〈奏太side〉
俺のパーカーの長すぎる袖を、わざとパタパタさせながら、俺の後を来蘭は付いて来た。
「今度裸の上に、そのパーカーだけ着てよ来蘭」
来蘭のパタパタの動きが止まる。
くるっと踵を返して帰ろうとする来蘭を捕まえる。
「すぐそうちゃんそうゆうこと言うー」
来蘭のこうゆう時の顔があまりにも可愛くて、ついこうゆうこと言っちゃうんだよな...
「ごめんて...」
俺はあえて来蘭の右側に立ち、動かなくなった右手を取り、握った。動く方の左手は、なるべく使えるようにしておかないと、咄嗟の時に危険だからと、手を繋いで歩くなら右手を繋いでやれとの紫音先生からの教えを俺は忠実に守った。
「あ、あのテトラポット…」
「うん、2人でここに来るの久しぶりだな…」
「いつ以来だ...?」
「え?来蘭覚えてないの?」
「覚えてるよ...そうちゃんが、初めて」
「来蘭に好きって言った日以来...」
先にテトラポットに登り、来蘭を引き上げた。
2人で並んで座り、日の出を待った。
あの日、病室の窓からと屋上、別々の場所で見ていた『朝焼けのshow』
やっと2人揃って一緒に見られる。
目まぐるしく空は色を次々に変え、水平線から眩い光を放って朝日が顔を出して来た。
オレンジ色に染まった来蘭の横顔に見とれていると、正面を向いたまま来蘭が
「いつもそうちゃんって、そうやってわたしの横顔見てるよね...」
思い出したように来蘭が笑う
「今見るのはわたしじゃなくてあっちでしょ?って時ほどわたしを見てる」
「校長先生よりも、朝日よりも、来蘭の横顔の方に視線は引き寄せられるんだから仕方ないだろ?」
来蘭は、はにかんだように視線を下に落とした...
そのまま俺は来蘭を抱き寄せ
「来蘭...もうこのまま全部俺のものになれ...」
と言った俺の腕の中で来蘭は、ただひとこと
「うん...」
そう返事をした。
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