少し間が空きましたが更新しました。
「まぁ、確かにそれは仕方がないと思うが…、ワンランク上の魔物と偶然出会った場合に恐怖でそうなるのは聞いたことがあるし」
リリがワンランク上の魔物と出会ってしまい、その恐怖で失禁したという話を聞いたケリンは、過去にもそういう経験をした仲間がいたことを思い出したので、リリをフォローするようにそう言った。
「でも、リトはギルドを追放されて以降、私を守らなきゃという強迫概念があったんですよ」
「言って見れば生真面目さんか…」
「はい、戦闘が終わってリトが私の状態を見た瞬間に、ショックを受けて倒れたんですよ。 で、目が覚めた時には声が出なくなっていました」
「おそらくリトは、リリを恐怖に震えさせたという責任感からきたんだろうな」
「そうだと思います。 私は別に大丈夫だからと言ったのですが」
リリの恐怖失禁をきっかけに、リトが守れなかったというショックが一気に降りかかり、一度気を失ってから再び目を覚ました時には声が出なくなったという。
彼女が大丈夫と言っても、リトには届かなかったのだ。
「リトに関しては声を取り戻す事をメインにしてゆっくりやっていきたいと思う。 アルマもそういう考えだしな」
「今の所はユリアちゃんのおかげで笑顔ですしね」
現在のリトの状態から、彼に関しては声を取り戻すことをメインとしてやっていく事を確認した。 今の所、ユリアのおかげで心が晴れているとはいえ、まだ安定はしないのだから。
「お兄さん」
「ん、どうした?」
「少しギュって抱いてくれませんか?」
話が落ち着いた所で、リリは上目遣いでケリンを見ながらおねだりをしてきた。
その様子にケリンは、少しドキッとしたものの、落ち着いてリリのお願いを聞いてあげた。
「こうでいいか?」
「はい。 えへへ、お兄さん、暖かいです。 ポカポカです」
リリを抱きしめてあげると、彼女は笑顔になってケリンの胸元を頬ずりしてくる。
そんなリリの仕草に思わずケリンは、笑みをこぼしてしまう。
「出会って間もないのに、そこまで俺を慕ってくれるとはね」
「私の話を真剣に聞いてくれましたし、傍に居てくれましたしね。 私もこんな兄が欲しかったなぁって」
ケリンの胸元を頬ずりしながらケリンの疑問に答えるリリ。
屈託のない笑顔で答えるので、思わず苦笑したが、そこは割り切る。
「あと、明日から訓練とか一緒にやっていくから、頑張ろうな」
「はい! 私もお兄さんとなら強くなれそうな気がしますから。 剣士の先輩でもありますし」
「リトの様子を見て、訓練の度合いは徐々に高めていくから。 いきなりスパルタじゃ身体がついてこれないだろうし」
「分かりました。 よろしくお願いしますね、お兄さん」
そして、明日からの訓練の事について話した。
ケリンはリトの様子を見てから訓練の度合いを徐々に高めていく予定である。
「よし、じゃあそろそろ寝ようか。 寝る前にトイレ済ませておけよ」
「あはは、もちろん済ませますよ、お兄さん。 あと、抱き枕にしていいですか?」
「ああ、構わないよ」
「ありがとうございます♪ じゃあ、おトイレ済ませますね」
リリが寝る前のトイレを済ませに行っている最中に、ケリンはふと考えた。
(しかし、ドラゴン襲撃のタイミングで双子の剣士を育てる事になるとはなぁ。 でも、双子の不遇は放っておけないからな)
アルマの判断で、リリ達を『スカーレット』に迎え入れるのは問題はない。
タイミング的に、ドラゴン出没と言う同時期に起こった事件を踏まえると、リリ達には申し訳ないように思ったのだ。
だが、それ以上に双子の受けた境遇を聞いて、放っておけなかったのも事実だ。
(リトは最初は無理だろうけど、せめてリリだけでも強くしないとな…)
できれば双子が同時に強くなることが理想なのだが、リトが現在喋れないことを踏まえると、先にリリの訓練に舵を切らざるおえない。
ケリン的にはなるべく避けたかったのだが…、ドラゴンの存在が明らかになった以上、それは難しいだろう。
「お待たせしました、お兄さん」
「よし、じゃあお休みしようか」
「はいっ♪」
リリとケリンが一つのベッドに一緒になり、リリがケリンを抱き枕にする形で一緒に寝る事にした。
すぐに眠ったリリの寝顔を見て、ケリンは笑みをこぼした。
「余程疲れたんだな…。 お休み、リリ」
そう呟いたケリンは、リリの頭を撫でながら眠りについた。
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