〈奏太side〉
部室を後にして、鞄を取りに教室へと向かった。陽介は職員室に用があると言って途中で別れた。
それぞれ興味のある部活に行っていて、教室にはクラスメイトの姿はまばらだった。
来蘭と隣り同士で帰り支度をしていると、机の中の教科書を鞄に入れようと、机に手を入れた来蘭の動きが一度止まってから、少し身を屈めて中を覗き込んだ。そして、小さく畳まれた紙のようなものを取り出して、俺に背を向けるようにして紙を広げて見ている。
ラブレターか?
いや、ラブレターならあんな紙切れなはずないな...アイツらの嫌がらせかな...
「来蘭どうした?」
声をかけてみた。
「なんでもないよ?...」
隠した?
やっぱりラブレター的なやつか?
いずれにしても来蘭から目を離さないようにしないと、色んな意味であぶないな...
「来蘭、支度できた?」
「ん」
「じゃあ帰ろ」
ふたりで下駄箱へと向かった。
靴箱の扉を開けてローファーを取り出した時に何かが落ちた。なんだろうと拾い上げてみるとそれは手紙だった。
「どうしたの?そうちゃん?」
俺の手にある手紙に来蘭の視線は注がれていた。
来蘭は〈察した〉顔をして、視線を逸らし、急いで靴を履こうとしてよろけた。
「あぶなっ」
当たり前のように来蘭を抱き留めた。
来蘭は目を合わせようとしない。
あきらかに動揺している。
「ご、ごめんそうちゃん、ありがとう」
目を合わさぬまま身体を離そうとした来蘭の名を呼んだ
「来蘭?」
やっと俺を見た。
正直言って、こんな風に靴箱に手紙が入っていたことなんて一度や二度ではない。
だから大して驚いたりもしない。
「そんな顔をするなよ、来蘭...」
と、来蘭の顔を覗き込んだ。
「.......」
来蘭はだまってる。
「おいで、来蘭」
と、来蘭の手を引いて、あのテトラポットに連れて行った。
ふたりでテトラポットに並んで座った。
来蘭はずっと押し黙っている。
そんな来蘭を、まずはぎゅうっと抱きしめた。
抱きしめながら優しく語りかけた。
「俺が中学でバレー部キャプテンだったのは話したよね?わりとうち強かったから、学校内では花形の部活で、そのキャプテンだから目立ってたというだけだと思うんだけど、こうゆう手紙をもらったのは一度や二度ではないんだよ」
「そんなのわかるよ。そうちゃんはモテるってことぐらい」
と言いながら、ぎゅうっとしがみついて来た
やばいーかわいいー
落ち着け俺...
「そうゆうことを言いたいんじゃないんだよ」
と、真下にある来蘭の頭に向かって優しく言った。すると来蘭は、上目遣いで睨んでる...
あまりにかわいくて、つい笑ってしまいそうになる俺をさらに睨む来蘭
「ごめんごめん来蘭、先を話させて?」
と、髪を撫でた。
頷いてくれたので、続きを話し始めた。
「俺ね、こうゆう手紙をもらったり、告白されたりしてもね、一度も心が動いたことはないんだよ。だから今まで誰とも付き合ったこともないし、誰かを好きになったこともないんだ」
来蘭はだまって俺の話に耳を傾けていた。
「だからこの手紙見て、〈察した〉みたいな顔しないで?」
と言って、俺にしがみついたままの来蘭の顔を、右側から覗き込んだ。
「俺の心を動かすのは、来蘭、お前だけなんだよ?」
来蘭は、どうしていいかわからない顔をしてる。
「なぜだかわからない?」
「........」
「来蘭が好きだからだよ」
来蘭は俺から身体を離し、俺を見つめてきた。
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