「改めまして私はルキアと申します。 サンダードラゴン族の族長をしております。 この度、私の同族が町を壊滅させる等の損害を与えてしまった事を私が代表としてお詫びいたします」
「お顔を上げてください。 私はレーツェル・グラン・リーベルと申します。 リーベル公国の第三王子です」
レーツェルが用意した魔法のコテージの内部で、サンダードラゴンの族長のルキアとレーツェルが面会をし始めていた。
始まっていきなりルキアが土下座したのには皆驚いていたのだが。
なお、面会の準備の間にアルマが依頼遂行中のアイシアのチームに今回の件についての報告をしていたようだ。 それが終わると同時に面会も始まったのだ。
「それにしても、アルマやケリンから聞きましたが、ドラゴンの掟というものがあったとは……」
「私達ドラゴンは、人間よりも数倍強い力と長い寿命を持っています。 なので祭りとかの行事などでの平和的な交流以外での過剰な介入は禁じられています。 ですが……」
「件のドラゴンはそれが気に食わなかったと」
「はい。 件のドラゴン……ダグズは圧倒的な力で人間を壊す事を是としており、ドラゴンの掟に不快感を示していました。 そこに魔王と接触してさらに力を手にしました」
「未だに魔王の影がちらついているわけか。 未だに大きな動きがないのは現状では救いかな」
「ですが、魔王は人間の闇すら利用して世界の破滅を望む奴ですからね」
ルキアから直接聞いた内容と同じだが、残ったメンバーのためにあえて聞くアルマとケリン。
ダグズと魔王が共通している点としては世界の破壊。
ダグズは力による破壊だが、魔王はおそらく人間の闇をも利用する事も視野にいれる狡猾な面をも持っている。
「それで賠償の件ですが……、町ごと壊滅させた事とそこの住民全てが亡くなったとの事で、こちらをお渡ししたいと思います」
「こ、こんな高いお金を……」
「先ほども言いましたが、私の同族が町の壊滅と共に住民も死なせているので……。 私自身もお墓を作ってあげたいのですが……」
「分かりました。 あなたからの賠償の件お受けします」
賠償の件に入った時にルキアは、空間から多額のお金が入った袋が出て来た。
高額なお金を前にレーツェルやアルマ、ケリン達は驚くが、ルキアは町の壊滅と住民全員を死なせたことへの賠償金らしい。
また、ルキア自身も『オルガスタ』跡に墓を作ってあげたいという事らしいので、レーツェルは彼女の提案を受け入れた。
「受け入れてくださってありがとうございます。 それと、アルマさんとケリンさん」
「はい」
提案の受け入れた後で、ケリンとアルマを呼んだ。
呼ばれた二人は、首を傾げながらルキアの近くに来る。
「お二人に代表としてこれらを……」
「これは?」
「ドラゴン族の硬い鱗を使って作った武器と防具ですよ。 ミスリルよりも強力に出来ていますので今後に役立つと思います」
「ええっ!? ドラゴンの鱗とか貴重品なんだけど!?」
ルキアから渡されたのは、ドラゴンの鱗で加工して作られた武具の類だった。
人間からしたら貴重品であるドラゴンの鱗で作られた武具を平気で渡してきたことに二人は驚いていた。 もちろん、レーツェルも同様だ。
「そんな貴重品で出来た武具を俺達に?」
「これも皆さまに迷惑を掛けたお詫びなんです。 それとアルマさんとケリンさんがダグズを足止めした勇気も称えてでもあります」
「まぁ、ドラゴン相手じゃ挑んだ所で勝てないしね。 目を潰すだけで精いっぱいだったし」
「でも、ルキアさんからそこまで言われたら断れないな。 受け取ることでいいよな、アルマ」
「うん。 この際だしね。 受け取っておこう。 ルキアさん、この武具はボク達が貰います」
「はい。 軽量化もしていますからすぐに使いこなせると思います」
「分かりました」
そう言いながら、アルマが武具の入った袋を受け取った。
「ルキアさんはこれからどうするんですか?」
「『オルガスタ』跡にお墓を作った後は、ドラゴンの世界に留まろうと思います。 迷惑を掛けてしまいましたし」
「そうですか。 でも、今後のお祭りの催しとかはお呼びしますよ。 折角、こうして知り合いましたし」
「いいんですか?」
「ボク達も同じですよ。 この機会ですし、ルキアさんとも交流したいですから。 祭りの時とかは事前にこれで教えますよ」
アルマはそう言って、首飾りを見せた。
ルキアがアイシア経由でアルマに渡した通信用の首飾りだ。
「あ、ありがとうございます……。 ありがとうございます……」
これに感極まったのか、ルキアは涙を流した。
アルマとケリンは、そんなルキアに優しく接する。
サンダードラゴン族の族長としての辛い役目を背負った彼女は、この瞬間はそれが解放された……そんな感じに包まれた。
この後は、お互いの立場を忘れて雑談や食事に花を咲かせた。
会話を弾ませるルキアを見て、アルマとケリンは安心したという表情をしていた。
こうして、町の壊滅から始まったサンダードラゴンの一件は解決したのであった。
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