「奏太が来たから大丈夫だな?俺は教室帰るね」
そう言うと陽介が立ち上がった。
「陽介くん、ほんとうにありがとう。」
まだちょっと青白い顔をしながら来蘭が言う。
陽介が保健室を出て行くと、来蘭と俺と2人きりになった。
ふぅーとひと息吐いて視線を落とした先に、ベットに座った来蘭のつま先が床に着いてないのが目に入った。
やばい、かわいい
心の中でつぶやく
来蘭の横に座ってみる。
俺の足はもちろん床に着く。
「来蘭、足着かないの?」
ちょっといじわるに言ってみる
ハッて顔して足元を見る来蘭
その途端に、ぷくーっと膨れた顔をする
たまらず笑う俺の太ももを
「もー!そうちゃんのいじわるー」
って言って叩いてくるその手を掴んで抱き寄せた
「心配させんなよ...」
「ごめん...」
「いや、来蘭悪くない。目を離した俺が悪い。守ってやるって言ったのにダメだな俺」
「......」
「教室見渡して居なかった時点で、トイレに探しに行けば良かった。女子トイレん中までは入れないけど、外で待ってれば良かった。そしたら陽介におんぶなんかさせないで済んだのに」
俺の腕の中で、来蘭がクスっと笑う。
「陽介くんに妬いてるの?」
「そりゃそうだろ!おんぶだぞ?俺だってまだ来蘭をおんぶなんてしたことないのに!」
「おんぶしたいの?」
「したいよ!」
「やだ。させない。」
「なんでだよ!」
「わたし重いから...」
「なに?気にしてるの?」
そう言って来蘭の身体を離し、目を見て言った
「来蘭はかわいいし、魅力的だからね?間違ってもダイエットとかしちゃだめだからね?」
さらに続ける
「来蘭くらいお姫様抱っこするのなんかなんでもないからね?どれだけバレー部で鍛えて来たと思ってんの?」
すると来蘭が笑って
「それさっきも陽介くんが似たような事言ってた」
「陽介が?」
「うん。 わたしがね、おんぶしてもらって連れてきてもらったこと、重たかったでしょ、って謝ったら、バレー部で鍛えた身体甘く見ないで!って言われちゃった」
「陽介のやつ...」
〈来蘭side〉
「陽介くんもバレー部だったんだってね?キャプテンと副キャプテンだったって言ってた」
「そんなことも話したのかあいつ」
「わたしとそうちゃんと陽介くん、〈赤青黄〉で信号機だな、とか言ってた」
思い出してクスっと笑ったわたしの横で、ちょっとそうちゃんは膨れっ面してる
なんだかそんなそうちゃんが愛おしかった。
「そうちゃん...さっきの手...ドキドキしたね...」
ってそうちゃんの手に触れたら、またギュッって抱きしめられた...
「ねぇ来蘭、勘弁して...俺身が持たない...」
そう言うと、抱きしめる腕がさらにギュッっと強くなった。
ゆっくり身体を離し、そうちゃんがわたしの顔を覗き込んで優しく言う
「まだちょっと顔色悪いな...少し横になりな来蘭。この後のオリエンテーションは大した内容じゃないから、昼休みまで寝てな。迎えにきてやるから」
そう言うと、ベットに寝かされた。
横になったわたしの髪をそっと撫でて、そうちゃんは教室に戻って行った。
少し眠ろう...
頬を優しく撫でる手の感触で目を覚ました。
その手はそうちゃんだった。
「起きた?」
あんまり優しい声で言うから、もうちょっとその声が聞きたくて、もいちど目をつぶって
「起きれない」
ちょっと甘えてみる...
「そゆこと言うとチュウするよ?」
とか言うから、慌てて目を開けた。
「なにそんなに慌てて目開けてるんだよー」
ってちょっと拗ねてるそうちゃん
「だって...」
「そんなに簡単にするわけないだろ」
って軽くデコピン
「いたっ」
「来蘭のファーストキス、大事にするに決まってんだろ」
なんて言うから、恥ずかしくって布団を顔の半分まで引き上げた。
「さぁほら、起きて!お昼食べれる?鞄覗いたらお弁当が見えたから持ってきたよ。中庭で食べようか」
ねぇ、どこまで優しいの?そうちゃん...
わたしの方こそ身が持たないよ...
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