〈来蘭side〉
「加奈ー、ほら起きて!シャワー浴びる時間なくなるよ?」
朝が弱い加奈を起こすのは、毎朝一苦労だった。
わたしは5時には起きて、加奈とそうちゃんと自分の分のお弁当を作るのが日課となった。
加奈もそうちゃんも、お弁当を毎日楽しみにしてくれるから、わたしも嬉しくて毎日お弁当作りに勤しんだ。
相変わらずそうちゃんは玉子焼が大好きで、入ってないと機嫌が悪いのだ...
「今日の玉子焼も上手く出来た!よし!
ちょっと加奈ー!ほんとにもう起きてー!」
やっと起きてきた加奈が、キッチンへとやって来る。
まずは、冷蔵庫を開けてミネラルウォーターを飲む。それからキッチンに立つわたしを後ろからぎゅっとして、ほっぺにチュウをしてから、おはよって言う所までが毎日のルーティン
学校ではそんなこと絶対しないけど、おうちではわたしは加奈に溺愛されている...
「今朝は加奈の好きなフレンチトーストだよ。ほら早くシャワー浴びてきて」
「ん...わかった...」
そう言って、わたしの首筋にkissをする...
そのままバスルームに向かうと思いきや、クルっと振り返って、赤くなったわたしの横顔を見て
「かわいい...」
満足そうにそう言って、立ち去る加奈...
そのうち一緒にバスルームに連れていかれそう...
「来蘭、こっちおいで」
一緒に暮らし始めてから、毎朝わたしのヘアメイクを加奈がしてくれてる。
高校卒業したら、ファッション、ヘアメイクに進みたいという加奈の、わたしはお人形だ。
今まで学校に行く時は、なんとなく結ぶだけだったんだけど、加奈の手にかかると、あっという間にクセ毛を上手に活かしたスタイルに仕上げられちゃう。
メイクも、清潔感のあるすっぴんメイクを施してくれる。
こんな風に加奈にしてもらうようになってから、毎日のようにラブレターが下駄箱に入っていたり、校門で他校の生徒が待ち伏せしていたりするようにもなってしまって、そうちゃんが頭を抱えている...そうちゃんの溺愛も増す一方だ...
今日もバス停には、そうちゃんが待っていた。
「おはよう来蘭」
まずはぎゅっと抱きしめられる。
「今日も来蘭を必要以上に可愛く仕上げやがって...」
なんて、加奈に怒ってる...
「たいして手を加えてないわよ!
来蘭自体が可愛いんだから仕方ないじゃない」
と言い返す加奈
わたしは間に挟まれて、背の高い2人を交互に見上げる。
車道側を歩くそうちゃんに、知らぬ間に繋がれてる左手がくすぐったい。
上履きに履き替えようと靴箱を開けると、今日も一通手紙が入ってる。
わたしより先に手紙を取り出す加奈。
宛名の文字と、封筒の柄から
「今日は女子からか...」
と手紙をわたしに渡す。
「最近女子率高いなー」
ちょっと余裕そうなそうちゃんの発言に
「いや、今朝はバスの中で藤南高の男に手紙もらってるから、ドローだから」
「なにっ?!」
いや待って、ドローってなに?
そうちゃんと加奈で男女比競ってる...
チョットイミガワカラナイ...
「あ、そうだ、そうちゃん!今日わたしバイトの面接だから、バンドの練習ちょっと遅れるね」
「吉井先輩に紹介してもらったライブハウスのバイトの面接?」
「そう!」
「心配だから一緒に行くってー!ってか、俺も雇ってくんないかなー」
「1人で大丈夫!そうちゃんは来ないで!」
って言ったら、横で加奈がお腹抑えて笑ってる。
教室着いてもまだそうちゃんと加奈は、2人でやいやい言い合ってる側で、わたしはもらった2通の手紙に目を通していた。
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