一目惚れから始まった俺のアオハルは全部キミだった

キミと駆け抜けたアオハルDays
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桃ゼリー

桃ゼリー

公開日時: 2021年5月31日(月) 01:49
文字数:738

〈紫音side〉

「お前またギターばっかり弾いてて、右手のリハビリいい加減にやって!」

「やってるもん!このリハビリのメニューなら、もうちゃんとやったよ?」

「やったよ? じゃねーんだよ、このやろ」

と言いながらヘッドロックすると、来蘭はキャーキャー言って暴れた。

「まったくもう、紫音先生と来蘭ちゃんは兄弟みたいに仲良しねぇ」

ベテラン理学療法士の中野さんが冷やかす

「冗談じゃねぇ!こんな生意気なの妹になんか欲しくねぇ!」

「あー!そうゆうこと言うんだ?わたしだって紫音先生がお兄ちゃんなんてやだよーだ!」

「なんだとー!」

再びヘッドロック!

最近毎日こんな風に来蘭とじゃれあってる。

まぁ確かに...毎日楽しい...

アイツと一緒に居ればずっと笑ってるし、一緒に居ない時も、思い出し笑いしてる始末だ...

来蘭は15、俺は28だぞ?

ひと回り以上違うんだよな...

そんな感じがしないのは、来蘭がどこか大人びてるからだろうか...

今日も午後イチからアイツの世話か...

食堂の定食に付いてた桃ゼリーを、ポケットに入れて席を立った。

リハビリルームに戻り、午後の準備の作業をしようとすると、窓際の机で左手の文字書きトレーニングをしながら眠ってしまってる来蘭の姿が目に入った。

「ったくもう...お前は...頑張りすぎなんだよ...」

顔にかかったふわふわの髪をかき上げると、そこには、滲んだ文字と濡れた頬...

俺が最初に泣くな!って言ったから、泣けなくなっちゃったんだな、ごめんな...

眠る彼女の濡れた目元を、そっと拭った。

「そうちゃん...」

来蘭が呟く

「そうちゃん...か...」

ふふっと笑って、ポケットから桃ゼリーを出して来蘭のほっぺにピトっと付けた。

「ひゃっ!冷たっ!

あ!わたしの好きな桃ゼリー!」

「やる」

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