「ここだよ」
「おいおい、まるで豪邸じゃないか…」
アルマが案内した先は、豪邸ともいえるような建物だった。
「ここがボクがギルドマスターを務める『スカーレット』のギルドハウスだよ」
「見た目が豪邸なこの建物がアルマのギルドハウスか?」
「そうだよ。 『スカーレット』はAランクギルドだからね。 後は孤児院もここで運営してるから豪邸クラスになってるんだよ」
「孤児院も…」
孤児院と聞いた瞬間、ケリンはふと思い出した。
彼も孤児で、両親は貧乏であったがゆえに捨てられた所を優しい院長に拾われ長年孤児院で育てられた経緯を持ってるからだ。
院長と年下の子供たち、一部の王族は優しかったがそれ以外の…特に『サテライト』のギルドメンバーは酷かった。
「どうしたの?」
ケリンの様子がおかしかった事に心配したアルマが顔を覗かせる。
「あ、いや、孤児院と聞いて思い出したからな…」
「ひょっとしてキミも?」
「ああ、孤児だった身だ。 自立するために冒険者を選択したけど、向こうじゃギルドは自分で選べなかったからな」
「そうなの!?」
「そうなんだよ。 向こうの国…エリクシアの王族が勝手に入るギルドを決めるんだよ。 拒否権はなしときた」
「そんな国があるんだ…。 最悪だね…」
ケリンの愚痴を聞いたアルマも、エリクシア王国のやり方に嫌悪感を露にしていた。
本来の冒険者は、ソロで行くのもギルドに入ってみんなで頑張るのもそれぞれの自由であるからだ。
それをエリクシア王国は、全て禁止にして王族が入るギルドを決めるというルールにしたのだ。
「とにかく、この国ではエリクシア王国のような事はないから大丈夫。 さ、早く入ろう」
アルマに急かされるようにケルンはギルドの中に入っていく。
外はすでに夕日が沈み、闇夜に染まろうとしていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ただいまー」
「あ、アルマお帰りー」
アルマが帰還の挨拶をすると一人の少女が彼女を出迎えた。
「リュキア。 他のメンバーは?」
「アルマが帰ってくるまで待ってたみたいだよ」
「先に食べててもよかったのに…」
「変な所で律儀だからね。 で、その人は新しいメンバー?」
アルマとリュキアと言われた少女との話を横で聞いていると、不意にリュキアがケルンに視線をやった。
「うん。 ようやく剣士が入ってくれたんだよ」
「何ですって!? この人、剣士なの…!? ここ最近あまり見なかった剣士という職業を持つ人がこのギルドに!?」
「そうだよー」
剣士と聞いて、驚きを隠せずにいたリュキア。
聞いた限りでは、リーベル公国内ではここ最近、剣士は誰一人なっていないとされている。 故に剣士が珍しいのだろうか?
そんな事を考えながら、ケリンは自己紹介をした。
「確かに俺は剣士です。 しかし、俺は隣国エリクシア王国から流れて来た人間です。 ケリン・ストラトスといいます」
「そうなんですね。 あ、あたしはリュキア・システィと言います。 職業は『ビショップ』です。 よろしくお願いします」
「こちらこそ」
「ケリン君、向こうでは望まぬ形であるギルドに入れられて、最近追放されたんだって」
「追放!? 望まぬ形で入れておいて追放って…!」
アルマがケリンの事情を語ると、リキュアが怒りを露にする。
彼を理不尽な目に遭わせたエリクシア王国に対してだが。
「ああ、前にいたギルドは冷遇されてたから、追放してくれた方が気が楽なんだ。 さっき言った事も踏まえてな」
「冷遇!?」
「前のギルドはこれでもかという脳筋主義者…いわば攻撃力が全てだからな」
「それでスピード系に剣士は冷遇されてたと…」
「まぁな…」
ケリンが告げた自分自身の出来事にアルマもリキュアも開いた口が塞がらないでいた。 そんな思想のギルドが隣国に存在していたという事実に驚いていたのだ。
「それより、他のみんなは広間かな? 彼を紹介したいんだけど…」
「うん、広間にいるよ。 ケリンさんも案内しますね」
「広間に?」
「うん。 このギルド…『スカーレット』に所属するギルドメンバーでボク達の仲間なんだよ」
「大丈夫なのか? 仲良くできそうか? 前にいたギルドの冷遇を思い出して不安がよぎるんだが」
「大丈夫ですよ。 みんな優しい人たちですから。 では、行きましょう、ケリンさん」
「さ、早く行くよ。 歓迎会もしたいしね」
リキュアとアルマについていく形で、ケリンは仲間がいるという広間へと向かった。
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