「これがドラゴンの鱗で加工して作られた盾かぁ……」
「ナイフや剣、槍もあるな。 ナイフはシルス用か?」
「流石に杖はないのは仕方がないね。 ドラゴンの鱗は魔力を通さないから魔術師とは相性が悪いからね」
朝食後、ケリンとアルマ、そしてアイシアとリキュア、さらにはオレギも加えてルキアから貰った武具が保管してある倉庫に移動し、実物を見たり手に取って確認した。
なお、ユリアはエクレアとリトに任せているようだ。
そして、ルキアから貰った武具の中に杖が無いのは、ドラゴンの鱗が魔力を通さないという性質があるからだとか。
「本当に軽量化がされてるから軽いな。 切れ味だけで言えばこっちが最強か?」
「でも、悪魔族などはミスリルに弱いから、ミスリルの剣を使うといいよ。 言ってしまえば敵に応じて武器を変えて行こう」
「そうだな」
ドラゴンの鱗で加工して作られた剣を手に取ったケリンは、切れ味だけで見れば最強と評価した。
ただ、悪魔族や魔王はミスリルに弱いので、敵に応じて武器を変えていく事をアルマから勧められた。
「それにしてもあの時の……ドラゴンの鱗を加工して作った武具を貰ったって聞いた時のアイシア先輩の絶叫、びっくりしたっスよ。 別の意味で」
「ボクもだよ。 まさか『アイエエエ!』というおかしな絶叫を聞く羽目になるなんてね」
「ちょっと二人とも!?」
「おいおい……」
「あはは……」
帰還前のアイシアとの通信でドラゴンの鱗を加工して作った武具をルキアから貰った事を聞いて、おかしな絶叫を上げていた事を思い出したアルマだが、皮肉にもアイシアの絶叫は近くにいたオレギにも聞かれていたようだ。
それを思い出したオレギとアルマに顔を赤らめながら怒るアイシアを見て、リキュアとケリンは呆れかえっていた。
「とにかく杖以外はあらかたあるみたいだし、後で広い場所で性能テストでもやってみるか?」
「そうだね。 切れ味が抜群なら、斧とかは破壊力もあるだろうし、広い場所でやったほうがいいかもね」
「斧に関してはミスリル製がないので助かりますがね」
「そういえば、ミスリルは斧だけが売ってなかったよね。 良くて鋼鉄製の斧だったし」
「ミスリルの強度は斧との相性が悪いからね。 杖とドラゴンの鱗との相性が悪いのと同じだよ」
戦士のオレギにしてみれば、ようやく手にする新しい斧のようで、個人的に助かっているようだ。
ミスリルは軽い魔法金属らしく強度があまりないので、力主体の武器である斧とは相性が悪い。
そのため、戦士は専ら鋼鉄製の斧で戦いをせざるおえない感じだったのだ。
「さて、みんなを呼んで広い平原で武器のお試しをしよう」
武具のチェックが終わったので、アルマは皆を呼んで東の平原でドラゴンの鱗製の武具の試し斬りを行う事にした。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「さて、みんな武器を持ったかな?」
「うん。 しかし、このナイフすごいね。 手に取るだけで力が溢れてくる」
「ああ、これがドラゴンの鱗で加工して作ったってのが信じられねぇよ」
アレンとシルスがドラゴンの鱗製の武具を手に取った感想を述べた。
手に取るだけでも力が溢れてくるとシルスは述べたが、それだけ武器の力がすごいのだろう。
アレンも似たような感想を述べていた。
「じゃあ、あのブラックボアで試してみようか」
アルマが指差しした先に多数のブラックボアが徘徊しているようだ。
数量的に試し斬りに丁度いいと判断したのだろう。
「リリとリトはいいのか?」
「はい、私とリトはミスリルソードで妥協します。 ドラゴンソードじゃ持て余しかねないので……」
「そうか、でも『スカーレット』に入ってからの初実戦だし無理はするなよ。 リトもな」
「分かりました」
リリは力強く返事をし、まだ喋れないリトもコクンと頷いた。
ブラックボアは魔法を使うので、先にアイシアがドラゴンシールドを持って突撃する。
「ぴぎゃっ!?」
「あれ?」
盾を構えたままのアイシアが、ブラックボアの一体が魔法を受けて死んだ事で唖然とする。
他の方向からも魔法を数発撃ってくるが、それに反応し、盾で防ぐ。
「ぴぎゅぅぅ!?」
「まさかこれは……?」
「間違いないね。 ランダムな確率で魔法を跳ね返す効力を持ってるよ、その盾」
「確実ではないが、魔法反射はかなり脅威だなぁ」
「いや、これすごすぎ……」
アイシアが持つドラゴンシールドの効果を聞き、呆然とする。
魔法反射の力を持った盾なんて、今まで聞いたことがなかったからだ。
「スクルも……やはり同様の反応か」
アイシアと同じ『騎士』のスクルもドラゴンシールドの効果にポカーンと口を開けたままだった。
「まぁ、仕方がねぇな。 強力な盾を持ったが故の恐ろしさだ」
「下手すりゃ強すぎて人を殺す……ってか。 まぁ、エリクシアの一件で人を斬った俺が言うもんじゃないが」
「確かにな。 俺達もおっぱじめるか」
「ああ、やろう」
そして、アレンとシルスとケリン、そしてリリとリトがブラックボアに一斉に仕掛ける。
先ほどの魔法反射で驚き戸惑っているため、ブラックボアはなすすべもなく斬られたりした。
リリもリトもミスリルソードではあるが、トレーニングの成果もあって無駄な動きも抑えた形でブラックボアを斬っていった。
「リリもリトもやるな!」
「ケリンお兄さんのおかげですから!」
「ははっ、言うじゃねぇかよ……っと」
アレンもリリとリトを褒めながら、ドラゴンアックスでブラックボアの脳天を叩き込む……どころかこれもきれいさっぱり真っ二つに割れた。
「おいおい、こいつぁやべぇな!」
「綺麗に真っ二つに割れたね。こっちも綺麗に斬れたよ」
そんな感じでブラックボアを蹂躙する様子をアルマ達魔術師系はやや苦笑いしながら見ていた。
「いやー、流石にこれはすごすぎるね」
「流石ドラゴン装備……」
「そろそろいいかな? おーい、そこまでにしてそろそろ帰るよー」
アルマが声を掛けたところで新装備の試し斬りは終わることになった。
結果、ドラゴン装備は流石に強すぎるので、いざという時以外はなるべく使用を控える事にした。
ただし、盾は使うべきだとアルマの一言があったので、使う事に。
「あ、アルマさん達お帰りなさい」
「あれ? 連盟の人がわざわざここに?」
「どうしたのですか?」
町に入り、ギルドハウスに帰ってくると、冒険者連盟のスタッフが待っていた。
何事かと思って、スタッフに尋ねる。
「実は国からアレックス帝国への介入をしてほしいと各地の冒険者に通達が入ったのです」
「え……!?」
リーベル公国からアレックス帝国への介入依頼の通達が来たことに、アルマ達は固まった。
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