一目惚れから始まった俺のアオハルは全部キミだった

キミと駆け抜けたアオハルDays
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体育

体育1

公開日時: 2021年5月31日(月) 00:16
文字数:4,628

午後の授業が、男女別の体育で良かった...

体育大嫌いだけど、今日だけはそう思った。

さっきの昼休みのことを思い出すと、身体が熱くなってしまう...

ヤダもぅ...

今日の体育は、球技大会対策で、それぞれバレー、バスケ、ドッチボールに分かれての練習だった。

ドッチボールは人工芝コートに、バスケは校舎内体育館に、バレーは校舎外体育館にそれぞれ集合だった。

ってことは、そうちゃんも同じバレーだから同じ場所じゃない!?

更衣室で体操着に着替えながら顔を赤くしてたら、ほかの女子たちがわたしに声を掛けてきた。

「赤井さんって、なんだか色っぽいよねー」

「他のクラスの男子にも人気だもんねー」

「あたしも男なら惚れてると思うー」

「わかるー」

「ゆるふわ加減が絶妙なんだよねー」

なんかいろいろ言われてるけども...

「いやいや、もう全然そんなことないんだよぅ...ただのおデブなんだってわたしは...」

って言ったら

女子たちがキャーキャー盛り上がる

「そのぽちゃ具合いがね、私たち女子に勇気を与えるんだってば!」

「だってあの青木 奏太レベルのイケメンが、赤井さんにメロメロなんだよ?」

女子たちの一人が、ちょっと周りを見渡して、小声になって言う

「白石 綾さんも男子に人気みたいだけどさ、まぁ美人でスタイルいいのは認めるけど、断然女子には赤井 来蘭さんのが人気だもん」

「あ、ねぇ、来蘭ちゃんって呼んでもいい?」

「もちろんだよ!」

「やったー!!!!!」

「私たちみんなバレーチームだから一緒に行こー来蘭ちゃん!」

「うん!」

女の子の友達なんていつ振りだろう...

中学の時に仲良しの子が居たのはまだ体調が良かった1年の頃だったな...

2年で少し仲良くなった子には、いつの間にか仲間はずれにされてしまっていたな...

ブルブルと頭を振る

ネガティブなことを思い出すのはやめよう!

前向きに行くんだ!

にしても、この体操着恥ずかしいなぁ...

大きな胸が目立ってしまうよ...


〈奏太side〉

来蘭から唇を求められたのは初めてだった。

振り向いた来蘭の両手が、俺の両頬を挟み、そっと顔を引き寄せられて唇を重ねて来た...

唇を離した来蘭は、次体育だから!と、更衣室へ駆けてった。

取り残された俺は、戦っていた。

鎮まれ俺...鎮まるんだ...

そうか...

少しSっぽいのに来蘭は弱いのか...

あぁ、やばい、やっと鎮まってきたのにまた興奮してきた...

俺だってこの後体育なんだよ!

このままじゃ行けねーよ!

鎮まれ...鎮まってくれ...

やっとなんとか鎮まってくれて、更衣室へと急いだ。

ちょうど更衣室から出てきた陽介とすれ違う。体育は1、2組合同だから陽介も居る。

「あ、奏太!今から着替えんのかよ?遅刻するぞ?」

「のっぴきならない事情があったんだよ!ちょっとトイレ行ってるとかなんとか誤魔化しといて!」

「了解!」

急いで着替えて体育館へ行くと、向こう側の女子たちの中に来蘭が居た。

あ、見惚れてる場合じゃなかった!

「奏太ー!ウォーミングアップしよーぜー」

「おぅ!なんか久しぶりだなー、バレーボールするの」

「ほんとほんと」

「久しぶりに陽介のトス打ちたいなー!ちょっと上げてくれよ!」

「おお!まかしとけ!」

中学時代、俺はアタッカーで、陽介はセッターだった。あいつは俺のクセも良く知ってるから、絶妙なトスを上げてくれて、いつもスパイクを決めさせてくれた。

俺と陽介は、他の奴らがまだパス練をしてる中、ネット際でスパイク練習を始めた。

やっぱり陽介のトスは、いい所に上がる。

俺は思い切りストレートコースにスパイクを打った。コートに打ち付けられたボールの乾いた音が響く

向こう側の女子たちが騒ぎ始める...

