保健室につくと、ベットに陽介くんが下ろしてくれた。保健の先生は不在だった。
「重かったでしょ...ごめんね...」
重いわたしをおんぶしてくれた申し訳なさと恥ずかしさで顔から火が出そうだった。
「重くなんかないよー!何言ってんのー!バレー部で鍛えた身体を甘く見るなよー」
と言って、屈託なく笑った。
「バレー部だったの?そうちゃんと同じだ!」
「おう!奏太とは同じ中学でバレー部のキャプテンと副キャプテンだったんだよ!」
「そうだったんだ!だから仲良しだったんだね。あ、そう言えば昨日...ごめんなさい。わたし急に逃げちゃったりして感じ悪かったよね...」
「それはこっちのセリフだよ!昨日はからかうようなこと言ってごめんな」
あらためて顔を見合わせて、2人で笑った。
「俺は黄之瀬 陽介(きのせ ようすけ)、奏太とは幼稚園からの幼なじみなんだよ」
「わたしは赤井 来蘭です。」
「お!俺たち〈赤青黄〉で、信号みたいだな」
とか言うから、笑ってしまった。
「具合大丈夫か?さっきよりは顔色よくなってきたけど...あの女子たちにトイレん中でなにか言われたんだろ?」
「.......」
「あいつら同じ中学だから知ってるよ。まぁ知ってるもなにも、奏太にしつこく付きまとっていたやつらだからな...」
その時、保健室の扉が開いてそうちゃんが入ってきた
「来蘭!」
急いで来たんだろう、少し息を切らしてる。
「陽介!悪かったな!陽介があの場に居てくれて良かったよ...」
「奏太、あいつら今後要注意だぞ...さっそく来蘭ちゃんにやってきたからな...」
「わかってる...」
男子2人が、神妙に話しをしている...
「来蘭、心配するな、俺がちゃんと守るから」
そう言うと、そうちゃんは優しく笑った。
あぁ、やっぱりそうちゃんのこの声と笑った顔、すごい安心するな...
〈奏太side〉
「青木、赤井、お前たちが学級委員に立候補してくれて助かったよ。その後の進行も見事だった。」 担任の長谷川先生に声を掛けられた。
「たいていは学級委員長は最後まで決まらないことが多いからなぁー、その場合は中学でバレー部キャプテンだった青木に頼みたいなと思っていたから、お前から立候補してくれたのにはおどろいたよ!」
ご機嫌な長谷川先生に捕まっている間に来蘭を見失った。教室内を見渡してみたが見当たらない。席にも居ないなぁ...
視界から来蘭の姿が消えただけでこれかよ俺...
席に座って来蘭が戻ってくるのを待っていると、同じ中学だった女子が数人で戻ってきた。
そのうちの一人、緑川が
「奏太ぁー、あんなビッチ相手にするのよしなよ!わざとらしくトイレの前で具合悪そうにして、陽介におんぶされてたよー?なんなの?あの子」
そう言う緑川の後ろに居る白石 綾が、少し不気味にほくそ笑むのを俺は見逃さなかった。
が、今は来蘭が大事!
「来蘭が具合い悪そうにしてたのか?」
「ホントかどうか怪しいけどねー」
意地悪く緑川が言う
「ばか、あいつ身体弱いんだよ!」
そう言い放って教室を飛び出た。
保健室に行ったのだろうか...
陽介がおんぶしてた?
いやいや、今ヤキモチ妬いてる場合じゃないよな
俺は保健室へと急いだ。
「来蘭!」
来蘭は保健室のベットに座っていた。
その正面に陽介が座っていた。
俺が入ってきた時、2人は笑い合っていた...
陽介相手に何モヤモヤしてんだ俺は
来蘭を保健室に連れてきてくれたことに礼を言うと、陽介から状況を聞いた。
陽介によると、緑川と白石と関野の3人に来蘭は女子トイレ内で何か言われたらしい...この3人は、俺と陽介と同じ中学の女子だ。
実はこの中の白石に、俺は告白されたことがある。
彼女は学校内でも、美人だと評判の子ではあったのだが、俺は部活に夢中だったし、正直全く異性としての興味は持てなかったから、断ったという過去がある。しかし彼女は、その後も毎年のバレンタインはもちろん誕生日やクリスマス、なにかと理由をつけては物を贈ってきた。困ると何度も言ったのだがダメだった。
1番頭を抱えたのは、バレー部のマネージャーの女の子に、陰険な嫌がらせをしたことだ。
俺とマネージャーが付き合っているという噂になった時があって、その時にあの白石は、仲の良い緑川と関野を使って嫌がらせをしたのだ。
俺とマネージャーは、単にキャプテンとマネージャーの関係であって、恋愛関係では全くなかったのだが、練習後に何度か一緒に帰る姿を誰かに見られ噂になっただけであった。
このことは、陽介もよく知ってる。
だからあの女子たちがまた似たようなことをやりかねないと危惧しているのだ。
来蘭は中学の時に辛い思いを沢山してきたんだ。
高校ではもうそんな思いをさせたくない。
絶対守ってやらないと!
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