一目惚れから始まった俺のアオハルは全部キミだった

キミと駆け抜けたアオハルDays
退会したユーザー ?
退会したユーザー

下駄箱

下駄箱

公開日時: 2021年5月29日(土) 14:28
文字数:1,846

〈奏太side〉

「来蘭っ!」

陽介のからかうような発言を聞いたとたん、来蘭の顔色が変わるのを感じたんだが、時すでに遅し、来蘭は鞄を抱えて走って行ってしまった。

「陽介ぇーもーお前はー...」

えっ?俺っ?!って顔した陽介を置き去りにして来蘭を追いかけた。

来蘭は下駄箱に居た。

うつむいて立ちすくんでいた。

その姿を目にした所からの記憶は曖昧だ...

気がついたら彼女を後ろから抱きしめていた。

「ごめん。嫌な思いさせたな...」

びっくりした彼女の耳が、みるみる赤く染まって行った。

そっと身体を離し、彼女の顔をこちらに向け、うつむく来蘭の顔を身を屈めて覗き込んだ。

すると彼女が、とても申し訳なさそうにつぶやいた

「ごめん、そうちゃん」

「来蘭があやまることないだろ?陽介がいけないんだから」

と、少し笑う俺の目を、来蘭が見つめ返してきた

「別に変なこと言ったわけじゃないのに、わたしいきなり逃げちゃったから...」

「いや、あいつがからかうような言い方したのが悪い。だから来蘭は悪くないよ」

その言葉にやっと来蘭は顔を上げた。

「来蘭、一緒に帰ろう?」

鞄取ってくるから、ちょっとだけここで待っててと伝えると、彼女はだまってうなづいた。


教室に鞄を取りに行こうと急いでいたら、陽介の後ろ姿が目に入った。後ろから近づいて「陽介!てめぇコノヤロー!」と言いながらヘッドロックしてやった。

「うわぁ奏太!ほんとごめん!あの子大丈夫だった?」

陽介に悪気がなかったことは分かってる。

「大丈夫だよ、気にすんな。 でも明日にでも来蘭に謝れよ?」

「わかったよ」

申し訳なさそうな顔した陽介が言葉を続ける

「随分あの子と仲良さそうだったじゃん」

「一目惚れした...」

「え??一目惚れ?? お前の方が一目惚れされることはあっても、お前が一目惚れするなんて初めてじゃないの??」

「初めてだね、うん。 あ、悪い陽介、彼女を下駄箱で待たせてるから急ぐわ!また明日なー」

「え?おい、一緒に帰るんじゃねーのかよー!おい奏太ー」

陽介が叫んでるけどまぁいいや

教室に置いてあった自分の鞄を取り、来蘭の元へと急いだ。

ちょっと不安そうに来蘭は1人下駄箱で待っていた。俺の姿をみつけた来蘭は

「あ、そうちゃん」

と言って駆け寄ってきた。

なんかもぉその姿にいろんな理性がぶっ飛んでしまった!

駆け寄ってきた彼女の手を掴み、引き寄せ、抱きしめた。

柔らかい

あったかい

いい匂い

ハッ!

身体を離し

「ごめん!つい...」

来蘭はきょとんとしてる

そしてゆっくりと笑ってこう言った

「帰ろう、そうちゃん」

俺の高校生活でやりたいこと、見つかった。

〈俺の青春を君に捧げる〉



〈来蘭side〉

鞄を教室まで取りに行ったそうちゃんを下駄箱で待ってた。

さっき、後から抱きしめられたよね...

びっくりした...

でも、いやじゃなかったな...

むしろ...

小さい頃から、コロコロのぽちゃぽちゃだったわたしは、男の子からはいじめられることはあっても、優しくされたことなんて1度もなかった。

だから男の子と話すことすら上手く出来ない。陽介くんの何気ない言葉にもこんなありさまだ。

あれ?そう言えばそうちゃんとは、最初から普通に話せたな...

あ、そうちゃん来た。

そうちゃんの姿が見えたとたん、わたしは走り出していた。

わたしが視界に入ったそうちゃんは、その場で立ち止まり腕を伸ばし、わたしの手を掴んだと同時にぐいっと引き寄せた。

あっ と思う間もなく、わたし身体はそうちゃんの腕の中に居た。

ふわりとそうちゃんの香りがした...

数秒後、ごめんといって身体を離したそうちゃん

一瞬どんな顔したらいいのかわからなくて困ったけど、そうちゃんの顔を見たらもうそんなのどうでもいいやって思えるくらいの優しい顔をしていたから、わたしも笑った。

「帰ろう、そうちゃん」

そうちゃんはゆっくりうなずいた。

2人で靴を履き替える

大きなローファーと小さなローファーが並ぶ

「来蘭のローファーちっちゃ!」

「そうちゃんのが大き過ぎるんだよ!」

ローファーに足を入れ損ねて、よろけたわたしを

「っぶねーなーもー」

って支えてくれる

なんかもう、いちいち優しいなぁもぉ

「なぁ来蘭ー、寄り道してかない?」

「え?寄り道?」

「ここから海まですぐだから、そこでジュース買って海行かない?」

「海っ!!行くっ!」

ってそうちゃんの顔を見上げたら、くるっと向こう側を向いてしまって

「...わいすぎる...」って小さく聞こえた気がした。

そして、そうちゃんの手はわたしの右手を握り

「ほら、行くぞ」

って引っ張った。






読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート