お待たせしました。
「アレックス帝国への介入依頼って、ずいぶん急だね。 なにかあったの?」
「それが……、国側からはこの介入依頼を冒険者に伝えるようにとだけ言われて……。 確認しようにも連盟の帝国支部とも連絡はとれませんし」
余りにも急な国からの介入依頼に、アルマは連盟のスタッフに聞いてみたが、スタッフも分からないそうだ。
真偽を確かめる為に、連盟の帝国支部に連絡を取ろうにも連絡が取れなくなっている為に、さらに混乱に拍車を掛けている状況らしい。
「アルマ、一応レーツェルから聞いてみよう」
「その方がいいか。 スタッフさん、介入依頼については少し時間をくれないかな?」
「分かりました。 こちらも混乱している最中なので、また連絡します」
そう言った連盟のスタッフは、ギルドハウスから去っていく。
そして、アルマがメンバーに向けて一言伝えた。。
「みんなは各自で身体を休めてね。 ケリン君はボクの部屋に。 レーツェル殿下に聞いてみるから」
「分かった」
「それじゃ、一旦解散!」
「「「はいっ!!」」」
アルマの号令でメンバーはそれぞれギルドハウス内の部屋に入っていった。
一方で、アルマとケリンは通信用の水晶玉が置いてあるアルマの部屋に入っていく。
無くすとまずいという事で、ケリンの水晶玉もアルマに預けてもらっているのだ。
「さて、レーツェル殿下に繋げるよ」
「繋がっているといいんだが……」
アルマとケリンが同時に水晶玉に手を添えるが、不安もある。
国が急に冒険者にアレックス帝国への介入依頼を出して来る程だ。
王家の方も混乱しているかも知れないし、レーツェルも対応に追われている可能性だってある。
だから、今回の通信は繋がるかは未知数だ。
『あー、こちらレーツェル』
「お、繋がった! 俺だ、ケリンだ」
「こっちもだよ。 こちらアルマです」
アルマとケリンは、レーツェルと繋がった事に安堵する。
『おお、アルマにケリンか。 ルキア嬢との面会依頼か?』
「そんなに時間は経ってないだろ。 それよりも……」
『ああ、父上が出した連盟経由で冒険者宛のアレックス帝国への介入依頼の件か』
「あんな急な依頼は初めてですよ。 何があったんです? 連盟のアルスト支部も混乱してました」
アルマが介入依頼の件をレーツェルに問いただす。
彼女が言うようにあまりにも急な依頼で、連盟のアルスト支部も混乱しているのだから。
『最初に簡潔に言うとだな、現皇帝に反する反連盟のギルド群が、冒険者連盟の帝国支部を壊滅させたらしい』
「な……!?」
「冒険者連盟の帝国支部が……壊滅!?」
レーツェルから伝えられた内容に、アルマとケリンは衝撃を受けた。
アレックス帝国の冒険者連盟が、反連盟かつ反皇帝のギルドの者たちによって壊滅させられたのだから、驚かないわけにはいかないだろう。
「やはりクーデターは始まっていたのか?」
『いや、今回はクーデターへ向けた予行演習と現皇帝への宣戦布告としての意味合いが強い』
「予行演習でこんな大規模な事を?」
『元々帝国は兵力が強いんだ。 それに対抗するには反連盟のギルドが連盟を壊滅させることで力を誇示させる狙いがある』
「そこまで即戦力至上主義を貫くか……」
「ある意味でエリクシア王国を思い出すね」
『前の皇帝がそれを推奨していたが、今の皇帝になって否定されたからな』
反連盟のギルドが掲げているのは、いわゆる『即戦力至上主義』で一番弱いとされる双子や弱いけど冒険者を志願したい人を排除し、すぐに戦力になる強い冒険者のみを採用する思想である。
前の皇帝がそれを認めたが、病死してその息子が皇帝になった際にはそれを認めない法律を作り、冒険者連盟に加盟した。
ギルドの者にとってはそれが気に食わなかったのだ。
「でも、だからってわざわざ冒険者連盟を壊滅させるなんて」
『今の皇帝は、前の皇帝よりは国民の支持率がかなり高いからな。 いくらギルドの者が即戦力主義を掲げても白い目で見られている。 だからそれを力で壊そうとしているのさ』
「今回の件は国民は知っているのか?」
『ああ、ニュースにされたようだ。 国民はギルドの連中を批判し、即戦力至上主義を排除すべきと訴えている。 今の皇帝も同様の声明を出した』
今の皇帝には支持率の高い国民が味方に付いている。
それを壊そうとするギルドは、さらに肩身が狭くなったように感じるだろう。
だからこそ力で制圧する決断を、ギルドはしたのだろうが。
「なら、ギルド連中は本格的なクーデターをいつ行うか分かるか?」
『3週間後に行われる現皇帝の即位記念祭りが行われる。 奴らはその日にクーデターをするのではないかと予測している』
「そうか、祭りの最中なら国民もいるから丁度いいのだろうな」
「国民に力で屈服させるか皆殺しにするか……だね」
そして、レーツェルの予測では真のクーデターは、現在の皇帝が即位した日に記念祭りが行われるからその時期に仕掛けるだろうと予測した。
ケリンとアルマも納得のいく予測だと感じたようだ。
つまり、祭りの最中にクーデターを行う事で国民を混乱させつつ皇帝を殺害、さらには国民を屈服か殺害をして、自分たちのものにしようという魂胆なのだと二人は予想していたのだ。
『アルマ達にも受けてもらいたいが、孤児院を運営している以上、全員を行かせられないからな』
「確かに。 ここを守る存在も多数残さないといけないしな」
「でしたら、ボクとケリン君、そしてアイシアとシルス君で帝国に向かいますよ」
「俺はいいけど、アイシアとシルスは大丈夫なのか?」
「それはボクから伝えるよ。時間もないだろうし、他の冒険者も行くんでしょ?」
『ああ、なんだかんだで多くの冒険者は介入依頼を受け入れてくれている。 お前たちも頼めるか?』
「はい。 少数精鋭ですが、アレックス帝国に行ってきますよ」
色々話を聞いた結果、アルマは少数精鋭でアレックス帝国に向かう事を伝えた。
ケリンも無言ながら、決意は固いようだ。
『すまないな。 解決したらお詫びも兼ねて報酬は渡す。 狂った思想を食い止めるためにも頼むぞ』
「分かった」
「了解しました。 それではここで失礼します」
ケリンとアルマは、ここでレーツェルとの通信を終えた。
「アレックス帝国か。 記念祭りが3週間後だとすると、行くとしたら明日か?」
「そうだね。 ボクがアイシアとシルス君にに伝えてから明日に備えて準備はするから、ケリン君も準備は忘れないようにね」
「ああ、分かった」
アルマとケリンは、アレックス帝国に向けた準備の為に、それぞれの行動を起こした。
真のクーデターまで約3週間……。 歪んだ思想を防ぐために何としても阻止したいという決意の表れでもあった。
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