一目惚れから始まった俺のアオハルは全部キミだった

キミと駆け抜けたアオハルDays
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手紙3

公開日時: 2021年5月30日(日) 13:57
文字数:4,446

〈奏太side〉

顔面蒼白になった来蘭を抱き寄せた

「心配するな、来蘭!」

「そうちゃん...」

来蘭が俺の名を呼んだ...

「この手紙を書いた人は、あの女子たちのうちの誰かなの?陽介くんもあの子たち知ってたよね?中学の時になにかあったの?」

「.....そうだよな...話すべきだよな...」

あの中の白石 綾に告白されたことがあるということ、告白を断った後に、バレー部マネージャーと付き合ってると噂が立ち、白石がアイツらを使ってマネージャーに嫌がらせをしたこと、来蘭を必要以上に怖がらせないように話して聞かせた...

何かを考えている様子の来蘭が口を開いた

「多分白石さんは、そうちゃんと2人で話しがしたいからそうちゃんとわたしを同じ時間に別々の場所に呼び出してるんだよね?

ならばそうちゃんもわたしも、呼び出された場所にそれぞれ1人で行くべきだと思う」

「そうしたら来蘭のこと守ってやれないじゃないか!」

「そうちゃん、わたしね、強くなりたいの...

誰かに守ってもらって、その傘の下で怯えてるようなそんな自分じゃ嫌なの。

そうは言っても、まだ些細なことでいじめられた記憶がフラッシュバックしちゃうんだけど...そうゆうの乗り越えたいの!

だから、わたしもここに1人で行く!」

「来蘭、お前...」

本当はこんな呼び出しに来蘭を1人でなんか行かせたくはない!

だけど、ここで行かせないという方法で守るというやり方は、確かに違う気がした。

来蘭を中学時代の忌まわしいいじめの記憶から、なるべく自分の力で乗り越えさせてやるべきだと確かに思った。

しかしアイツらのことだから、図書館の書庫に、白石の取り巻きの男らを待ち伏せさせて、強姦するくらいのことやりかねない...

陽介にも事情を話して応援を頼もう。

それと...先輩たちだ!先輩たちに力を借りよう!

あくまでも来蘭自身で立ち向かうことにさせないと意味がないから、このことは来蘭には内緒で進めないと...

先輩たちライブ近いって言ってたから、まだ学校で練習してるだろう。

先に来蘭を駅まで送ってから学校へ戻ろう...


来蘭を無事に電車に乗せてから学校へと急いだ!

第2音楽室...

良かった!まだ明かりが付いてる!先輩たちまだ居る!

息を切らしながら防音扉を開くと、爆音で演奏している最中だった。

吉井先輩が俺に気がついて、歌うのを止めた。楽器隊の先輩たちも俺が目に入り、演奏を止めた。

「どうした?」

廣瀬先輩が驚いてる。

「練習中すいません。先輩たちに、折り入ってお願いしたいことがありまして戻って来ました。少し時間頂けますか?」

菊池先輩たちも吉井先輩たちも、楽器を置いてくれた。

俺は、来蘭の机に入っていた紙切れと、靴箱にはいっていた手紙を先輩たちに見せ、事情を話し、明日の放課後、来蘭を守って欲しいとお願いした。ただしあくまでも来蘭自身に乗り越えさせてやりたいから、来蘭に気がつかれないようして欲しい旨も伝えた。

先輩たちは快く引き受けてくれた。

廣瀬先輩においては

「ふざけんな馬鹿野郎!俺の来蘭を傷つけるやつは、男だろうと女だろうと許さねぇからな!」

と、怒りをあらわにするほどだった。

(〈俺の来蘭〉ではないけどな、廣瀬パイセン)

