一目惚れから始まった俺のアオハルは全部キミだった

キミと駆け抜けたアオハルDays
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中庭にて

中庭にて

公開日時: 2021年5月30日(日) 08:12
文字数:1,826

頬を優しく撫でる手の感触で目を覚ました。

その手はそうちゃんだった。

「起きた?」

あんまり優しい声で言うから、もうちょっとその声が聞きたくて、もいちど目をつぶって

「起きれない」

ちょっと甘えてみる...

「そゆこと言うとチュウするよ?」

とか言うから、慌てて目を開けた。

「なにそんなに慌てて目開けてるんだよー」

ってちょっと拗ねてるそうちゃん

「だって...」

「そんなに簡単にするわけないだろ」

って軽くデコピン

「いたっ」

「来蘭のファーストキス、大事にするに決まってんだろ」

なんて言うから、恥ずかしくって布団を顔の半分まで引き上げた。

「さぁほら、起きて!お昼食べれる?鞄覗いたらお弁当が見えたから持ってきたよ。中庭で食べようか」

ねぇ、どこまで優しいの?そうちゃん...

わたしの方こそ身が持たないよ...


「奏太と来ー蘭ちゃん!」

という声と共に肩を叩かれ、頭上を見上げると、そこには、ちょっと冷やかし顔の陽介くんが居た。

「ねぇ、キミたちさ、傍から見たらかなり甘々カップルだよ?あーんとかさー」

なんて言ってくる。

更には

「ねぇ、俺にもあーんしてー」

とか言う始末...

するとそうちゃんが

「やめろ!お前に食わす玉子焼きなどなーい!」

と言ってチョップしてる。

あははははは

なんかもうツボに入ってしまって、涙出るほど笑ってしまったわたしを、ふと気がつくと男子ふたりが優しく見守ってくれていた。

「良かった」

そう陽介くんがつぶやいた。

今度はそうちゃんが

「来蘭が笑ってくれて安心した」

と言う。

なんだか今度は別の涙が出てきて、右目からひとすじ流れた...

「なんだよ、どうしたんだよ」

と優しく笑いながらそうちゃんは、親指で私の涙をぬぐった。


〈奏太side〉

「なぁ奏太、お前ほんとにバレー部入んないの?」

と陽介が聞いてくる。

「入らないよ。高校では別のことやりたいんだ」

「他のことってなんだよ?」

「ん?来蘭のやりたいことが俺のやりたいこと」

そう言って来蘭を見たら、潤った瞳で見つめ返してきた。

(陽介が居なかったら抱きしめてるのにー!くぅー!)

「来蘭ちゃんと一緒の部活入るってこと?」

と陽介

「そうゆうこと」

意味もなくドヤった。

「なんの部活入るのさ?」

次の瞬間、陽介と俺は揃って来蘭を見た。

来蘭はちょっと引いてる...

ひとつ深呼吸して来蘭が言った

「軽音楽部入りたいの」

陽介と顔を見合わせてから2人で叫んだ

「バンドー!!」

コクっと来蘭がうなずいた。


来蘭がやりたかったのがバンドだったなんてちょっと意外だった。

歌いたいのか?ボーカルか?

いや楽器か?楽器だったらなんだろう

それより俺はどうすんだ?なんにも出来ないぞ?

「そうちゃん?わたしに合わせなくていいんだよ?」

俺の様子を見ていた来蘭が心配して言う

すると来蘭が話し始めた。

来蘭は小さい頃からピアノを習っていて、中学では、病気になって身体がつらくなるまでは吹奏楽部でサックスを吹いていたそうだ。でも、途中で続けられなくて辞めざるを得なくなったことが、大きな心残りのひとつなのだと話してくれた。

高校では、好きな音楽を奏でたいと、バンドって形で表現してみたいんだと、初めて見るキラキラした顔で話す来蘭に、俺は再び一目惚れをした気がした...

そんな空気をぶった斬るように陽介が来蘭に聞く

「ってことは来蘭ちゃんはバンドのパートとしては...キーボードやりたいってこと?」

首を振る来蘭

「ベースがやってみたいの」

陽介と俺はまた声を揃えて言う

「ベース?」

「ベースってね、バンドの肝になるんだよ!ルート音って言う土台になる音を出すの!かっこいいんだよ!」

音楽のことに疎い俺には、ちょっとよくわからなかったけど、来蘭があまりにも生き生きと話すから、よっぽどやりたいんだなと思った。

「ボーカルとかギターとかのが目立って良くない?」

と陽介は言う

「そんな目立つのはわたしはだめだよ...そうゆうのはやっぱりルックスのいい人間がやるべき」

と言って少しうつむいた。

たまらず俺は口を開いた

「何言ってんの来蘭、来蘭がバンドでボーカルとかやったら男連中イチコロだよ?ほんとに来蘭は自分のことなんもわかってないんだから」

すると来蘭は困り顔で

「陽介くん...そうちゃん頭も目もやられてるんじゃないかな?」

とか言い出した。

「頭はやられてるけど、目はやられてないと思うよ?」

と陽介が笑う

「おい!そこでほんのり赤くなるんじゃないよ来蘭も!」

ほどなくチャイムが鳴った。

「よし!じゃあ軽音楽部に見学行こう!」





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