、今は北東の隣国クレージュ共和国に向かっています」


「彼らをリーベルに進路変更するように伝えるようにしてくれ」


「はっ、直ちに…!」


「国王様!!」


 リーベル公国の【剣士狩り】ならびに【ビショップ狩り】を、現在クレージュ共和国に向かっているというギルド『サテライト』に任せようと国王が宰相に命じると同時に、兵士が息を切らして王の間に入ってきた。


「何事だ!」


「緊急報告です! クレージュ共和国に向かっていた『サテライト』のメンバーが、スライムの襲撃に遭ったそうです!!」


「な、何だと!? スライムだと…!?」


 兵士の報告に国王と宰相が青ざめる。 何せ、『サテライト』が倒したとされるスライムに襲われたというのだから。


「スライムはその『サテライト』が駆逐したはずだ! 何かの間違いじゃないのか!?」


「いえ、そのスライムがパワーアップして蘇り、より巨大化した状態で『サテライト』のメンバーに襲い掛かってきたのです。 現場の駐屯地勤務の兵士の話では、『サテライト』のメンバーはそのスライムによって骨も残らず溶かされたという事です!! つまり、全滅したという事なのです!!」


「ば、馬鹿な…! そんな馬鹿な…!!」


 巨大化して蘇ったスライムに『サテライト』のメンバーが溶かされる形で殺され、全滅させられた事に国王は絶望した。 力こそ全てを主張する国王にとっては、この上ない屈辱と恐怖を味わう事になったのだから。 だが、それだけでは終わらない。


「国王様、緊急事態です!! スライムが…巨大化スライムがエリクシアに襲撃してきました!!」


「な…!?」


「スライムが…襲撃してきただと…!?」

 

 別の兵士によって伝えられたスライム襲撃の報告に、国王と宰相がますます絶望に顔を歪めていく…。

 

 国王お墨付きのギルド『サテライト』の全滅と、スライムの襲撃。 これによりエリクシア崩壊の瞬間が、一気に目の前に迫る形となった。

 


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