初っ端からレベルの高いバンドに身体が強ばる...
1曲目からしっかりテンション上げさせるのは、固定ファンがしっかり着いてるとはいえ、凄い!
バーカウンターで、彼らの演奏に圧倒されていると、オーナーの大森さんがわたしの肩に大きな手を置いた。
「いいか?あのバンドと比べてどうかとか、そんなつまらないこと考えて演る前から負けるなよ?
死ぬ気でやってきたんだろ?」
そう言ってわたしの手を取り、血の滲む指先を見て口元を緩めた...
ネガティブなわたしが顔を出しそうになるのを、大森さんの言葉にハッとさせられた。
早くも2バンド目「Rosey」のライブが始まった。
ガラッとフロアの雰囲気が変わる。
コアなバンギャルたちが、最前列を固めている。
このバンド、女の子ファン率がものすごく高い...
確かにこのバンドのメンバーはみな、イケメン揃い。陽介くんのお兄さんの一樹(かずき)さんも、陽介くんのように長身で甘い顔立ちだし、ドラムとベースの2人は、アイドルのような可愛らしい顔をしているがプレイは荒々しくて、そのギャップにやられるし、拓海さんも...認めたくはないが、やはり華がある...
数曲ノンストップで演った所で、MCに入った。
拓海さんの喋りに黄色い声が飛ぶ...
「俺今落としたい女が居るんだ...
そいつは今この中に居る!」
彼のファンたちが発狂する
「今日はその子のためにこの歌を歌おうと思う」
彼の視線とスポットライトがわたしを撃ち抜く
彼のファンたちの怒りの視線がわたしに突き刺さる...
怖くてぎゅっと目を閉じた...
そこに聞きなれた声
「なんだアイツ?ふざけんなよ?来蘭を落としたい?バカじゃないの?」
目を開けると、めちゃくちゃ怒ってる加奈の姿があった。
「ちょっと加奈っ!拓海さんのファンたちの神経逆撫でするようなこと言わないでっ!」
カウンター下の扉を開けて、加奈を引っ張り込んだ。
PAを手伝っていたそうちゃんも飛んで来た。
「アイツまじバカなの?」
怒るより呆れてる...
「そうちゃんも!やめてっ!」
そうちゃんも引きずり込んだ。
ドリンクカウンター内に3人でしゃがんでひそひそ話す
「見たでしょ!あの最前列のバンギャルたちを!
Roseyのファンたち、特に拓海さんのファンたちはイカレてるんだって!さっき機材スタッフの武田さんが言ってた。あの人ファンに手を出すので有名で、抱かれた子たち同士がしょっちゅう騒ぎを起こすらしいんだよ...」
「ファンに手を出すって、吉井先輩みたいじゃん」
と言うそうちゃんに
「人聞きの悪いこと言わないでくれる?俺はちゃんと選んで抱くもん」
いつの間にか居た吉井先輩が言い返す
「面倒くさそうな女は抱かないもん」
「いや、そこ威張るとこ?」
そうちゃんがつっこむ
「あいつは見境なくファン食っちゃうからいけないんだよ!ヤバそうなのには手を出すなっつーの!」
「いやだから、そうじゃないでしょ?そもそも手を出すな!って話しでしょ!」
そうちゃんの発言にわたしと加奈は頷いた。
「ほらもう次出番なんですから!行きますよ!」
そう言ってそうちゃんが吉井先輩を連れて行った。
「来蘭、メイク直ししちゃおう!そろそろ出番なんでしょ?」
そのままドリンクカウンターの下で、2人しゃがんだまま、わたしは加奈に魔法をかけてもらった。
「加奈...これからわたしが歌う曲、加奈のことを想って書いたんだ...だからちゃんと聞いてて...」
そう言ってわたしは加奈の唇にチュっとkissをした...
「行ってくるね、加奈!」
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