決戦は明日だ。


陽介と連絡を取った。

俺の家と陽介の家は、数軒しか離れてない近所だから、陽介はうちへやって来た。

来蘭と俺とを、別々に呼び出すための手紙のことを陽介にも話した。

軽音部の先輩たちの力を借りることにしたことも話した上で、陽介にも来蘭を守って欲しいと頼んだ。

「来蘭ちゃんを守るのは、やっぱりお前のがいいんじゃないか?」

と陽介が言う

「出来ることなら俺もそうしたいけど、そうしたら白石の来蘭への嫌がらせは、益々エスカレートすると思う。思えば俺は、アイツとちゃんと向き合わずに来たから、マネージャーのこともあんなことになったんじゃないかと思うんだ。アイツはきっと、俺と2人で話がしたいから、来蘭を遠ざけるように同じ時間に別々の場所へ呼び出してるはずだから、アイツの望み通り、俺は1人でここに行く。」

「なるほどな...そうかもしれないな...」

陽介が頷く。

そして来蘭のいじめの過去と、それを乗り越えさせるために、来蘭自身に立ち向かわせてやりたいということも陽介に話した。

「多分図書室には緑川と関野が居るだろう。その2人だけなら陰湿な言葉を浴びせる程度だろうが、書庫と場所を指定しているのが嫌な予感がするんだ。白石の取り巻きの男に来蘭を傷付けるように指示していたとしたら、男の力で応戦しないと危険だ!ただ、陽介はアイツらと同中で顔が割れてるから、図書室と茶道室の間での見張りを頼みたいんだ。図書室には先輩たちに居てもらう」

「白石の取り巻きって言ったら、吉田か!」

「あぁ、吉田は絶対関わってるだろうな...」

「吉田は俺と同じ1組だから、朝から監視しておくよ!」

「頼む!」


翌日俺と来蘭は、極力普通に接することに徹し、放課後のことについては、筆談かスマホのメッセージでやり取りをした。

怯える様子の来蘭を安心させたくて、授業中はずっと机の下で来蘭の手を握っていた...

ドラムの菊池先輩からメッセージだ。

「5限目サボって大丈夫な授業だから、5限目の途中で教室抜け出して書庫に隠れて待ち伏せしとくから安心しろ!」

とあった。

最終授業の終わりのチャイムが鳴る

いよいよだ...

俺は消しゴムをわざと来蘭の足元に落とした。

「来蘭ごめん、消しゴム落としちゃった、取って」

来蘭は足元に転がった消しゴムに視線を落とすと

「これ?」

と言って、身を屈めて消しゴムを取ろうとした来蘭と一緒に俺も身を屈めて、一瞬の隙に来蘭のおでこにkissをした...

顔を上げた来蘭は、おでこを押さえて真っ赤になってる。

傍から見たら、2人で消しゴムを拾おうとして、おでこをぶつけたようにしか見えてないだろう。

「俺は俺自身が向き合わなきゃならないことに向き合って来るから、来蘭も立ち向かってこい!大丈夫だ!なにかあったら助けに行くから!俺は来蘭の、来蘭だけのヒーローだから!」

それだけ伝えると、俺は俺の向かうべき場所へと向かった。


茶道室は別館にある。

学校敷地内の1番端だ。

更にその裏との指定された場所は、ほとんど人が来ないような所だった。

その場所に着くと、白石 綾はもうそこに居て、俺を待っていた...

「やっぱり白石だったんだな...」

「来てくれたんだね、奏太」

「お前ときちんと話しをするべきだと思ったからな」

「中1の時、あたしがはじめて告白した時以来だよね、ちゃんとこうして奏太があたしと話しをしてくれるのは...」

「うん、そうだな...そうゆうことになるんだろうな...その中1の時の白石の告白を断って以来、俺は白石と関わることを避けたし、思えば白石は何度となく俺に〈向き合って欲しい〉と示していたのに、一度も向き合わずに来たもんな...」

「今になってそんなこと言うんだね...」

「俺がちゃんとお前と向き合うことをしなかったから、マネージャーの佐々木のことも傷付けることになってしまったし...今度は来蘭を傷付けるつもりなんだろ?それだけは許すわけにはいかない!だからこうしてお前と話しをしにここに来たんだ」

「なんなの?来蘭、来蘭って!あんなブスでデブのどこがいいの?」

「白石...今の言葉撤回してくれないか...」

煮えくり返るくらい頭に来ていたが、俺はあえて冷静に言った。

「いやよ!だって事実じゃない!あんな子が奏太のとなりで笑ってるなんて許せないのよ!」

「白石...お前は確かに容姿は美しいと思うよ。だけど、そうゆう言葉を平気で口にするのなら、心は美しいとは言えないと思うよ...そうゆう女のことは男は見抜くよ?