「やばい!向こうの男子めちゃくちゃカッコイイ!スパイク打ってんの誰?」

「青木 奏太だよ!」

「来蘭ちゃん!青木くんがスパイク打ってるって!」

女子たちは、自分達の練習そっちのけで、男子の練習見たさに、真ん中にある仕切りのネットカーテンにかじりついてる...

さすがに体育の先生に怒られた女子たちは、渋々と自分達の練習を始めた。

女子も男子も、1組対2組でゲームをすることになった。

トスを上げてくれる陽介は1組だからなぁ...

うちのクラスでセッター出来そうなヤツはいるかなぁ...

うちのクラスのヤツを集めて一人づつトスを上げさせてみた。一人まぁまぁのヤツがいた!コイツのトスならなんとかなるかもな。

陽介の1組の方は、アタッカーが全く居ないみたいで、名セッター陽介はつまらなそうだった。

女子の方はどんな様子かなとちょっと気になってネットカーテン際で、少し向こう側を見てた。来蘭は大丈夫かな...

あ、いたいた...来蘭頑張ってんじゃん!

あいつちっちゃいからアタックやブロックは厳しいだろうとは思っていたんだけど、レシーブが予想外の良さで、目を奪われた。

気が付くと隣で陽介も一緒に見ていて

「来蘭ちゃんすごいじゃん!立派なリベロだよあれ!」

「うん!なかなかやるなぁ来蘭!」

「俺たちも負けてらんないな!」

男子のゲームが始まった。

セッターに抜擢した杉山が、案外いいトスを上げてくれて、俺もそのトスにタイミングが合ってくると、徐々にスパイクが決まり始めた。すると、俺を知り尽くしてる陽介のブロックも決まり出してくる。ネットの向こうで陽介がニヤリとしてやがる...

作戦タイムを要求し、チームメイトを集める。セッターをさせた杉山は実はバレー部だったと言う。そしてもう1人バレー部出身だという岡崎と言うやつが居た!クイックが打てるという!これはいける!と思った。

「杉山!何本か岡崎を使ってクイック打たせろ、そのうちに1組のセッターの陽介がブロックで止め始めるだろうから、そしたら俺がバックアタック打つからボールを上げてくれ!」

とお願いした。

よし!いくぞ!

杉山、岡崎のAクイックは、すぐにタイミングが合い出して決まり出した。

しかし、陽介もすぐに止め出す。

よし、今だ!!

杉山の絶妙なトスが上がった!

渾身のバックアタックが決まった!!

気が付くと、ネットカーテンの向こう側では女子たちがキャーキャーと騒いでいた。

その中の来蘭の姿を見つけるのは容易いことだった。

来蘭に向けてピースサインをすると、来蘭は口元で小さく手を叩いていた。

そのやり取りを見ていた女子たちが悲鳴を上げる...

俺のサーブの番だ!

これが決まればうちが勝つ!

なるべく高くトスを上げて、得意のジャンピングサーブを打った!

ボールは相手コートのエンドラインギリギリに決まった!

ゲームセット!

うちのクラスの勝ちだ!

すぐに来蘭の姿を目で探した。

来蘭はネットを両手で掴み、声は出さずに

「そうちゃんカッコイイ」

って口パクで言ってる。

あぁもうムリだ...

足は勝手に来蘭の元へと向かってた。

ネットカーテンを潜って、向こう側に居た来蘭をぎゅっとした。

女子たちの悲鳴がしばらく止まらなかった...


〈来蘭side〉

なんの躊躇もなくそうちゃんは、そちら側とこちら側を隔てていたネットカーテンを潜ってこちら側に来ると、わたしをぎゅっと抱きしめた。

そうちゃんはいつも、こともなさげにああやって、わたしが作ったちっぽけな壁を飛び越えて、こちら側にやって来るんだ。

そうちゃんは人の目なんか気にしない。

いつも自分に正直だ。

人の目を逆手に取ってしまうようなところもあるくらいだ。

わたしは人の目がいつも気になってしまう弱い人間だから、時々そうちゃんが眩しく感じる..

「続きは後でたっぷりね、来蘭♡」

そう言うと、またネットを潜って向こう側に行ってしまった...

