一目惚れから始まった俺のアオハルは全部キミだった

キミと駆け抜けたアオハルDays
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奏太と優輝

奏太と優輝

公開日時: 2021年5月31日(月) 00:24
文字数:2,659

部室である第二音楽室に入ると、優輝がもう来てて、自分のキーボードやらノートパソコンやらをせっせとセッティングしていた。

「おつかれーっす!」

と声をかけると、優輝が気がついて

「奏太くん、陽介くん、待ってたよ!」

「なんか随分とやる気じゃん!っていうかさ、俺たちタメなんだから呼び捨てでいいよ?優輝ー」

って陽介が言うと

「あぁ、うん、わかったよ...奏太、陽介」

「なんかぎこちないな」

と陽介が笑うと

「僕、友達居たことないからさ、呼び捨てとかしたことないんだよ...」

優輝はバツが悪そうに笑った。

「ってゆーか来蘭ちゃんは?」

「今日あいつ部活欠席ー」

「え?どうかしたの?来蘭ちゃん!」

「なんかクラスの女子たちにタピろーって誘われてたからさ、行っておいでって行かせたんだよ」

「なんだそうゆうことか...何かあったのかと思った...でも今日来蘭ちゃん来ないのか...残念だな...」

分かりやすくがっかりする優輝...

「あからさまながっかりだね」

と笑う陽介に、優輝も苦笑いする。

よし、それならと、優輝が意を決したように

「来蘭ちゃんが僕の曲で気に入ってくれた曲があって、その曲の歌詞を書いてみたいと言ってくれたんだ。僕はその曲を4人で作って文化祭までに完成させたいと思うんだ。一緒にやってくれないかな?」

俺と陽介は、もちろんだ!と言った。

来蘭のためなら、どんなことだってやるさ俺は...

まずは聞いてくれと、その曲を聞かされた。

確かにせつなくていい曲だった。

優輝は陽介に、この曲のコード譜を渡した。

「コードは弾けると言っていたから、まずはコード譜を書いてきたんだ。そこからどう弾いて行くかは、なるべく陽介に任せたい」

「テンポについては決めかねてるんだ。まだ来蘭ちゃんがどんな詞を書いてくるかわからないっていうのもあって、ミディアムテンポにするのか、あえてテンポアップさせるのか...そのへんは一緒に考えてくれないか?奏太?」

「わかった!」

「しかしすごいな!普通はさ、初めてバンドやる時って、コピーから始めるものだけど、いきなりオリジナル曲だもんなー」

と陽介が言うから

「そうゆうもんなの?」

と聞いたら

「おれのアニキなんかはそうだったよ」

と陽介は言う

「いやでも、単純にバンドとしての練習で、なんかのアーティストのコピーというか、カバーみたいなのもやろうよ!」

優輝が前のめりに言う

「なにやるかー?」

「僕はやっぱり来蘭ちゃんにベースを弾きながら歌わせたいんだ。だから、来蘭ちゃんの歌声が生かせる曲がいいかなと思うだけどどう思う?陽介にも奏太にもよく聴くアーティストや、やってみたい曲もあるだろうから、選択肢を限らせてしまうかもしれないんだけど、バンドとして魅せる!聴かせる!ならば、そうゆうことも考える必要があるとは僕は思うんだ。」

「いや、もっともだと思うよ優輝!ってかすごいな!なんかもうプロデューサーだな優輝!」

と俺が言うと

「俺も優輝の言う通りだと思うよ!うちアニキがバンドやってて、ライブとか見に行くけど、やっぱり客観的にそのバンドの魅せ方を分かって演ってるバンドは人を惹きつけるから、動員数が上がってくもんなぁ...客観的な視点を持てなくて、ただ自分たちの演りたいことだけ演ってるバンドは、ただの〈ピーー〉野郎集団だよ!」

いつの間にか居た吉井先輩が、絶妙なモザイク音を入れてくれた...

「いやぁ、優輝も陽介もいいこと言うわー」

と、しきりに関心してる。

「吉井先輩!ドンピシャなモザイク音あざっす!」

吉井先輩をよいしょしといた。


「なぁ、陽介のアニキのバンドってもしかしてRosey〈ロージー〉?」

吉井先輩が陽介に聞く

「はい、そうです!」

「まじか!1回一緒にライブやったことあるわ!」

「らしいっすね、アニキに聞いたら吉井先輩たちのこと知ってましたもん」

吉井先輩と陽介が話しているのを後目に、俺は優輝と2人で机に並んで座ってた...

「こないださ、差し出がましいこと言ってごめんね」

優輝が俺に謝ってきた。

「あぁ...来蘭はお前のもんじゃない!ってやつ?」

と俺は笑った。

「僕がそんなこと言う筋合いなかったなと思って...」

「いや...あれは...言われた瞬間は確かに頭に来たけど、言われて良かったよ...」

「え?」

優輝がちょっと驚いてる

「あれを優輝に言われてなきゃ俺、幼稚な独占欲で来蘭を縛りつけてしまうとこだったなって...」

「いや、あの来蘭ちゃんのかわいさは独占して束縛してしまうだろ、大人ぶるなよ」

って優輝が笑った。

「あいつさ、小田原から通ってるだろ?なんでだと思う?」

分からない、と優輝は首を振った。

「あいつ中学でひどいいじめに合ってるんだ...だから同じ中学のヤツが1人も居ないところに行きたかったんだって言うんだよ...病気で入院もして3年生はほとんど学校行けなかったったらしい...

だから、高校では中学で出来なかったこと全部やるんだって打ち明けられてさ、あぁもう、俺こいつのために俺の3年間全部捧げようって思ったんだよね...」

優輝は黙って俺の話を聞いていた。

「来蘭はまだ自分の魅力に全く気がついてないんだよな...いじめられた経験が心の傷になって自信がないのだろうけど...今の来蘭も充分かわいいんだけどさ、来蘭のポテンシャルは計り知れないものがあると思うんだよ」

「それはもう激しく同意する」

と優輝が言った。

「あの屋上でのパンツ事件の時さ、正直言って僕、来蘭ちゃんに一目惚れしかけたんだ。いや、一瞬したな...

だけどさ、奏太が来た時の来蘭ちゃんの顔見たら、これはかなわないなと思ったよ...

あれはヒーローが助けに来てくれた時の顔だったもんなぁ」

と優輝は笑う。

「あの時来蘭、そんな顔したか?」

「してたしてた。多分、来蘭ちゃんにとってのヒーローは、奏太ただ1人なんだろうなぁ...」

優輝は少し切ない顔をして笑った。

「でも、来蘭ちゃんを音楽で輝かせるのは僕の仕事だと思ってる。僕が来蘭ちゃんをプロデュースする!それについては許してくれるか?奏太?」

「もちろんだよ!」

「良かった!来蘭ちゃんのあの歌声は、こんな学校の文化祭レベルなんかじゃないよ?冗談抜きに!」

「俺もそう思ってる!

俺ん家のガレージをさ、バンドの練習場所に出来たらと思ってるんだよ。こないだドラムセットも買ったんだ!オヤジにも了解得てるからさ、優輝の機材とかも搬入していぜ?今度うちに来いよ!」

「すごいな!俺たちのプライベートスタジオみたいじゃないか!」

「来蘭も同じこと言ってたよ」


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