容姿だけがいい女を連れて歩きたい奴もいるとは思う。でもそんな男にアクセサリーみたく扱われたいか?そうゆう男は、お前の中身とか本当のお前のことを見てくれようとはしないんだぞ?」

「わかったようなこと言わないでよ!奏太にあたしの何がわかるのよ!あたしがどれだけ奏太のこと好きか、どれだけ奏太のこと見てきたか...なんにも知らないくせに!」


「なぁ白石、少し長くなるけど、俺の話しを聞いてくれないか?」

興奮する彼女を落ち着かせるように言った。

彼女はだまってる...

深呼吸をひとつしてから、俺は話し始めた。

「俺はお前も知っての通り、中学の時はバレーボールに明け暮れて、一度も誰かと付き合ったこともないし、好きなやつがいたこともない。

〈好き〉って気持ちすら知らなかったわけだから、白石、お前の気持ちを分かっていなかったのは確かだよ...

俺な、来蘭に一目惚れしたんだよ...

一目惚れなんてもの信じてなかった俺が笑っちゃうんだけどな...人を好きになるっていうのは、理屈じゃないんだな...好きになってみて初めて知ったよ...

俺最初、来蘭に勢いに任せて話しかけてみたけど、あいつ目も合わさないんだよ...おどおどしてるというか...少しずつ聞いてみたら、中学で結構壮絶ないじめにあってたらしくて、その上病気もして入院して、中学では何一ついいことなんかなかったって言うんだよ、だから高校では中学で出来なかったこと全部やりたいんだって泣きながら笑ったんだよあいつ...

俺、それ見てあいつの願い叶えてやりたいと思った。あいつのそばで、来蘭の、来蘭だけのヒーローになりたいと思ったんだ。

こんな気持ちを知って初めて今まで告白してきてくれた女の子の気持ちが分かったんだよ俺...

だから白石ともちゃんと向き合わなきゃと思ってここへ来たんだ」

下を向いたまま、黙って俺の話に耳を傾けていた彼女が口を開いた

「そうよ...奏太は中学の3年間、どれだけ告白されようとも、誰とも付き合わなかった...だからいつかはあたしのこと好きになってくれるって信じてた...あの子はあたしが3年かかっても動かせなかった奏太の心を、3日で動かしちゃったんだね...

人の心は理屈じゃない...か...

残酷な事を言うよね...」

「ごめん...」

「でも、これまで奏太、こうやってとどめすら刺してもくれなかったもんね...

だからあたし、この想いを終わらせることも出来なかった...」

そう言って彼女は気丈に笑った。

「あの子が奏太の初彼女かー!あー悔しい!」

「まだ彼女じゃねーよ!盛大なる俺の片思いだわ!ばーか!」

それを聞いた白石が笑う

「笑うなよ!」

「せいぜい片思いのツラさ、思い知れ!」

そう言った彼女の顔は、とても柔らかい表情をしていた。

「さあほら!あなたはあの子のヒーローなんでしょ?早くあの子のところに行きなさいよ...」

「お前、来蘭になにか...」

「緑川と関野と吉田に、ここに来させないように足止めさせてあるだけよ...」

行こうとする俺に、白石は最後に言った

「ここに来てくれてありがとう奏太。ちゃんとあたしと向き合ってくれて嬉しかった」

目でだけ頷くと、俺は旧館の図書室へと走った。





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