一目惚れから始まった俺のアオハルは全部キミだった

キミと駆け抜けたアオハルDays
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歌姫 来蘭

歌姫 来蘭1

公開日時: 2021年5月31日(月) 00:58
文字数:2,408

「来蘭!大森さんに会ってきた?」

マイクを通して吉井先輩が言う。

もう最近じゃ、吉井先輩もわたしのことを来蘭と呼び捨てにする。

「挨拶してきました!

今週末から使ってもらうことになりました!」

「おー!良かったねー!」

マイク通さなくてもいいんじゃないかと思うんだけど、ずっとマイク通して話す吉井先輩...

「うるせーよ吉井!」

ライブが近づくと廣瀬先輩は人が変わる。

いつものようにわしゃわしゃしてくれなくなる...

それはそれでちょっと寂しい...

でも、ピリピリモードの廣瀬先輩も、カッコイイんだよな...

廣瀬先輩に怒られた吉井先輩は、マイクスタンドにマイクを戻し、ミネラルウォーターを飲みながらわたしの近くにやって来て

「大森さんすごいいい人だからさ、安心してかわいがってもらいな」

そう言ってまたゴクリとミネラルウォーターを飲んだ。

「大森さんにわたしを使ってやってくれってすごいお願いしてくれたんだってね、先輩...

先輩も訳ありな生い立ちだから、わたしのことすごい心配してくれてたって...

ありがとう、吉井先輩。」

「あのオッサン、余計なこと言うなよー」

ちょっと照れて困る吉井先輩

「俺んちは俺が小さい頃に親父が死んでんだよ」

「そうゆうこと、そんなあっけらかんと言う?」

ちょっと笑ってしまったわたしに釣られるように先輩も笑いながら

「俺もひとりっ子だし、なんか来蘭のことちょっと妹みたいな気になったんだよね」

西日を眩しそうにしながら、今まで見たことないような優しい顔をした吉井先輩の横顔を、わたしはこっそり見つめていた...

「ありがと、おにーちゃん」

って小声で言ったら、予想外に吉井先輩は照れて

「おまっ、やめろよー」

とか言いながら、あっちへ行ってしまった。


すぐにわたしは、自分のベースを取り出してチューニングをして、廣瀬先輩が作ってくれたベースラインを弾き始めた。

もうメロディはすっかり覚えているから、そのメロディにわたしが書いた歌詞を乗せて歌いながらベースを弾いてみた。

難しいフレーズの所は、ベースのプレイに気を取られて歌が疎かになってしまう箇所もあって、これは練習しないと!と、身が引き締まった。

よし!今日はベースを持ち帰って特訓だ!

ベースをソフトケースに入れ替えて、持ち帰る支度をしていると、そうちゃんが近寄って来て

「来蘭うちのガレージ来るか?廣瀬先輩のお古のベースアンプも置いてあるから練習できるし、リズム隊同士合わせたいのもあるし...」

「いいの?」

「もちろんいいよ、俺たちの練習場所なんだから!よし、じゃ行くか!」

張り切るそうちゃんに

「俺も行くー」

陽介くんも急いでギターを背負った。

「優輝は、先輩たちの練習終わり次第来いよー!」

そうちゃんが声を掛ける

「了解!先にやっててー!」

優輝くんは2バンド掛け持ちだから大変だ。

「あ、ヤバい、昨日のアレ片付けてないや...」

「アレはヤバいよ奏太...」

え、ちょっとなに?なんなの?

気になるじゃん...

「ちょっと俺先に行くわ!

陽介、来蘭連れて後から来て!」

そう言ってそうちゃんは行ってしまった...


陽介くんと2人で、お互いベースとギターを背負って、そうちゃんの家のガレージへと向かっていた。

聞くと、陽介くんの家とそうちゃんの家は数軒しか離れてない超近所で、お父さん同士も幼なじみで親友だという。

陽介くんのお父さんは、建築関係の仕事をしていて、今回そうちゃんの家のガレージをバンドの練習場所にするのに改築してくれたのは、陽介くんのお父さんなのだそうだ。

「なんかほんとにいろんな人に恵まれて、有り難すぎるよ...」

「俺思うんだけどさ、成功してく人間ってさ、引き寄せる力があるんだと思うんだよね。

来蘭ちゃんには、そうゆうのを感じるんだよね」

「えっ?!わたしにそんな力はないよー」

そんな会話をしていると、洋画に出てきそうなガレージが目に入ってきた。

「陽介くん、まさかあれ?」

「そう、まさかのあれが、奏太んちのガレージ、俺たちのプライベートスタジオ!」

ちょっとここで待っててと言われて、陽介くんが様子を見に行った。

だからどんなヤバいものがあったのよ?

どうせエロ本とかでしょ?もう!

少し待って居たら、そうちゃんの姿が見えてきた

「来蘭!お待たせ!おいで」

と、手招きしてる。

わたしはベースを背負い直して、ガレージへと向かった。

ドキドキしながら足を踏み入れると、まず目に飛び込んできたのは真新しいそうちゃんのドラムセット、それからギターアンプとベースアンプが両サイドに置かれていて、ドラムの左横、ベースアンプの後ろには、鍵盤ブースになっていて、何台かのキーボードが置いてある。入口の右横には、レトロなソファーと小さめの冷蔵庫、左横にはバーカウンター、その奥にはミニキッチン...

これもうライブハウスじゃない!!

「すごい...」

「すごいだろ?」

振り向くと、そうちゃんがわたしのすぐ後ろでどうだ!って顔して立っていた。

「井澤とのルームシェアの生活を整えて慣れていくまでの間に、来蘭に内緒で、ここを改築したんだよ。

うちの親父と陽介の親父が本気になっちゃってさ、このバーカウンターとミニキッチンなんかは、完全なるオヤジ2人の趣味なんだよ」

そう言ってそうちゃんと陽介くんは苦笑いした。

「陽介のアニキたちがやってるバンドも来るし、先輩たちも夜とか日曜とか学校使えない時なんかは来るよ!なんかもう早くも溜まり場だよ...

だから時々、来蘭の目には触れさせたくないような物が転がってることもあるかもしれない...」

バツが悪そうに言うそうちゃん

「エッチな本とかDVD?

今もそれ隠してたんでしょ?」

って睨んだら

「あのねー来蘭、俺は見ないよ?先輩たちとかが持ち込んで来るんだからね?」

ほんとかなぁ?って顔してそうちゃんを睨むわたしに

「来蘭以外に欲情しないよ俺は」

って耳元で囁くそうちゃん

わたしが耳弱いの知っててそうゆうことする...

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