加奈ちゃんは、背が高くてショートカットがよく似合う、ボーイッシュな子で、その辺の男子なんかよりよっぽどイケメン!
さっきぎゅっとされた時、ちょっとキュンとしちゃったもん...
駅前のタピオカ屋さんにバレーチームのみんなで来た。
「こうゆうの夢だったんだ、わたし...」
思わず口をついて言葉が出てしまったわたしに
「やだ来蘭ちゃん、そんなしんみりと何言ってんのー」
と、太田さんが笑う。
「わたし中学に友達居なかったから...」
すると加奈ちゃんが
「うん...なんかそんな気がしたんだ。
まぁちょっとケースは違うだろうけど、あたしと似た感じがしたから」
「え?似た感じ?」
「あたしも中学に友達なんか居なかったからね」
そう言って加奈ちゃんは笑った。
「えー?加奈にも来蘭ちゃんにも友達が居なかったなんて嘘でしょー?」
と、境さんが言う。
「まぁでも中学の時ってさ、ちょっと毛並みの違う子とか、仲間はずれにしたりする傾向があったよね...」
とちょっと大人びた内田さんが言う。
「確かに加奈と来蘭ちゃんはちょっと毛並みが違うかもねー、あ、もちろんいい意味でだよ?」
と境さんが笑う
「毛並みがちがう?」
そんなこと初めて言われたから、聞き返してしまった。
「来蘭ちゃんはね、魅力ありすぎ!」
「多分、妬みとかが絡んでだったんじゃないかなぁ」
なんか予想外の言葉が返ってきて
「そんなわけない、そんなわけない」
と首を振るわたしに、隣りに居た加奈ちゃんがテーブルに肘を付き、そこに頭を乗せ、わたしの髪の毛を指でくるくると弄びながら
「来蘭は自分の魅力に気がついてないんだね」
と、わたしの顔を色っぽい目で見つめながら言われて、ドキドキしてしまった...
そのままわたしを見つめながら加奈ちゃんが言う
「ねえ、来蘭って呼んでもいい?」
すると他の子たちも
「あー!わたしたちも来蘭って呼びたーい!」
と言うので
「うんうん、もちろんいいよ!」
太田さんは、和美(かずみ)ちゃん
境さんは、佳子(よしこ)ちゃん
内田さんは、恭子(やすこ)ちゃん
って名前で呼んでねって言われて、なんか急にいっぱい友達が出来て、色々とキャパシティーオーバー気味だったけど、嬉しかった。
〈奏太side〉
来蘭は嬉しそうに井澤たちと行ってしまった。
なんか思った以上に寂しい...
部活行くか...
今日は、英二先輩が少しドラムを教えてくれることになってるから、先輩より早く行かないと!
こうゆうとこは、体育会系のクセが抜けないのだ。
教室を出ると、ちょうど陽介もギターを背負って部室に行くところだった。
「おお!奏太!さっきの最後のジャンピングサーブは見事だったよ!」
「おう!まぁな!」
「あれ?来蘭ちゃんは?」
「井澤にもってかれた...」
「井澤さんて、あの背の高いショートカットの子?」
「そう...」
「あの子、うちのクラスの女子たちが言ってたけど、いわゆるLGBTらしくて、中学では異色の存在だったらしいぜ?」
「LGBTってなに?」
「同性愛者ってことだよ」
「女だけど女が好きってこと?」
「そうゆうこと」
「どおりで..」
「何かあったのか?」
「さっき体育館で、ネット潜って来蘭をぎゅっとしに行っただろ?あれをさ、とがめられたんだよ...あの後更衣室で来蘭冷やかされて大変だったらしくてさ...挙句、来蘭のことかわいい!とか言って抱きしめやがったから、俺が怒ったらさ、来蘭は青木のものじゃない!とか言い返されてさ...」
「来蘭ちゃんを抱きしめた...」
「他の女子たちも、来蘭をぎゅってしたいだの、むしろ俺にジェラシーだの言いたい放題でさ、んでなんだか駅前でタピるとか言うからさ、女子には女子のあれもあるんだろうなと思ってさ、行っておいでって言ったんだよ...大人だろ?俺」
「大人だろ?じゃないよ!他の男子の来蘭ちゃんファンなんかよりも、よっぽど井澤さんのが強敵だぞ多分」
「え?」
「井澤さんが女子って時点で来蘭ちゃんは警戒心なく心を開いてしまうだろうからね」
「井澤が来蘭に好意を持ったとしても、来蘭の恋愛対象が女じゃない限り、それは友情でしかないだろ?」
「いや、人の気持ちというものは理屈じゃないからねぇ...」
「ん?なんかそれどっかで聞いたセリフのような...」
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