病院のすぐそばのアパートに、夜勤明けの春子さんに強引に連れてかれて、風呂に入らされた...
「おっ!いい男が更にいい男になったな!」
「自分の息子を褒めるなよ、恥ずかしいなー」
それからいっぱいメシを食わされて、少しだけ眠った...春子さんちのベッドは、とても寝心地が良くて、あっという間に眠りに落ちた...
夢を見た。
俺と陽介と優輝と、そして加奈の演奏で、来蘭が歌っていた。
そのステージは、ライブハウスのような小さなものではなかった...ホールよりも広く...アリーナよりも広く...そう、そのステージは『東京ドーム』だった!
来蘭は花道を駆け抜け、ドームのど真ん中のステージで5万人を前に歌っていた。
うわぁ...とんでもない夢見ちゃったなぁ...
東京ドームって...
さすがにそれはないだろー
って苦笑いしながらも、そんな舞台に立たせてやれたらな...とも思った。
2、3時間寝たら、驚くほどスッキリした。
「もうちょっと寝てったら?...」
「いや、来蘭が目を覚ました時に誰も居なかったら寂しがるだろ...もう行くよ。風呂とメシ、ありがとう。」
「よっぽど大切なのね...」
春子さんが目を細める
「大切なんてもんじゃねぇよ...来蘭は俺のすべてだし『宝物』なんだ...」
「多分、目を覚ましてからのがあんたにとっても来蘭ちゃんにとっても過酷だと思うよ...
これから来蘭ちゃんは、右手が動かないということを受け止めて、背負って生きていかなきゃならない...あんたにそれを一緒に背負って、そして支えてく覚悟があるのかどうか...」
「そんなもんとっくにあるわ!!出会った日から覚悟あるわ...」
「そんな運命的な出会いだったんだ」
「...うん...そうだな、運命だったんだろうな、来蘭と出会うのは...」
「そっか...やっぱりちょっと寂しいもんだなぁ、息子に大切な子が出来るってのは...あ、あんたたちまだ高校生なんだからちゃんと避妊しなさいよ?」
「は?まだしてねぇわ!!大事にしたいんだよ!!どんだけ我慢してると思ってんだよ!!」
「...それは本物だわ...安心した。さすがはあたしの息子だわ!」
そう言って春子さんは、廣瀬先輩が来蘭にするようにわしゃわしゃした。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!