一目惚れから始まった俺のアオハルは全部キミだった

キミと駆け抜けたアオハルDays
退会したユーザー ?
退会したユーザー

3years later

3years later

公開日時: 2021年5月31日(月) 19:02
文字数:1,516

〈3years later 来蘭 side〉

「パパー」

そうちゃんとわたしの間に生まれた天使のような女の子は、今年の秋で3歳になる。

「結(ゆい)ー、ほらもう危ないからー」

パパが大好きなおてんば娘として、すくすく育っている。

Re Lightの方も、あの東京ドーム公演の公開プロポーズとおめでた報告が大きな反響を呼び、更に人気に拍車がかかり、ほんの少しだけ産休は頂いたが、すぐに活動を再開して、お陰様で今も多忙な日々だ。

結は、春子さんに手を貸してもらったり、現場に連れて来たりしながら、沢山の方々に一緒に育ててもらっているといった感じだ。

中でも結を一際可愛がってくれているのが優輝くんだ。

結も優輝くんが大好きで、『パパ』『ママ』の次に覚えたのは『ゆー』つまり、優輝くんの名前だった。

今日も優輝くんにべったりだ。

「ゆー、抱っこー」

始まった...

あれが始まると、抱っこしてくれるまで優輝くんから離れなくなる...

リハーサル中だろうと、レコーディング中だろうと、おかまいなしの結の抱っこのおねだりも、優しい優輝くんは全く苦じゃないらしく、今日も結を上手に抱っこしながら鍵盤を叩いている。

優輝くんのこんな姿を、ファンが見たらどう思うのだろうか...

最近は、優輝くんの真似をしたいらしく、ピアノひ弾きたがるので、オモチャのキーボードを買い与えたら、たいそう気に入ったようで、うちに帰るとずっとキーボードの前に居る。

最初のうちは、キーボードを弾いているというよりは、叩いているという表現のが正しかったが、そのうち驚いたことに、誰も教えてないのに、メロディーに聞こえるようなものを弾くようになっていた。

そして更に驚いたのは、その自分の弾いためちゃくちゃではあるが、メロディーのようなものに合わせて歌うのだ。

その歌声はやはり親子、とてもわたしに似ていた。

ある日のこと、いつものように結は吹き抜けのリビングでキーボードの前に座り、ご機嫌で一人遊びをしているのを、キッチンで料理をしながら見ていると、耳に飛び込んできたメロディーに聞き覚えがあって、料理の手を止めた...

「...うそ...でしょ?」

咄嗟にスマホのムービーを回して音を録った。

聞き直してみる...

やっぱりそうだ、間違いない。


わたしはすぐにそのムービーを彼に送った。

どこに居たのか、数十分で飛んで来た。

玄関のベルが鳴る。

キーボードを弾いていた手を止めて、玄関へと駆けてゆく結の姿をわたしは追った。

玄関を開けるとそこには、スマホを手に息を切らしながら立ちすくむ優輝くんの姿があった。

「ゆー!」

喜ぶ結を抱き上げ、強く抱きしめる優輝くんの腕の中で、少し驚いた様子の結だったが、次の瞬間結は、優輝くんの頬にkissをした。

「落ち着いた?」

久しぶりに感情のままに泣く優輝くんの、右側にわたし、左側に結、三人並んでソファに座っていた。

結も黙って隣に居た。

そう...

結は、優輝くんが由香ちゃんの為だけに作ったあの曲のフレーズを弾いて歌ったのだ...

「由香...最後に言ったんだ...あの曲だけ天国に持って行くから...って...

あの曲歌って待ってるから、また私を見つけてね...って言い残して逝ったんだ...」

そう言って優輝くんは結の頭を撫でた。

「結の中に、由香ちゃんの想いの欠片があるのかもしれないよ...

結がお腹に宿ったのは、由香ちゃんの四十九日にあたる頃だもの...」

「...そうか...由香が残して行ったのかもな...」

人の想いや願いは、時空を超えて紡がれてゆくのかもしれない。

咲さんの想いも、由香ちゃんの想いも、これからもわたしはそうちゃん、加奈、陽介くん、優輝くんと共に、歌に込めて歌ってゆくよ...

[完]

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート