アルマ率いる『スカーレット』のメンバーとセリア率いる『スチュワート』のメンバーは、アレックス帝国のアリス皇女とテッド皇子が住む別荘で一泊することになり、割り当てられた各部屋に荷物を置いた。
「皆さんに話が……」
その際に、フレアが未だに眠っている少年の件について話があるとの事で、再び大広間に集まった。
テッド皇子は各手配で忙しいのか、帝国からはアリス皇女のみが大広間にいた。
そして、アルマがフレアに尋ねる。
「お話って言うのは、例の少年の事だね?」
「はい。 気を失った後に魔法を使ってあの子の記憶を辿りましたが……。 これは、実際に見て貰った方が分かりやすいかと……」
そう言いながらフレアは、黒色の水晶玉をテーブルの上に置いた。
「この水晶玉に彼の記憶が……?」
「はい。 私が魔法で辿った記憶をコピーしてこの水晶玉に記録しました。 では、再生します」
フレアが水晶玉に魔力を注ぐと玉が光り、映像が写しだされる。
『はっ! 仲間だと思っていたとはおめでたいガキだね。 連盟もそうだけどさ』
『あたしらは、あんたが気にくわない。 だから、あんたを追放するの』
映し出されたのは、柄の悪い女冒険者二人が少年を罵る様子だった。
少年はその時は酷く怪我を負い、ボロボロだった。
その様子を見たケリン以外のスカーレットのメンバーは一同に表情を歪めた。
「アルマ、みんな?」
「お姉ちゃん達、どうしたの?」
ケリンはそんな様子を見て声を掛ける。
セリア達スチュワートのメンバーやアリス皇女も気になっていた。
「まさか、この場面であいつらを見ることになるとはねぇ……」
「知っているのか?」
見覚えがあるかのような発言をしたアルマの様子が気になり、ケリンはアルマに聞いてみた。
「ケリン君がアルストの町に来る三週間前に、うちのギルドに来た二人だよ」
「俺がアルマにスカウトされる前の話か」
「うん。 ボクのギルド『スカーレット』のメンバーは、初期のアイシアやリキュア以外は、ケリン君を含め基本的にボクのスカウトで入った人達なんだよ」
アルマの話によると、映像に映し出された二人はどうやらアルマのギルド『スカーレット』に来た二人のようだ。
続いてアイシアが話を続ける。
「あの二人は、『スカーレット』に入るつもりでいました。 ですが、面接は連盟を介していなければならないというルールがありまして……」
「つまり、一度連盟にギルドに入りたいと伝えないといけないわけか。 なら、そいつらは……?」
「連盟を経由せずに直接面接に来たんだよ。 だから、門前払いにしたんだけどね。 面接がある場合は連盟からうちに報告が来るからね」
アイシアがギルドへ入る為の面接に関するルールを言い、アルマが続いて件の女冒険者が連盟を経由せずに直接面接に来た事を告げた。
それを聞いたケリンやアリス皇女、スチュワートのメンバーは表情を歪めた。
「それでアルマ。 その二人は引き下がったのか?」
「いや、その二人は引き下がらないばかりか、無理やり入り込もうとしたので、マスターのアルマが実力行使に出たのさ」
「連盟に加盟している国だから、ギルドも冒険者も当然連盟のルールに沿っているはずだしね。 でもその二人は連盟のルールすら無視たんだよ。 『そんなの関係ない!』って言ってね」
「その時のアルマの怒りは相当でした。 何せ孤児院も運営しているから、二人の悪行は子供たちの教育に悪いので……」
「電撃魔法の【スパーク】で二人を感電させて気を失わせ、その間にリキュアが連盟に通報してくれたので後は任せたんだけど……」
連盟が作ったルールを破ってでも乗り込もうとした二人の女冒険者に当時のアルマはかなり激怒したようだ。
ひとまず電撃魔法で感電させて気を失わせたが、連盟に連れて行かれるまではおそらく怒りがおさまらなかったのだろう。
当時を思い出したアルマのトーンがどこか怒気を感じていた。
「連盟に聞いた話だと、あの二人は再教育中に脱走したって聞いた時は驚いたよ」
「脱走したのか」
「うん。 そのまま町を出て野良扱いで冒険していたらしい。 野良なら連盟も手が出せないからね。 やってくれたよ」
「じゃあ、あの少年は二人に騙されて……?」
「多分、右も左も分からなかった所を付け込まれた感じだね。 あくまで連盟が関われるのはギルドメンバーだけだから、野良同士でパーティを組むのは今現在は違法じゃない。 でも、これは流石に見直すべきかもしれないよ」
「冒険者自体も連盟に加入させるように制度を改めるってわけか」
「そうしないと、あいつらのような歪んだ冒険者も出てくるからね。 あいつらがギルドに近づいた理由は、中からギルドを破壊する為だって連盟の調査で教えてくれたよ」
「なんと……」
その後もアルマは水晶玉に映る二人の女冒険者を見ながら色々と話をする。
現在、連盟が関わることができるのは、ギルドに加入した冒険者まで。
野良の冒険者は、連盟の管轄外であるために手が出せず、少年はそれを利用した女冒険者にいいようにされてきたのだ。
アルマは、今回の件をきっかけに連盟のルールを改定しないといけないと言った。
そして、ルールを冒してでもアルマのギルドに入ろうとした理由は、ギルドの内部破壊が目的だったらしい。
それを聞いたケリンはドン引きしたのは言うまでもない。
「それで途中でそいつらと遭遇したらどうする?」
「容赦なく殺るよ。 これ以上のさばらせるわけにはいかないからね」
「奴らが動くとすれば、私達が介入依頼を遂行するために帝都に向かう最中でしょうしね」
「それか、帝都からリーベルに帰還する時か」
「とにかく、スチュワートのみんなもそこだけは気を付けるようにね。 帝国のギルド派の冒険者も注意しないとダメだけど」
「わかりました」
件の女冒険者にはスチュワートのメンバーにも警戒するように伝える。
セリア達もそれに応じた。
「みなさん、食事の用意ができました」
ある程度話をまとまった所でテッド皇子から食事の用意が出来たことを伝えに来たのだった。
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