案の定、女子更衣室では、わたしとそうちゃんの話しでもちきりで大変だった。

「ちょっともう胸きゅんが止まらないんだけどー!」

「わたしもぎゅーっと抱きしめられたーい!」

「あのネットを潜ってこっちに来たのがやばかったよね?」

「わかる!隔ててあるものなんか飛び越えてやる!みたいなね!」

「キャー!!!!!」

わたしはもう、耳まで真っ赤になってしまって、勘弁してー!と叫びたいくらいだったけど、だまって下向いてた。

そんな様子に気がついた井澤さんが

「もうそのへんにしてあげてよ、ほら来蘭ちゃん困っちゃってるじゃん」

って言ってくれた。

「ごめん来蘭ちゃん...胸きゅんが止まらなくてつい...」

「ううん、全然全然、もうわたし恥ずかしくって...ただそれだけだから、謝ったりしないでー!逆にごめんー」

って言ったら

「なんで来蘭ちゃんが謝るのよー」

ってみんな笑ってくれて、ホッと胸を撫で下ろした。


教室に戻ると、すでにそうちゃんが居て

「おかえり来蘭」

って手を引っ張られて、そうちゃんの膝の上にストンと座らされた。

「もう来蘭の席、ここでいいんじゃない?」

とか言う...

「んもぅ、降ろして!そうちゃん!」

と言うと、そうちゃんは、わたしの腰を両手で持って、ひょいと持ち上げる。一瞬身体が宙に浮いてびっくりした!

そうちゃんはなんでもない顔してる...

「ねぇそうちゃん...重くないの?」

なんかちょっと小声になる...

「重かったらあんなに軽々と持ち上げられるわけないでしょ?」

なんて言って笑ってる。

「ってゆーかさ、来蘭実は華奢じゃん。俺何回来蘭を抱きしめてると思ってんの?」

とか言ってそうちゃんはニヤリとした。

そうちゃんにはかなわないよ、もう...

いつの間にか更衣室から戻ってきてた井澤さんがそうちゃんに声をかける

「ちょっと青木!来蘭ちゃんにメロメロなのは分かるけどさ、たいがいにしなさいよ?

あの後来蘭ちゃん更衣室で大変だったんだからね?」

「え?そうなの?来蘭?」

「当たり前でしょ?ネット潜ってこっちへ来たかと思ったら、いきなり来蘭ちゃん抱きしめるんだもの」

「来蘭、なんか嫌な思いしたのか?」

途端に心配そうな顔して、わたしに問いかけるそうちゃん

「ううん、なんにもないよ」

「女子たちみんなが羨ましがって大変だったんだよね?来蘭ちゃん?」

「井澤さんがひとこと言ってくれたから助かったよ、ありがとうね」

と、肩をすくめた。

「全然だよ!」

「っていうか、井澤さんわたしの後ろの席だったんだね」

「今気がついたの??」

「うん...ごめん...」

「あたしは井澤 加奈。井澤さんじゃなくて加奈って呼んで!」

「加奈ちゃん、仲良くしてね」

ってハニカミながら言ったら、机に座ってた加奈ちゃんが、ストンと机から降りて

「萌える...ほんとかわいい...」

って言って座ってたわたしをぎゅっと抱きしめた!

「井澤っ!俺の来蘭を気安く抱きしめるんじゃねぇよ!!」

そうちゃんが怒る...

「来蘭ちゃんは青木のもんじゃない!みんなのものだ!」

って加奈ちゃんが言うと、さっき体育で一緒だった球技大会バレーチームの女の子たちが集まって来て

「そうだよー」

「青木ばっかり来蘭ちゃん独占しないでくださーい!」

「ってゆーか、あたしも来蘭ちゃんぎゅってしたーい」

「あれだよね、さっきの体育館のぎゅってのもさ、むしろ青木にジェラシーだもんね」

なんかわかんないけど、たちまち女の子にモテモテなんですけど...なにこれ...

「もー!男子人気で手一杯だっつーのに、女子人気もなのかよ!」

そうちゃんが頭を掻きむしってる...

「来蘭ちゃん!今日みんなで一緒にタピろーよ!」

太田さんが誘ってくれた。

ちょっと返事に困ってそうちゃんを見たら

「いいよ、行っておいで」

って笑ってくれた。

「ありがと、そうちゃん」

「じゃあわたしも行く!」


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