〈優輝side〉
階段を無気力に降りる僕は、1年3組の黒沢優輝(くろさわ ゆうき)。
あんまり人と接するのが得意じゃないから、昼休みはなるべく1人で居たくて、人があんまり来ない場所を探してる。
今日は、屋上に行ってみた。
ぽつりぽつりと、ぼっちたちが居るけれど、みんな人のことなど興味ない様子で、陽当たりもいいし、僕はここで昼寝することにした。
うとうとし始めたその時に、ちょっと大きめなランチバッグを嬉しそうに抱えた女子が、ドアを開けて入ってきた...
片方のひじを立てて、そこに頭を乗せて、その子を何となく目で追った。
すると彼女は僕の真正面に両膝を立てて座った。
僕も健全な男子高校生
わぁー、パンツ丸見え!
いやいや、丸見えのまんまだけど?
「ねー、見えてるよー」
彼女に声をかけると、ハッとして両膝を内側に倒してスカートを抑えた。
なにあれ、めちゃめちゃ可愛い...
普段は、自分から人と接することはしない僕が、何故か自分から彼女に近づいて行って、わざわざ顔を覗き込んで
「水色のパンツ、かわいいね」
とか言ってしまった...
がしかし!彼氏登場ですか...
にしても「俺の来蘭」ってなに?
いくら付き合ってるからって、お前のものではなくないか?
とか考えながら教室に戻って来たら、クラスの男子たちが、隣の2組にかわいい子が居るとかって話しで盛り上がってる。
美人系の白石 綾派と、ゆるふわちょいぽちゃの赤井 来蘭派に別れてやんや言ってる。
ん?来蘭?
さっきの水色パンツの子?
「なぁ?黒沢はどっち派?」
と、2人を盗み撮りしたような写真をスマホで見せられて、選択を迫られた。
あ、やっぱりさっきの子だ。
「俺はこっちの子のがかわいいと思う」
と言って来蘭ちゃんの方を指さした。
「そうだよなー、断然来蘭ちゃんのがかわいいよなぁ?」
と、来蘭ちゃん派達が盛り上がる。
来蘭ちゃん派の方が優勢みたいだ。
あのゆるふわで純情そうな感じは、男心をくすぐるよなぁー
と、妙に納得した。
僕は、まだ綾派と来蘭派で騒いでいる奴らを後目に自分の趣味の世界に入るべく、最近買ったイヤフォンを付けた。
僕の趣味は音楽。
クラッシックピアノが僕の原点で、そこから自分で曲を作るようになった。
僕自身が弾ける楽器は鍵盤楽器だけではあるが、コンピュータ上で、リズムであるドラムを入れ、ベース、ギターを足し、ホーンも、ストリングも足せる。でも...歌だけはね...
どこかに居ないのかな僕の歌姫は...
このイヤフォンいい音するな
やっぱりShureのイヤフォンは優秀だなぁ
昨日作った曲を聞きながら窓の外をぼんやり見る...さっきまで居た、隣の校舎の屋上に来蘭ちゃんとアイツ姿が見えた。
あの子、あんな顔するんだな...
屋上のフェンス越しに見えた彼女は、キラキラした笑顔で、アイツを見上げていた...
そんな風に彼女に見つめられるアイツが、ちょっと羨ましいな...と思った。
ひとつため息をついて、自分の世界に入った。
〈来蘭side〉
屋上から教室へと戻る階段を、そうちゃんと一緒に降りていた。
1年の教室は、2階の南側に、1組から順に4組まで並んでいる。
私たちの2組の教室の手前の3組の教室の前を通り過ぎる時に
「あ、来蘭ちゃんだ!」
って声がして
「え?」
って声がする方を振り向いたら、3組の男子何人かが手を振ってる...みんな知らない男子だ...その手を振る男子のすぐ横に1人座って頬杖をついてイヤフォンをしてる男子が目に入る。
あ、さっきパンツ見られちゃった子だ!
瞬時に顔が火照ってしまうのが自分でも分かった...恥ずかしくて走って自分のクラスの教室へ駆け込んだ。
「来蘭?」
わたしの様子に気がついたそうちゃんが、心配して声をかける
「隣のクラスに居た...さっきパンツ見られちゃった男子が...」
「来蘭の名前呼んで、ヒラヒラ手を振ってたヤツらの中に居たの?俺よく見えなかったけど...」
「ううん、その手を振ってた男子たちの横に座ってイヤフォンしてた子」
「まじか、隣のクラスのやつかー!
心配すんな来蘭!なんかされたらぶっ飛ばしてやるから!
それより来蘭の名前呼んで手を振ってたヤツらのが俺は腹立つわー!なんなんだあいつらは!知ってるヤツらなわけじゃないだろ?」
「うん...全然知らない子たちだった...」
そんな会話をしてたら、後ろの席の加藤くんが
「なんか隣のクラスで、赤井さん人気あるらしいよ?なんでも、美人系の白石 綾派とかわいい系の赤井 来蘭派に分かれているらしいよ。俺の友達は赤井さん派らしくて、俺が席近いって言ったら羨ましがられたよ」
なんて言うから、もうそうちゃん大変!
「なにぃー!!そんなに人気なのか!来蘭は!」
とか加藤くんに詰め寄ってる。
「ち、ちょっとほら!加藤くん困ってるから!そうちゃん!」
「青木、うかうかしてると赤井さん奪われるぞ?」
と加藤くん...
加藤くーん、余計なこと言わないでー
「まぁ、来蘭のかわいさに周りが気付くのは時間の問題だなとは思ってたよ。
大丈夫だ、来蘭を奪われる気なんて毛頭ない!渡すわけねーだろ!!」
私は隣で赤くなるしかなかった...
読み終わったら、ポイントを付けましょう!