春子さんとはもちろん親子ではあるのだが、たまにしか会わないからか、普通の母親と高校生の息子のそれとは違うのだろう。
「何があったの...話してごらん」と言う春子さんに、朝焼けを見たあの日からさっきまでのことを、俺はぽつりぽつりと話し始めた。
不思議なことに、話しながら気持ちの整理がついて来て、話し終わる頃には、驚く程冷静になっていた。
「しかしあの来蘭ちゃんって子は、不思議な魅力を持った子よね...」
「当たり前だろ!俺が始めて惚れた女なんだから...」
「初恋なのか...」
「あー!!あの紫音って奴に勝てる気がしねぇ!!くっそー!!」
俺は頭を掻きむしりながら叫んだ。
「そりゃまぁ、向こうはあんたよりもひと回り以上年上なんだし、その人生の経験値から言ったら勝ち目はないわよね」
「うわぁ...容赦ねぇな...」
息子だからって、取って付けたような優しい言葉なんかかけない春子さんの発言に思わず吹いた。
「だけど、あんたにしか出来ないことがあるじゃない?」
「俺にしか出来ないこと?」
「連れてくんでしょ?〈東京ドーム〉に」
そうだった...
来蘭と同じ夢を見たじゃないか...
あれを正夢にするんだろ?
紫音に勝つとか負けるとか、そんなこと言ってる場合じゃないじゃないか!
「春子さん、ありがとう!俺行くわ」
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