病室に戻ると、加奈が来ていた。
「どこ行ってたんだよ青木」
「母親が思いがけずここで働いててさ、汚ねぇとか言われて連れてかれて風呂入らされてた...来蘭の様子どう?」
「だいぶ熱は下がったよ、もう意識が混濁した状況は脱したみたい。」
「そうか、よかった...」
「そうちゃん...加奈...」
来蘭が小さい声で呼んだ
「来蘭!!」
目を覚ました来蘭は、俺と加奈の姿を見て安心した顔を見せた。
「来蘭、痛みはない?大丈夫?」
加奈が聞くと
「うん...大丈夫...でもなんか痺れてる...まだ麻酔が効いてるのかな...」
俺と加奈が、一瞬だけ目線を合わす
「う、うん、まだ効いているのかもね...なんか欲しい物ない?食べたい物とか飲みたい物とか」
「いちごみるくが飲みたい...」
「わかった。買ってくるね」
そう言って加奈は、俺の肩にゆっくり手を置くと、病室を出て行った。
「いちごみるく好きだなぁ...」
ベッドの側に椅子を置き、腰を下ろし、来蘭の髪を撫でた。
「どーせ味覚がおこちゃまですよーだ!」
「好きだなぁって言っただけだろ?」
来蘭も俺もあははと笑った。
あははと笑いながら2人して涙ぐんだ...
「いっぱい心配かけちゃったね...ごめんね、そうちゃん...ずっとずっと側に居てくれてありがとうね...ドラムスティック投げ打って飛んできてくれたそうちゃんかっこよかったよ....」
「そんなとこから覚えてるのか来蘭...」
「覚えてるよ、全部覚えてる...救急車が来るまでずっと抱いていてくれたのも覚えてる」
そう言って来蘭は微笑んだ。
「ここにずっと居てくれたのも知ってるよ...看護師さんに心配されても聞かずにずっとここに居たのも、うとうとしながらずっと見てた。居てくれて嬉しかった...
明け方居なくなったでしょう?目を開けたらそうちゃんが居なくて...身体も動かないし、窓の外の空を見てたの...
知ってる?明け方の空の色ってすごいんだよ、濃い藍から紫色になって、だんだん水色になってきたと思ったら、眩しいオレンジになって、茜色に染まり出すの...」
「俺もその同じ空を上で見てたよ」
人差し指で天井を指さして言った
「上?」
「屋上で、来蘭が見ていた朝焼けの空を俺も見ていたよ...来蘭と一緒にこの空を見たいなと思って見てた...一緒に見てたんだな...
あの朝焼けの空見ながら思ったんだ、これから先のいくつもの朝を一緒に迎えるのは、いつだって来蘭とがいいって...」
「そうちゃん...またプロポーズみたいなこと言う...」
「プロポーズだよ...何度だって俺は来蘭に求婚する...」
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