〈奏太side〉
来蘭の透明感のある不思議な強さを感じる声が響いた。
俺も陽介も顔を見合わせて驚いた!
吉井先輩はポカン顔、演奏陣の3人も驚きながらも来蘭の歌に引っ張られるように強さを増す。
来蘭はそれは楽しそうに歌っていた。
羽が生えたような来蘭に、俺は見惚れることしかできなかった。
歌いきった来蘭は、膝に両手を付いて、肩で息をしていた。
そんな来蘭の様子に、身体が勝手に来蘭の元へと動いていた。
「来蘭?」
身体を屈めて来蘭の顔を覗く。
次の瞬間、来蘭が俺に抱きついてきた。
「そうちゃん!わたし歌えた!すごい気持ち良かった!わーん!」
と、子供のように声を出して泣き出した。
来蘭に抱きつかれて、一瞬棒のように固まったが、そんな来蘭が愛おしくて愛おしくて、よしよしとなでてやった。
楽器を置きながら、先輩たちが口々にすごい!すごい!と驚いてる!
廣瀬先輩が
「来蘭ちゃん!ベースはいいから歌え!」
と言ったとたん、来蘭は俺から離れて
「それはイヤです!わたしはベース弾きたいんです!」
と言い放った!
これには先輩たちも俺たちも大爆笑
「ねぇ、来蘭ちゃんって何者??」
吉井先輩が腹を抱えながら言ってる。
ほんとに何者なんだよー来蘭ー
「そんなにベースやりたいのか来蘭ちゃん?」
廣瀬部長が来蘭に聞く
コクっと頷いて
「わたしはベースがやりたい...」
という来蘭に、ここに居る男子6人は全員やられた...絶対...
緩んだ顔して廣瀬先輩がたまらずに言う
「そうかそうか、うんうん、わかったわかった、よしじゃーおにーちゃんがベース教えてあげるからな?」
完璧に堕ちちゃってるじゃないかよー!廣瀬パイセンよー!
「廣瀬ーもぅ来蘭ちゃんが可愛くてしょーがないんだろー?」
笑いながらドラムの菊池先輩が言う
「そりゃ可愛いだろー!妹みたいだよなんかもぅ」
廣瀬先輩の顔は緩みっぱなしだ...
ギターの菊池先輩までもが
「なんかあれだね、むさ苦しい野郎だけの部活の、マスコットみたいだよね、来蘭ちゃんは」
ちょっと待ってくれよー!
先輩たち来蘭にデレデレじゃないかよー!
何かを察した吉井先輩が俺の肩を抱き
「うかうかしてるとこのオオカミたちに、可愛い来蘭ちゃん食べられちゃうぞ!そうちゃん?」
と耳もとでいじわるくささやかれ、ニヤリと不敵な笑みを浮かべて離れて行った...
「吉井先輩!あなたがいちばん来蘭を喰っちゃいそうじゃないですか!!」
と叫ぶ俺に
「あら?わかる?」
と色気のある声でサラリと言ってのけた
「はい!じゃそーゆーわけで、入部ってことでいいね?」
と言って廣瀬部長が入部届を3枚出してきた。
言われるがままに入部届を書く。
ふと左端の視界に入る見覚えのある文字と名前...
「っておい!陽介、お前も入るのかよっ!!」
「声デカいよ...」
右耳を抑えながら陽介が言う
「さっきの菊池先輩の聞いてたでしょ?ギターベースドラムで3ピースバンドいいんじゃない?って」
「陽介くんがギター弾けるなんて驚いたよ!」
早々と入部届を書いた来蘭が、正面にちょこんとしゃがみ、机からひょこっと顔を出して言う。
条件反射的に来蘭のほっぺをぷにぷにしてしまう俺に怒ってほっぺを膨らまして睨んでる。
それを親指と人差し指で両頬を挟んで潰す。
可愛すぎる...
椅子の背もたれに身体を預け、反り返って天井を仰ぎ、両手で顔を覆った。
ペシ、ペシ、ペシ、ペシ
と4発叩かれて、顔を覆っていた手をどけると、オオカミ...じゃなかった、先輩4人が
「早く書け!」
と見下ろしてた。
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